妄想様観念/二次妄想


delusion-like idea(secondary delusion)(E), wahnhafte Ideen(D)

Jaspers,Kは妄想を発生的了解ができない真正妄想観念(echte Wahnideen)と,それが可能な妄想様観念(wahnhafte Ideen)に厳密に区別した。妄想様観念は他の心的現象から了解的に生じるものであり,感情,欲動,願望,恐れに心理学的に還元することが可能であり,人格の持続的な素質や一時的な感情状態から了解可能である。それに対して,真正妄想観念はそれ以上遡ることができず,現象学的に究極のものであり,了解関連の総体である人格の変化を伴う。Jaspersは妄想様観念の例として,幻覚などに基づく一時的誤謬,うつ病性あるいは躁病性の妄想観念,優格観念を挙げている。これらはいずれも発生的了解が可能であり,その内容は思考に媒介され,人格の変化を必要としない。妄想様観念は強い確信を伴う優格観念(支配観念)から区別することがしばしば困難である。真正妄想は一次妄想,妄想様観念は二次妄想とも呼ばれる。


妄想様観念は人格発展として緩徐に生じることもあれば(妄想性人格発展),体験に対する感情的応答に方向付けられた異常体験反応として生じることもある(妄想反応)。Schneider,Kは,不安や不信といった特定の気分に基づく了解可能な解釈,すなわちきっかけのある自己関係付けである妄想反応を,了解可能なきっかけなしに異常な意味付けが生じる妄想知覚から厳密に区別した。ただし,妄想反応は非精神病者のみに生じるわけではなく,統合失調症においても異常気分に基づいて生じうる。


DSMでは真正妄想と妄想様観念は区別されずに妄想と一括されるため,妄想様観念はすべて妄想として精神病症状とみなされる。


(針間博彦)