錦ヶ浦遊歩道入口
1953(昭和28)年頃の錦ヶ浦入口の佇まい
(2018/09/18公開)
(2018/09/18公開)
※目印は撮影位置です
画面左中央の案内板に「錦ヶ浦遊…」「入…」の文字が読み取れます。これは「錦ヶ浦遊歩道入口」の看板で、入口の先は下っているように感じられます。なお、人物右後ろの立て看板にも「…浦」とあります。この場所が「熱海市錦ヶ浦」であることは確かです。しかし、錦ヶ浦らしさは全く感じられません。背後に海が広がっているだけです。観光案内絵図らしきものも写っていますが、不鮮明で読み取ることはできません。この写真から撮影場所を特定することは極めて困難です。撮影場所については、あくまでも推測になりますのでご承知おきください。
はじめは初島かと思いましたが、形が違います。その形から背景の陸地は真鶴半島ではないかと思います。真鶴半島は錦ヶ浦の北東方向に位置し、左手には熱海湾が見えるはずです。つまり、錦ヶ浦付近で北東方向を含め海がパノラマに見渡せる場所、それが撮影位置特定の鍵ということになります。なお、カメラを向けている方向がほぼ北東であることを間接的の裏付ける別の写真があります。そのことは、別の機会に譲らせていただきます。
右下に建物の屋根が見えます。突き出した庇の下は物置的スペースでしょうか? 何かを吊るしてある様子も伺えます。特別な建物ではなく普通の人家のような気がします。熱海市立図書館・電子図書館で公開している「静岡県熱海市熱海局郵便区市内図(昭和32年10月6日現在) 」で錦ヶ浦周辺を見ると、道沿いの海側に家がある場所は1か所だけです。有力な撮影位置特定の手がかりです。
人物右の立て看板に読み取れる文字があります。錦ヶ浦の「浦」、その下の文字は不鮮明ながら「官」のようでもあります。こちらは○○写真館の「館」の一部ではないかと推測してみました。右端にわずか写り込んでいる人物が、三脚を立てカメラを構えているように見えます。機材を入れるカバンらしきものも置いてあります。観光地の写真やさんがここで商売をしていたとしたら、背景として写すに値する景色が広がっているはずです。当然のことながら錦ヶ浦の崖と海は外せないでしょう。錦ヶ浦の崖が見える場所ということも撮影位置特定の鍵となります。
車種はヘッドライト付近の形から何とか特定することができました。つまり、この写真が撮影されたのは1952年より後であることは確実です。1959年に熱海城、1973年にホテルニューアカオがオープンし、錦ヶ浦一帯は大きく様変わりしています。この写真の撮影場所に当時の面影は全く残っていなくて当然です。
正面を北東方向とすると、太陽は右方向にあることがわかります。正面から90度右にずれると太陽の方向は南東となります。大雑把な推測ですが、太陽が東寄りに位置しているとすれば、この写真は午前中に撮影されたものということになります。カバンの影の出方から推測すると、太陽の高度は30〜40度、早朝でも正午近くでもない午前中のようですです。人物の服装、木の葉の茂り方から真冬や真夏でないことは確かです。葉のついてない枝が見受けられるので、秋口のような気もしますが、そこまで特定は無理でしょう。
この3つの条件に合致する場所は、スパリウムニシキ西道路だけです。スパリウムニシキはオーシャンフロントビューを売りにしている温泉施設ですから、海がパノラマに見渡せるのは言うまでもありません。紹介サイトに、真鶴半島、錦ヶ浦の崖が映る写真も見つけることができました。そして何より、熱海局郵便区市内図の錦ヶ浦の道路沿いの海側いある一軒家の位置が今の地図のスパリウムニシキ西と一致することです。当時のものとは違うかもしれませんが、スパリウムニシキを囲むように崖を下っていく遊歩道が整備されています。というよりは、錦ヶ浦遊歩道(パノラマロード)の一角に温泉施設が作られたのですが。いずれにしても、1953年当時、ここに「錦ヶ浦入口」という案内板があったとしても何の違和感もない場所であることは確かです。(2018年9月18日公開)