Applied Entomology and Zoology 32: 644–648, 1997

Kohno K (1997) Photoperiodic effect on induction of reproductive diapause in Orius sauteri and O. minutus (Heteroptera: Anthocoridae). Applied Entomology and Zoology 32 (4): 644-648, November 1997 [Full text (pdf) on CiNii (access free)]


ヒメハナカメムシ類Orius spp. (Hemiptera: Heteroptera: Anthocoridae) はアザミウマ類(Thysanoptera: Thripidae)などの害虫に対する生物的防除資材として当時から着目されていました。以前は種名が十分に明らかにされていなかったのですが、安永智秀博士によって種名や同定法が明らかにされたことによって、生物的防除資材として活用する気運が一気に高まりました。ヒメハナカメムシ類の中で日本に広く分布する種はナミヒメハナカメムシOrius sauteriとコヒメハナカメムシOrius minutusであることがわかったのですが、これらは外見での識別が極めて困難で、当時は雄交尾器の把握器の形態を観察して同定する必要がありました。今ならDNAを調べれば雌でも幼虫でも同定が可能なはずです(私はDNAのことはわかりません)。

ここでは、ナミヒメハナカメムシとコヒメハナカメムシの福岡県久留米市の個体群の成虫の繁殖休眠を誘導する日長を調べました。雌では同定できなかったので、次の世代に産まれた雄の交尾器を観察することによって種を確定しなければならなかったので、大変手間がかかりました。それと同時に、野外で採集した個体の休眠率を経時的に調べることによって、野外で繁殖休眠に入る時期も調べました。

その後、タイリクヒメハナカメムシOrius strigicollisが短日条件でも生殖休眠に入り難いということが明らかになり、生物的防除資材として利用されるのはタイリクヒメハナカメムシが中心となりました。