Entomological Science 5: 391–397, 2002

Kohno K, Takahashi K, Sakakibara M (2002) New prey-predator association in aposematic pyrrhocorid bugs: Antilochus coqueberti as a specialist predator on Dysdercus species. Entomological Science 5 (4): 391-397, December 2002 [Abstract & Full text (pdf) on CiNii (access free)] Note: Antilochus coqueberti is misspelled, and its true spelling is A. coquebertii.


石垣島に転居して1年を過ぎた頃、那覇から仕事で石垣島を訪れていた木村正明さん一行から、ライトトラップか何かで採集したとかいう生きているベニホシカメムシの雌を譲り受けました。当時の同僚だった高橋敬一さんから、ベニホシカメムシアカホシカメムシを食べる、という話を聞き(私の前任者の榊原充隆さんが飼育していたとのこと)、これは仕事のネタにできると思って、譲り受けた個体をもとに飼育を始めました。

ベニホシカメムシは主要な餌だと言われているアカホシカメムシに外見が似ているので、その点においても興味が惹かれました。

まずは手始めに、ベニホシカメムシがどんなカメムシを食べるのかを調べました。候補の餌は、アカホシカメムシに外見が似ている、赤と黒を基調とした警告色の種を中心に選びました。すると面白いことに、ベニホシカメムシはその外見に関わり無く、ホシカメムシ科とホソヘリカメムシ科の種だけを食べ、ホシカメムシ科に近縁なオオホシカメムシ科や、ホソヘリカメムシ科に近縁なヒメヘリカメムシ科やヘリカメムシ科や、赤と黒の警告色の種を多く含むナガカメムシ科マダラナガカメムシ亜科(現在ではマダラナガカメムシ科とされる)は全く食べませんでした。八重山地方にはダルマホシカメムシという、一見ホシカメムシ科には見えないホシカメムシの一種が棲息していますが、ダルマホシカメムシもアカホシカメムシなどの他のホシカメムシ科のカメムシと同様に、一瞬のうちに攻撃されました。

ベニホシカメムシが何を手がかりに餌を認識しているのかはまだ調べていません。おそらく何らかの匂い物質(揮発性の有機化合物)が捕食行動の解発に関わっているのではないかと思います。どなたか興味を持たれた方は、私にご連絡いただけると嬉しいです。