誇大妄想

delusion of grandeur(E), Größenwahn(D)

過度に肥大した自己評価を主題とする妄想の総称であり,自己の並外れて優れた能力,莫大な経済力,きわめて重要な地位や使命などの妄想的確信が生じる。中心となる妄想主題に応じて,発明妄想,血統妄想,宗教妄想,被愛妄想などに分類される。躁病では,高揚気分に由来する妄想様観念として誇大妄想が生じる。一方,誇大妄想が単一症候的に長期に持続する場合,妄想性障害の一型とみなされる。この場合,誇大妄想はしばしば自己感情の高揚を伴うため,横断的病像から躁病と鑑別することはときに困難である。統合失調症では,誇大妄想が妄想着想妄想知覚として一次性に生じることもあれば,幻声被害妄想などに基づいて二次性に生じることもある。躁病,妄想性障害,統合失調症のいずれも場合も,誇大妄想に影響された行動が現実生活の中で衝突や挫折を生じると,その結果として二次的に被害妄想が生じうる。統合失調症の慢性期では,誇大妄想はしばしば形骸化し,二重見当識を伴いつつ持続しうる。誇大妄想は進行麻痺など外因性精神病にもみられる。

(針間博彦)