精神運動制止

psychomotor retardation(E), psychomotorische Hemmung(D)

精神運動とは精神活動が行動や発話など運動面に反映されることを指し,うつ病を中心としたうつ状態で認められる行動に移せない状態を精神運動制止という。身体の動きは減少し緩慢となり,発語も減少して会話は遅くなり,小声で低く単調な話し方となる。思考面に表れると思考制止と呼ばれ,思考能力の低下,集中困難,思考の速度の遅延,決断力の低下につながる。精神運動制止や思考制止が強いと,面接において十分に話ができず,状態把握に注意を要する場合がある。精神運動制止と思考制止が悪化すると,行動や発語が全く起こらなくなるうつ病性昏迷に至る。


一方で,うつ病において気分は抑うつ気分であるがイライラ感や焦燥が強く,じっとしていられずに常に動き回る場合があり,激越型うつ病と呼ばれる。退行期うつ病や産褥期精神病に多く,自殺が切迫する場合も少なくない。


(船山道隆)