Kohno K (2002) Phoresy by an egg parasitoid, Protelenomus sp. (Hymenoptera: Scelionidae), on the coreid bug, Anoplocnemis phasiana (Heteroptera: Coreidae). Entomological Science 5 (3): 281-285, September 2002 [Abstract & Full text (pdf) on CiNii (access free)]
石垣島に暮らしていたある日のこと、飛んでいるアシブトヘリカメムシの雌を捕獲したら、胸部に小さなハチが付着しているのに気付きました。これは卵寄生蜂に違いないと直感したので、ハチとカメムシを生きたまま持ち帰り、カメムシに卵を産ませ、卵からハチが出てくるかどうかを調べました。すると予想通り、カメムシが産んだ卵からはカメムシの胸部に付着していたのと同じハチが羽化してきました。
その後、このハチの生態の一端を明らかにしてやろうと思いましたが、寄主であるアシブトヘリカメムシが常に観察できるような場所をなかなか見つけられませんでした。しかし、仕事でミカンキジラミの調査を始めてから、アシブトヘリカメムシがよく見られる場所に出くわし、色々な生態的な情報を集めることができるようになりました。そのいきさつについては、「月刊むし」525号(2013年11月号: p. 30–36)にフォトエッセイもどきに書きましたので、そちらもお読みください。
この卵寄生蜂は、カメムシの幼虫には付着していませんでしたが、成虫は卵を産む雌だけでなく、卵を産まない雄にも付着していました。しかし、カメムシが交尾している間に、雄に便乗していたハチが雌に乗り移ることがあることも確認できました。卵寄生蜂の付着個体数は季節が進むにつれて多くなりましたが、カメムシは季節によって寄主植物を変えていました。ここからは推察ですが、カメムシは季節によって寄主植物を変えることによって卵寄生蜂の寄生を免れようとしているのですが、卵寄生蜂はカメムシに付着することによって、異なったカメムシの寄主植物の間を移動することが可能のようです。卵寄生蜂の方が一枚上手のようです。
この卵寄生蜂は未記載種であろうということが明らかになってきました。現在分類学者に記載をお願いしているところです。