生物学的製剤
(Biological DMARDs, ”バイオ医薬品”または”バイオ”)
(Biological DMARDs, ”バイオ医薬品”または”バイオ”)
生物学的製剤はどのような方が使うべきか
「関節リウマチ診療ガイドライン2020」が示すフローチャートを見てみます。
PhaseI: 使えない特別な理由がない限りまずはメトトレキサートを使う。従来型抗リウマチ薬を併用してもよい。発症初期はステロイドを短期間使用可。
PhaseII: 上記で寛解に至らず、関節破壊のリスクが高い場合、生物学的製剤またはJAK阻害薬を使用する。
PhaseIII: 上記で寛解に至らない場合、生物学的製剤またはJAK阻害薬の種類を変更する。
と記載されています。
このように、基本的にはPhaseIIの段階で使用します。ただし活動性が高くPhaseIを含む従来治療では寛解に至ることができそうにない場合は、早々にPhaseII以降に進む場合もあります
生物学的製剤の長所と短所
● 長所
・効果が高く、即効性もある。炎症の経路を強く抑える。
・肝臓や腎臓が悪くても問題なく使用できる。
✕ 短所
・高額(3割負担だと2万円/月以上)
・病原体に対する抵抗力を下げてしまう
・点滴や注射での投与となるため、手間がかかる。
生物学的製剤にはどんな種類があるのか
現在、生物学的製剤には3つのグループがあります。①TNF阻害薬、②IL6阻害薬、③リンパ球共刺激分子調節薬です。生物学的製剤ではありませんが④JAK阻害薬を加えて、どの薬を使うか吟味されます。①-④は併用できませんので、どれか1つを選ぶことになります。
TNF阻害薬
レミケード®(一般名インフリキシマブ) ※バイオシミラーあり
エンブレル®(一般名エタネルセプト) ※バイオシミラーあり
ヒュミラ®(一般名アダリムマブ) ※バイオシミラーあり
シムジア®(一般名セルトリズマブぺゴル)
シンポニー®(一般名ゴリムマブ)
ナノゾラ®(一般名オゾラリズマブ)
オリジナル品が6種、さらにそのうち3つに価格の安い後続品(バイオ後続品またはバイオシミラーといいます)が使用可能です。
TNF阻害薬は単剤での使用よりも、メトトレキサートを併用する方が有効性が高まります。
IL6阻害薬
アクテムラ®(一般名トシリズマブ)
ケブザラ®(一般名サリルマブ)
炎症反応が特に強い場合、メトトレキサートが使えない場合に使われます。
CRPを下げる効果がとても強く、ほとんどの場合CRPが0近くなります。CRPが0
でも関節炎が残っていることがあることや、感染症にかかった時もCRPが上がりにくいため感染症が気づかれにくくなることに注意が必要です。
リンパ球共刺激分子調節薬
オレンシア®(一般名アバタセプト)
抗CCP抗体が高い方やシェーグレン症候群を合併している方に効果が期待されます。感染症のリスクがほかの生物学的製剤より低い点も利点です。
※コメントには、製作者の個人的意見が含まれます。またわかりやすくするために細かな点を省いて記述している部分があります。実際の治療は主治医とよく相談のうえで進めてください。私が直接かかわっていない患者さんで本稿の内容から判断した結果については一切責任を負いかねます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2022年8月2日 深谷進司