【21】
戦友とこれからも
列車が煙を吐きながら駅へと到着する。行き先は参加者たちの生まれ故郷だ。クロはその駅でとある人物を待っていた。
「あ! ユキちゃん」
「よっ、棗」
「怪我の具合は大丈夫?」
「あぁ、ドクターがしっかり治療してくれたおかげでもう万全の状態さ」
「でもさ、この大会の報酬もリセットされたんだよね? 体調も大丈夫?」
「どうやら運命は変えられたらしい。ご覧の通り、元気だよ」
「本当に!?」
「本当だって」
「じゃ今度一緒に遊ぼうよ、私甘い物がおいしい店いっぱい知ってるんだ」
「うん、行くよ」
「……にしても遅い!! 電車出ちゃう!!」
「これ汽車だからね、電車って何……?」
「あー……そこからか」
「あぁ、お待たせ」
「遅いよシュンヤ!!」
二人が立ち話をしていると、シュンヤがようやく顔を出した。その片翼は出したままの、ありのままのシュンヤだ。
「悪い悪い、いろんな奴から追い掛け回されちまってさ。一発殴らせろーとか」
「あんだけの事やっといて一発殴らせろはまだ優しいだろ……」
呆れたようにトラシーウィザードが言う。まだみんな無事に帰れるだけ、良い結末とも言えるかもしれないが。
「クロは助けてくれたから知ってると思うけど、扉使って参加者としてこっち来たら俺空中に放り出されたんだよね。バトラーの特定がまだ終わってないから、安全上汽車で帰ってもらっても良いか?」
「そういえばそんなこともあったねぇ」
クロが懐かしそうに言う。シュンヤは思考を切り替えたのか、こう言った。
「で、何の用なんだ?」
「……シュンヤ、私まだ学生で、親に無理言って大学通わせてもらってる身なんだけどさ」
「うん」
「大学卒業したらここに住ませてくれない?」
「別にいいけど……」
「よかった、それだけだから」
「お前懲りねーな、あんなひどい目に遭わされたのに、この世界に住みたいとか。そんなに元いた世界が嫌ならいいけどさ」
「……プッ」
シュンヤの発言を聞いたトラシーウィザードが噴き出す。
「あっはははははは……分かってねーな」
「えぇ!? なにが!?」
「じゃボクも言わせてもらうよ」
「何?」
「また遊びに来たいんだけど良い?」
「お前も懲りねーな……」
「そりゃお前、ボク等の場合お前の友達だから、お前といたいって事だよ」
「え?」
「確かにお前は正体を隠してきた嘘吐きだ。でもボク等と戦ってきた時間は、本物だろ?」
「……はぁ……お前らって本当お人よしだな……。でもま、そういうことなら喜んで、遊びに来て良いし、住んでよ」
「ありがとう」
汽笛の音が鳴り響き、二人の故郷行きの列車がもうすぐ発車するアナウンスが響いた。二人はシュンヤに手を振りながら自分の故郷への列車へと乗り込んでいった。
-end-