箭弓稲荷神社縁結びの木
境内に同じ松、でも何かが違う(1954年頃)
(2019/07/26公開)
(2019/07/26公開)
※目印は撮影位置です
撮影者が何を撮ろうとしたのか意図を図り兼ねます。フレーム内に人物の姿は無く、中央に箭弓稲荷神社(拝殿)を持ってきたまではわかりますが、それにしては手前の樹木が邪魔です。拝殿向かって左にある本殿に至っては松の幹に隠れてその存在すら確認できません。箭弓稲荷神社を撮そうというのであれば、もう少しましな撮影位置があったはずです。それとも松の木に特別な何かがあったとか…。
2019(令和元)年7月25日、現地で撮影位置を当たってみたところ、「ここ」に行き着きました。振り向けば箭弓稲荷神社ぼたん園が目と鼻の先、境内としては南外れの方です。手前の人形風のもの(後述)はさておき、左に傾いた松の幹、枝越しに覗く箭弓稲荷神社拝殿、松の幹で隠れて見えない本殿…同じ状況です。しめ縄を渡されたもう1本の木「栴檀(せんだん)」がさらに視界を妨げています。松の木の向こう側で撮ったのが次の写真、右奥の大きな木付近を反対側から撮ったのがその次の写真(石碑部分濃淡加工あり)です。二股の木は枯れていましたが、幹の根元の二股部分は残っていました。最初の写真、二股の木右の石碑は位置を変え現存していました。石碑には「献楠樹 (中略) 帝國在郷軍人會松山町分會」と刻まれています。ちなみに同位置で撮影した2019年の写真の右奥の大きな木も奉献された「楠樹」で、1991(平成3)年植樹を示す石標がありました。28年でずいぶん育つものですね。
手前の石像は「やっくん」「きゅうちゃん」です。募集によりと名付けられた縁結びきつね(箭弓稲荷神社公式キャラクター)です。縁結びの木、松と栴檀(せんだん)も箭弓稲荷神社公認です。ただし…
「松の木」と「栴檀の木」が寄り添うように生えています。説明のとおりの根元です。幹の太さも釣り合っています。しかし…
箭弓稲荷神社境内案内図(公式サイト内)に「縁結びの木」がいつ表示されたのか調べてみました。Wayback Machineで遡ってサイトの案内図を見ると、2016年11月4日にはなく、同年11月14には表示されていることがわかりました。実は2012(平成24)年2月に箭弓稲荷神社で「縁結びきつねの名前募集」があり、その中で「縁結びの木」についての言及があります。そのときのチラシから文章を引用します。
「箭弓稲荷神社の牡丹園の前に「松の木」と「栴檀の木」が寄り添うように生えています。いつからか、その麗しい姿を見た人たちが「箭弓稲荷神社の縁結び」の象徴として信仰されるようになりました。」
(引用:「縁結びきつね名前募集のチラシ 箭弓稲荷神社 2012年)
「いつからか」ということで、時期は特定されていません。かと言って「昔々」でもありません。そう言い出したのは「人たち」です。出発点は「噂」レベルのものだったのかもしれません。少なくとも意図的に作り上げたものではなさそうです。
この写真(1954年頃)の「松」が現在の縁結びの木の「松」と同じ可能性が高いと思います。とするのであれば、最初から寄り添うように生えていた訳ではなく、栴檀が後から生えてきて育った結果、寄り添うような形になったと考えられます。ここから先は想像です。栴檀の実を食べた野鳥が松の木の根元近くに糞を落としました。その糞の中の栴檀の種が発芽しました。その時点では栴檀の木とはわからなかったと思います。栴檀は松の根本で下草に紛れて成長を続けます。雑木として抜き取られることもなく運よく数年が過ぎました。そして、植物に詳しい人から、それが栴檀の木であることが箭弓稲荷神社に伝わります。箭弓稲荷神社では抜くことも移植することもせず成り行きにまかせます。最初は松の添え物程度の大きさであった栴檀が長い年月を経て松と並ぶ大きさに成長します。手を加えなかったため、根本から寄り添うような姿を見せることになります。それを見つけた誰かが「縁結び」と関連づけたのではないでしょうか…、全部「想像」です。ただ、栴檀は成長が早い木だそうですので、後から松に追いつくことは十分有りえます。いずれにせよ、偶然の積み重ねによって今の「縁結びの木」があると言って差し支え無いでしょう。特別な意図からではなく「偶然の積み重ね」それが『縁』というものなのではないでしょうか?
さて、撮影者が木の枝越しに箭弓稲荷神社を撮影した理由ですが、撮影位置は箭弓稲荷神社のぼたん園のすぐ近くです。もしかしたら、ぼたん園のお花見ついでに箭弓稲荷稲荷神社を撮ってみた。そんなところかもしれません。初めから箭弓稲荷神社を撮影するつもりならこの位置はまず選びません。そして、この松が半世紀以上後に「縁結びの木」と呼ばれることになることは撮影者の知る由もないことです。(2019/07/26公開)
箭弓稲荷神社(境内案内 / 過去の新着情報一覧へ-2012年 「縁結びきつね」名前募集-チラシダウンロード(約780KB))
東松山市 (組織から探す-教育部-きらめき市民大学-メニュー(詳細ページ)- 課題研究のまとめ-平成29年度きらめき市民大学課題研究のまとめ)-東松山市の残したい木 歴史・郷土学部B班(PDF:3.9MB))
論座-朝日新聞社の言論サイト(「センダン」で検索-早生樹センダンで林業のイノベーションを)
Wayback Machine(インターネットアーカイブ、URLで検索-過去のWebページ ※保存されている場合のみ)