意欲低下

lack of motivation(E), Motivationsmangel(D)

意識障害や認知面の低下とは独立して,意志や欲動が減退ないしは欠如した状態を指す。外部からの刺激には最小限応じるが,自発的に行う行動があまり認めれない状態であり,外界に生じていることに対して根本的に無関心である。意欲低下は,統合失調症やうつ病や双極性障害のうつ病相,脳器質疾患で認められ,社会機能や身体機能に大きな負の影響を与える。うつ病に伴う意欲低下は治療によって改善しやすいが,他の疾患に伴う意欲低下は現段階の薬物療法には反応しにくい。


意欲低下と類似した用語として発動性低下,自発性低下,アパシーがある。意欲(Wollen)が意志や欲動といった精神面からの概念であるのに対して,発動(Antrieb)とは精神面だけではなく身体面も含む生物学的な意味合いがあり,発動とはあらゆる精神面,身体的過程を先へと駆り立てる力であるとされている。自発性(Initiative)は意欲と発動性の両者を含む概念であるが,目的に向かって意志的に行為を起こすことが元々の意味である。アパシー(apathy)とは感情がないという意味であり,情動面から捉える概念である。主に脳血管障害や変性疾患など脳器質疾患に対して使われることが多い。臨床上の状態像では,これらの用語を使い分けることが難しいことが多い。


(船山道隆)