アンヘドニア

anhedonia(E), Anhedonie(D)

快楽喪失、失快楽症などと訳される症状。本来であるならば、喜びや快楽を感じることができるはずの行為から、そういう感情を喚起されなくなる状態を指す。非特異的症状であり、精神疾患では主として内因性気分障害と慢性期統合失調症で用いられるが、両者ではアンヘドニアの生じる機制が精神病理学的にも精神薬理学的にも異なっているであろうことは想像に難くない。内因性うつ病の回復過程に関する笠原の有名な階段状シェーマによれば、諸症状は「イライラ」「不安」「ゆううつ」「手がつかない」「根気がない」「興味がない」「喜びがない」「生きがいがない」の順で回復してゆくとされる。アンヘドニアは「喜びがない」あたりに相当するから、内因性うつ病では比較的回復に時間がかかる症状であると言える。ちなみに、アンヘドニアはパーキンソン病のような身体疾患でも出現し得るし、性医学の分野ではかつて不感症や冷感症と称されていた病態を指す術語でもある。


(芝伸太郎)