感情鈍麻

blunted affect(E), Affektabstumpfung(D)

感情の感度が低下して、生き生きとした感情の動きが減少し、やがては全くの無感情状態となってゆく症状を指す。感情を揺さぶられるような出来事を経験しても、それにふさわしい感情的反応が生じず、感情表出も乏しくなってゆく。感情鈍麻は一精神症状を示す術語に過ぎないが、支離滅裂などと同様に、それが産出される疾患としては暗黙裡に統合失調症が想定されている。Kraepelin, E.の早発性痴呆を批判的に継承して統合失調症という概念を提唱したのはBleuler,E.であるが、彼はその特質として連合弛緩・自閉・両価性・感情鈍麻を抽出した。これらのドイツ語の原語の頭文字はすべてAであることから、後にこれらはまとめて「4つのA」と称されることとなった。感情の動きが失われていく現象は内因性気分障害でも生じ得るが、それは感情欠如の感情(Schneider,K.)とも呼ばれ、抑うつ状態の強い時期に出現しその回復と共に消失する可逆的現象であって、基本的には慢性期症状と考えられている感情鈍麻とは異なる。付言しておくと感情欠如の感情は内因性気分障害に固有というわけでは決してなく他の精神疾患でも出現することがある。また、感情鈍麻は基本的には統合失調症の慢性期に多く認められるとはいえ、単純型統合失調症のような病型では病初期から出現する場合もある。


(芝伸太郎)