Kohno K, Bui Thi N (2004) Effect of host plant species on the development of Dysdercus cingulatus (Heteroptera: Pyrrhocoridae). Applied Entomology and Zoology 39 (1): 183-187, February 2004 [Abstract & Full text (pdf) on J-STAGE (access free)]
アカホシカメムシDysdercus cingulatusは東南アジアの熱帯・亜熱帯地域における棉作害虫で、果実や種子を加害して収量や品質を低下させます。この研究を実施していた時点では、アカホシカメムシは第一級の害虫ではなく、アジアの熱帯・亜熱帯地域においてはあまり研究されていませんでした。しかしその後、Bt毒素を産生する遺伝子を組み込んだ組換体のワタが普及することにより、Bt毒素に感受性の害虫に対する殺虫剤撒布が少なくなり、それまで第一級の害虫ではなく、Bt毒素に感受性のない害虫の重要性が増してきました。その害虫の一つがアカホシカメムシ類です。インドシナ半島から東側では主にアカホシカメムシDysdercus cingulatus、西側では主にDysdercus koenigiiが主要な害虫種です。
アカホシカメムシDysdercus cingulatusはワタばかりでなく、様々な栽培種や野生種のアオイ目Malvalesの植物を寄主植物としています。ですから、ワタにおけるアカホシカメムシの防除を考える場合、ワタだけでなく、様々な野生あるいは栽培種の寄主植物におけるアカホシカメムシの繁殖を理解しておく必要があります。この研究では、様々なアオイ目植物の種子を餌として利用した場合のアカホシカメムシの幼虫期の死亡率や生長速度の違いを見ることによって、それぞれの植物のアカホシカメムシの餌としての好適性を明らかにしようとしました。
調べた8種類の植物種子のうちでは、トックリキワタChorisia speciosaは非常に良い餌、リュウキュウトロロアオイAbelmoschus moschatus、オクラAbelmoschus esculentus、サキシマフヨウHibiscus makinoi、サキシマハマボウThespesia populnea、ワタGossypium arboreumは良い餌、オオハマボウHibiscus tiliaceusはあまり良くない餌、タカサゴイチビAbutilon indicumは良くない餌であることがわかりました。種子の大きさが餌の良し悪しと関係するかとも予想したのですが、必ずしも関係があるとは言えませんでした。