特設ページ:北海道大学総合博物館「昆虫サロン」

※※ 終了しました ※ 2022年11月22日(火)19:00より ZOOM オンライン

■ ■ 北大総合博物館 昆虫サロン 64 ■ ■

話題提供

「 熱帯・亜熱帯の赤黒白の派手な警告色のカメムシの話・・・アカホシカメムシ属(カメムシ目:ホシカメムシ科)特にシロジュウシホシカメムシ種群の分類の現状と今後の展望」


河野 勝行

(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)


 演者は,農業害虫の生態の研究者として石垣島に暮らした1997年から2004年までの7年間に,ナガカメムシ上科,ホシカメムシ上科,ヘリカメムシ上科,カメムシ上科に分類される7科の赤黒白を基調とした派手な警告色のカメムシたちを見た.当時出版されていた図鑑に掲載されていなかった種も多く,はじめは種名どころか,どの科のカメムシかもわからず,頭が混乱した.しかし,その美しさには魅了された.

 国際農林水産業研究センター沖縄支所の仕事では,東南アジアで綿作害虫として知られるアカホシカメムシと,それを特異的に捕食するベニホシカメムシ(いずれもホシカメムシ科)の生態を研究課題とし,それを論題として2007年に論文博士を取得した.その過程で,アカホシカメムシ属のシロジュウジカメムシ類(『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』で演者が担当した項目の内容としては,いずれも同一種のDysdercus decussatus Boisduval, 1835として掲載されている)について,極めて近縁であるが明らかに別種と思われる2種が異所的(側所的)に分布しており,学名にも疑問があることに気づかされた.

 当時はインターネット上の情報が極めて少なかっただけでなく,手を尽くしても入手できなかった文献も多く,演者自身が分類学的な検討をすることは無理だと思われ,深入りすることはできなかった.しかし,当時入手することができた文献からだけでも,江崎悌三らの先人たちが,その2種の取り扱いに苦労させられていたことを理解できた.

 時間が流れる間にインターネット上の情報は凄まじく充実し,昨今,シロジュウジカメムシ類の分類について知るために必要と思われるほとんどの文献は,自宅に居ながらにして無料で読むことができるようになった.分類学や,英語とドイツ語以外の外国語教育を受けた経験がない演者にとって,ラテン語やフランス語で書かれた分類学の文献を読み解くことに困難は大きかったが,それもまたインターネット上の翻訳機能が充実したことによって理解が容易になり,今なおシロジュウジカメムシ類の分類に大きな問題が残されたままになっていることが理解できた.

 今回のサロンでは,石垣島で見られる様々な警告色のカメムシを紹介したあと,アカホシカメムシ属についてより詳しく説明し,さらにシロジュウジカメムシ類の分類の現状と今後の展望について演者の考えを紹介する.演者は既に定年になった身であり,この研究課題についてさらに推し進めることに困難が大きいので,これについて若い研究者が興味を持っていただけるならば,一緒に前に進めることができたら良いと思っている.


会場 オンライン ZOOM による電子サロン

ミーティングID 826-2313-0402

パスワード 053328

日時 2022年 11 月22日(火)午後7時から1時間程度

主催 北海道大学総合博物館 昆虫ボランティア