olfactory hallucination (E), Geruchshalluzination (D),  

hallucination olfactive (F)

嗅覚に関する,あるいは嗅覚領域に生じる幻覚。人間にとって嗅覚は視覚や聴覚に比して分化度が低く, ゆえに訴えに際して幻嗅, 錯嗅, あるいは嗅覚過敏のいずれとも決めがたいことも多い。多くは「何かが焦げるような」, 「腐敗したような」と表現されるような悪臭や不快な臭いの訴えであり,統合失調症や自己臭恐怖でみられるほか,側頭葉てんかん(鉤回発作)にもみられる。統合失調症ではその「臭い」(幻嗅)に関連づけて,例えば「毒ガスが撒かれている」など被害妄想と結びついて訴えられることが多い。自己臭恐怖では「自分から発する不快な臭いのために他人が自分を避ける」という忌避妄想が病像の主体をなしており, 幻嗅はない場合もある。

(関由賀子)