ナノゾラ
一般名:オゾラリズマブ
一般名:オゾラリズマブ
ナノゾラ(オゾラリズマブ)はTNF阻害薬の中で6番目として2022年11月に発売された薬です。TNF阻害抗体はキメラ型(レミケード)→ヒト化(ヒュミラ)→完全ヒト型(シンポニー)と進化してきましたが、ナノゾラは従来の抗体とは異なる、新しい構造の抗TNF抗体です。
ヒトの抗体は重鎖と軽鎖が組み合わさった形をしていて、全体で分子量15万という大きな分子です。
それに対してラクダの仲間が持つ抗体は重鎖のみからできており、抗原結合部位(VHH)だけだと分子量1.5万とヒト抗体と比べて10分の1です。TNFをキャッチする抗原結合部位は2つあり、1つのTNFを抗原結合部位で挟み込むように結合します。構造が簡単なので合成が容易で熱に対して安定であることなどメリットがあります。
ナノゾラはこのようなラクダ型のTNF結合部位を2つ持ち、さらにアルブミン結合部位を持つ構造をしています。血液中でアルブミンと結合することにより体内に長くとどまり、分子が小さいため炎症部位に運ばれやすいというメリットもあります。さらに、血液中半減期が長く効果が持続しやすいため、4週ごとの皮下投与で済みます。
メトトレキサートで効果不十分であった関節リウマチ患者さんや、メトトレキサート非併用の関節リウマチ患者さんに対する効果が臨床試験で確認されています(OOZORA試験、NATSUZORA試験)。従来はTNF阻害薬はメトトレキサートと併用しないと効果が落ちると考えられていたため、TNF阻害薬にしてはメトトレキサートの併用なしでも相当の効果が期待できる点で優れていると言えます。
4週ごとといえばシンポニー®と同じ投与間隔になります。シンポニー®は皮下注射で4週ごとの投与で済むというメリットを生かして自己注射が覚えられない、やりたくない方に向けて使用されることが多いです。シンポニー®では倍量の100mg(2本)ではメトトレキサートなしでも治療効果が機体出k理宇という点も、ナノゾラ®と似ています。どのように使い分けが行われるか、これからの課題になるでしょう。またラクダ由来の蛋白質であることが抗製剤抗体のできやすさに影響しないか見ていく必要があります。
知られている副作用は従来の生物学的製剤と比べて同等で許容範囲内と考えられてます。作用機序から感染症に対する抵抗力低下を伴います。注射部位反応も起きうる副作用ですが、ナノゾラが免疫複合体を形成しないのはヒト型抗体よりも利点であると考えられています。
デバイスは、ボタンレスのオートインジェクターが発売されているため自己注射の操作はしやすいです。
参考文献
1)宮﨑誠生 生物工学 96(4) より
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
2022年10月15日 深谷進司