妄想着想

delusional intuition(E), Wahneinfall(D)

Jaspers,K.は真正妄想観念の形式として妄想知覚,妄想表象,妄想追想,妄想意識を挙げた。Schneider,K.はそのうち妄想表象を妄想着想と言い換え,妄想追想を記憶性妄想知覚と記憶性妄想着想に分離した。


妄想着想とは着想が意識内に突然に生じ,最初から妄想的確信を伴うものである。その内容には,自己に関するもの(心気,血統,特殊能力,宗教的あるいは政治的召命など),他者に関するもの(被害,被愛など),事物に関するもの(発明など)などがある。妄想着想はきっかけなく生じることもあれば,何かを見たり読んだりした際にそれが刺激となって生じることもある(知覚結合性の妄想着想)。知覚結合性の妄想着想は知覚に異常な意味付けがされるわけではなく,この点において妄想知覚と区別される。


Schneiderによれば,妄想着想は「患者から着想まで」の一分節性の過程であり,特有の構造がないため,非精神病性の着想(「ひらめき」),優格観念,強迫観念と区別することは時に困難である。そのため診断上の重要性は妄想知覚よりもはるかに小さく,統合失調症の2級症状のひとつである。


妄想着想は統合失調症だけでなく,あらゆる内因性精神病と外因性精神病に出現しうる。妄想着想は自生妄想とも呼ばれる。一方,統合失調症の前駆期にみられる自生思考は,内容が不特定・多岐にわたり妄想的確信を伴わないことから,妄想着想から区別される。


(針間博彦)