オルミエント
(一般名;バリシチニブ)
(一般名;バリシチニブ)
オルミエントは2番目に登場したJAK阻害薬です。JAK阻害薬は炎症の信号を伝えるJAKという中継物質の働きを抑え、関節炎を改善させる働きがあります。JAKを経由する炎症の信号は複数あり、同時に多数の炎症の信号を抑えます。
JAK(ヤーヌスキナーゼ)の種類は4つあり、どのJAKを抑える働きが強いかによって、薬の効果や副作用の性質に違いが現れます。また、薬は肝臓で分解されるか、腎臓から尿中に排出されるかという点が大きく異なります。オルミエントはJAK1とJAK2を抑える作用が強く、腎臓から排泄されます。JAK2はとくに血液の細胞の増殖・分化に関わっていてここを抑えることで貧血傾向になる場合があります。ただし実際の影響は少ないようです。腎機能が悪い(eGFR<60)場合は排泄が遅れ効きすぎて副作用のリスクが高まるため半量へ減量が必要です。さらに腎機能が悪い(eGFR<30)の時は使用禁止となります。
内服薬としては効果がとても高く、生物学的製剤と比べて同等~やや高い効果が期待できます。TNF阻害薬のアダリムマブと比較した臨床試験がありますが、有効性で同等か若干上回りました(RA-BEAM試験)。
JAK阻害薬はメトトレキサートとの併用がそれほど重要ではなく、①メトトレキサートと併用した方が効果は高いですが、併用しない場合との差は小さいです。つまり、単独でも高い効果を発揮できます。ただし学会としては安全性を担保するためにメトトレキサートが十分量使える患者さんに対して使用することを推奨しています。
JAK阻害薬全般に免疫抑制作用がありますが、生物学的製剤と比べて帯状疱疹がでやすいです。オルミエントを100人が一年間使用した場合、約6人に帯状疱疹が起きます(日本人、臨床試験の併合解析1)) 。通常量のオルミエント使用と比べて、半分に減量している方が帯状疱疹が少ない傾向があります。
オルミエントは、通常量の1日4mgで治療開始して、十分な効果が出た場合は1日2mgへ減量を考慮することとなっています。これは「RA-BEYOND」という臨床試験で十分な効果が出た場合は1日2mgへ減量してもさほど効果が落ちないことが示されたからです。費用や帯状疱疹のリスク低減を考えると、良くなった後は4mgを続けるよりも2mgへの減量を検討する価値がありそうです。
オルミエント(バリシチニブ)の費用と特徴のまとめ
4週分の値段は、1割負担で¥15,000、2割負担で¥30,000、3割負担で¥44,000
・高い効果。一部アダリムマブよりも良いデータが出ている。
・1日1回内服。
・腎機能が悪い時は減量が必要。高度の腎機能障害の場合は使用不可。
・貧血の副作用に注意。
・メトトレキサートを併用しなくても効果が高い(JAK阻害薬全般)。
・高額である(JAK阻害薬全般)。
・帯状疱疹が出やすくなる(JAK阻害薬全般)。
以上、参考となれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
2022年8月15日 深谷進司
参考資料
1) 日本人帯状疱疹発生頻度データ
日本イーライリリーWEBサイト https://www.lillymedical.jp/ja-jp/answers/57572