微小妄想

delusion of belittlement (E), Kleinheitswahn(D)

自分には価値がない,生きている意味がないなど自己評価の過度の低下を主題とする妄想である。広義には,微小妄想は罪業妄想貧困妄想,心気妄想など,うつ病性妄想の総称として用いられ,躁病にみられる自己評価の肥大を主題とする誇大妄想と対極をなす。微小妄想に伴って,自分の心,身体,あるいは周りの世界の存在を否定する虚無妄想(否定妄想)が生じることもある。Schneider,K.によれば,罪業妄想貧困妄想,心気妄想では「人間のあらかじめ与えられた原不安がうつ病によって露わにされる」。一方,退行期メランコリーなどでは,これらの妄想が妄想着想として一次性に生じ,そのためうつ病よりも妄想性障害が疑われることがある。微小妄想から二次的に被害妄想が生じることがある。統合失調症では,微小妄想が被害妄想から二次的に生じる,あるいは被害的な内容の幻聴に基づいた自己非難や加害妄想に伴う自責から生じることがある。

(針間博彦)