仮性幻覚

(偽幻覚)

 pseudohallucination(E, F), Pseudohalluzination(D)

歴史的にはKandinski,V.が,客観的性格を欠く幻覚,すなわち主観的空間に定位する鮮明で活発なイメージをこのように称した。Jaspers,K.は知覚と表象を対照し,真性幻覚(真正幻覚)は知覚の性格を持ち,仮性幻覚は表象の性格を持つと区分した。対して,Goldstein,K.は実在判断の違い,すなわちそれが実在しないという自覚がある幻覚を仮性幻覚とした。Baillarger,J.は幻覚には記憶と想像の不随意な活動,外的印象の遮蔽,感覚器官の内的興奮が必須と考えたが,前二者のみに基づくものを精神幻覚(hallucination psychique)と述べ、フランスではこれを仮性幻覚に同義とする。広義には,感覚性,客観性,実体性,外部空間への定位など幻覚本来の特徴のいくつかを欠くものを言う。

(小林聡幸)