昏迷

stupor(E), Stupor(D)

昏迷は,意識障害がなく,外界をある程度は認識しているにもかかわらず,これに応じる意志が発動されない状態である。統合失調症圏に出現する昏迷やうつ病に出現するうつ病性の昏迷だけではなく,解離性障害や心因反応に出現する解離性昏迷やヒステリー性昏迷も存在する。その類縁として,小児や知的障害にみられる驚愕反応である情動昏迷や,拘禁状態にて突然昏迷に陥る拘禁昏迷がある。昏迷では筋緊張が亢進していることが多いが,比較的筋緊張が弱いと弛緩性昏迷と呼ばれる。また,昏迷の程度が軽いと亜昏迷と言われる。


これらの中でも,最も重症であり長期化するのは統合失調症圏に出現した緊張病に伴う昏迷であり,緊張病性興奮,カタレプシー,筋緊張亢進,無言症,一点凝視,しかめ面などを伴う。一方でうつ病性の昏迷ではしばしば緊張病性興奮は伴わず,カタレプシーや筋緊張を伴わない弛緩性昏迷であることが多い。解離性障害に伴う昏迷も弛緩性昏迷である。


統合失調症での昏迷を中心に,昏迷では身体疾患,すなわち,誤嚥性肺炎,深部静脈血栓症/肺血栓塞栓症,頻脈性の不整脈,尿閉,横紋筋融解症,脱水やそれに伴う腎前性腎不全などが出現することがあり,身体疾患には十分に注意をする必要がある。治療面ではベンゾジアゼピンの投与が有効であり,重症例では修正型電気けいれん療法が用いられる。


(船山道隆)