熱海市東海岸町
1953(昭和28)年頃の熱海の海岸の風景
(2018/09/11公開)
(加筆:2018/09/13 ,9/28,11/19, 2019/08/06)
(2018/09/11公開)
(加筆:2018/09/13 ,9/28,11/19, 2019/08/06)
※目印は撮影位置です
背景に写っているのは1953年頃の熱海市の東海岸町(当時は東町)です。海岸沿いに並ぶ風情のある木造旅館は今は無く、写真の海も埋め立てられ駐車場に様変わりしています。当時の面影はほとんど残っていませんので、ここが本当に熱海の海岸とするには少々心許ない写真です。場所を特定するヒントは、1953年に公開された映画「東京物語」にありました。
映画「東京物語」(小津安二郎監督、1953年)の詳細は省略しますが、主人公の老夫婦が熱海の防波堤に腰掛けるシーンがあります。その背景が熱海で撮影されたもう一枚の写真の背景と一致します。山の樹々の形がよく似ています。海岸沿いの道路を支えているアーチ構造も印象的です。このアーチ構造で支えた道路は、「熱海 」(熱海市役所編 昭和28年発行)の図版にも写り込んでいます。もうひとつ、しゃ2枚の写真の防波堤も同じように見えます。ところが同じではなく少し位置が違っています。(2018年9月13日加筆)
当時の防波堤は川で区切られ3つのエリアに分かれていました。それぞれの堤防の角度は「略図」に示したように少しずつ違っていました。アーチ構造の道路にご着目願います。写真では堤防の延長線上からそんなに離れていない位置にあり、映画「東京物語」では、堤防を横切るように見える位置にあります。写真と映画とでは、位置が違う別の堤防だったのです。(2018年11月19日加筆)
空中写真から熱海の海岸線部分を切り抜き、左に90°回転させたものです。堤防が3つに分かれ、それぞれ向き(角度)が少しずつ違っていることがゆくわかると思います。最初に紹介した写真は、空中写真では一番左の堤防の角から陸地方向に向けてシャッターを切ったものです。したがって人物が腰掛けているのは海側の堤防ではなく、直角に海にせり出した部分に設けられた堤防ということになります。(2019年8月6日加筆)
映画の著作権の存続期間は公表後70年(正確には該当年の12月31日まで)です。1953年公開の「東京物語」の著作権は2023年まで有効という計算になります。ところが、旧著作権法が、映画の著作権の存続期間を公開後50年としていたことにより、東京物語の著作権は2003年12月31日までで一度消滅しました。改正著作権法(映画の著作権の存続期間を公開後70年とする)が施行されたのは2004年1月1日です。「著作権が終了した作品については、施行の改正法は適用されない」というのが法律の解釈のようです。たった1日くらいと素人目には思いますが、著作権が消滅して20年近く経過した作品がある日突然著作権が復活し「20年近く無料で使用した分の著作権料を遡って払え」なんてことになっても困りますからね。
ここで映画「東京物語」の1シーンを切り取って勝手に引用している訳ですが、著作権が消滅していることを踏まえてのものです。ただし作品に対して悪意をもった引用ではないことも付け加えさせていただきます。(2018年9月28日加筆)