イブ過去編②

「天子君、もうやめるよ」


「やめるって何を?」


私はあの公園で話を切り出した


「天子君に依存するの、だからもうお金も出さないし一緒にもいない、だから天子君ももう私に頼らないで、恋人ももうやめる」


「ふーん・・・そっか」


天子君がそういうとお腹に来る激痛

深々と刺さったナイフ

思わずその場に崩れる私

追い打ちをかけるように蹴られる顔面、遊具に激突する私

全身が痛い


「そんな人もういらない、じゃあね」


もう何もかもがどうでもよかった

その場に崩れた私のほほに触れる暖かい手の感触


「女の子にこんなことするなんて外道だなぁ・・・」


「ミッキうっ・・・」


「動かないで、今救急車呼ぶから」


「やめて、このクロスがあればすぐ治るから」


「でも」


「私が悪いの、二股かけられたからってあんな風にふって」


「なんで君が悪いの?」


「だって私・・・」


「向こうが勝手なだけじゃないの?」


「・・・」


そう聞いた瞬間私は翼をもいでいた


「え!?イブ!?何やってるの!!やめて!!」


「良いの!!良いの!!」


私はミッキーが止めるのも聞かずに私は翼をもぎ取っていく


「一生懸命働いたって食費以外のお金は自分じゃ使えないし、両親とお姉ちゃんと妹と天子君に全部使われてそれでも足りないから私が使うお金削って・・・でも・・・」


私は叫ぶように泣く


「なんでみんな褒めてくれないの!!なんでみんな感謝してくれないの!!私こんなに頑張ってみんなに尽くしてきたのになんでなんでなのおおお!!!」


翼をもぎ終えた私はその上にクロスを置く


「ミッキー・・・ライター持ってない?」


「ライター?ほら」


そして私はそれらを燃やした

天使をやめる、つまり堕天行為だ


「・・・良いのか?天使やめて」


「うん・・・やってからいうのもなんだけど」


私はミッキーに土下座をする


「私を死神にしてください」


「あ・・・それは別にいいけど」


「よかったー・・・ってあいたたたたたた!!!」


「ああああもう死神の病院連れて行ってあげるから!!」


そして私は死神になった

怪我が治ってそれからは修行の日々だった


「ダメ、重心が不安定、これじゃあ悪霊は切れない」


「はぁ・・・師匠、私別に戦いたいわけじゃないんですけど」


「でも、悪霊に遭遇した時に自分の身を守れなければ駄目だ、文句言うならお昼ご飯抜き」


「チェー・・・」


私は文句を言いながらも師匠であるミッキーの教えの下剣を習った

特殊な蛇腹剣で扱うのがものすごく大変

私の天界武器は銃だったからこれはなかなかうまく使えない


「ん、じゃあやめ、お昼ご飯作るからランニング」


「えー!?」


「文句言うなら」


「お昼抜きなんでしょ?もう分かったよー」


「ったく、午後から俺は仕事だからお前はゆっくりできるだろ」


「あ、そっか」


「ったく・・・」


「ねぇ師匠」


「あ?」


「師匠って何の仕事してるの?」


「死神の仕事は分かるよな?」


「うん、魂回収と悪霊退治」


「それの悪霊退治の方だ、魂回収の仕事に就くにはどうも冷たすぎる性格らしい、俺は」


「ふーん・・・私はどうかな?」


「イブも悪霊退治じゃねーの?」


「どうだろう?」


私はランニングを始めようとした瞬間師匠が聴く


「あ、そうだイブ」


「ん?」


「また髪切ったみたいだけど伸ばさないの?」


「あ、ほら私って男の子みたいな性格で可愛くないでしょ?だから髪長くても似合わないかなって」


「・・・・ちょっと長くなってきて可愛かったのにな」


「え?」


「何でもない、ほら走った走った」


「ちぇー」


でも私はその一言を聞き逃さなかった

だからちょっと髪を伸ばしてみようかな?なんて思っていた

そんなこんなで半年の時が経った

お腹に傷は残ったし、まだ視力が回復してなくて眼帯が外せない

でも私はそれなりに戦えるようになって師匠の下で死神として働いていた

修行もかねて

髪は肩上のボブまで伸びていた

そんな中で、私は師匠に恋をしていたことに気が付く

天子君の時みたいな人からからかわれないために受け入れたなんだかよく分からない関係じゃなくて、言葉じゃうまく表現できないむずむずしてほわほわしてドキドキする感じ

でも師弟関係ということでなかなか私はその一線を越えられずにいた


「イブ・・・お前も女なんだから料理の1つや2つ・・・」


「でも師匠、女だから料理って言う考えはちょっと古いんじゃ・・・」


「いや、お前に食事当番まわせれば俺の負担もちょっと減るだろ」


「うー・・・」


「しょうがない、今日はこの真っ黒焦げのお好み焼きで我慢するか」


「師匠、それはオムライスです」


「え?」


そんな風にいつも私は師匠と一緒にいた

道を歩けば「仲良いね」と言われるのはいつもの事

でも12歳と20歳、そんな年齢差もあってか私は積極的になれずにいた


「そういえばイブ誕生日いつ?」


「え?12月4日」


それは3日後だった

師匠叫ぶ


「ええええ!?あと3日じゃん!!イブなんかほしいものある?」


「ないよ」


「えー・・・そんな・・・」


「って言うか祝ってもらったことないし誕生日のありがたみとかよく分かんないんだよね」


「あーそう、じゃあ勝手にプレゼント決めちゃうからね」


「良いよ良いよ師匠!!ただでさえ修行でお世話になってて申し訳ないのに」


「ったく・・・良いから黙ってうけとれよ」


「うえー・・・」


私は何とも言えない返事をした

そして私の誕生日、家に帰るとそこにはイチゴの乗ったホールケーキにブドウ味の炭酸ジュースとワイン(これは師匠の自分用だと思う)そのほかごちそうの数々


「え?師匠これは?」


「誕生祝、12月4日」


「えええええ!?こ・・・こんな豪華な食事初めてだ」


「おいおい、お前それここへ来た夜と同じこと言ってるぞ」


私は驚きつつもそのごちそうを食べた

味は覚えていないけど、ただただうれしかったことは覚えてる

師匠がピンクのリボンのかかった小さなプレゼントを私に差し出す


「え?何これ?」


「誕生日プレゼントだ」


「え?本当に!?13年生きてきたけどプレゼントなんて初めてだよ!!」


「えー・・」


私はわくわくしながら箱を開けた

そこには白くて長いリボンが入っていた


「これは?」


「まー俺も女の子に何あげていいのかよく分かんないからちょっとは可愛くなるだろってことで髪に結ぶリボン」


「わーありがとう師匠!じゃあ私髪の毛伸ばしてみようかな?」


「おう、やってみろやってみろ」


そして私は髪を伸ばすことにした

でも師匠は私の長い髪を見ることなく別れを告げてしまう