シムジア
(一般名;セルトリズマブ・ぺゴル)
(一般名;セルトリズマブ・ぺゴル)
シムジアは、生物学的製剤の中で5番目の製剤として2013年に登場しました。TNF阻害薬というグループに属します。関節リウマチの病状に大きく関わるTNFという炎症介在物質を抑え、関節炎を改善させる働きがあります。シムジアのTNFをキャッチする部分は抗体と同じ形をしていますが、抗体のFcという部分がなく、PEG(ポリエチレングリコール)という成分を結合させてあります。これにより体内での持ちが良くなり、炎症部位に薬が届きやすくなり、さらに中和反応やアレルギーが起きにくくなります。本来の抗体の形を変化させたもう一つのメリットは、胎盤を通過しにくくなることです。
1回投与量は200mgで、2週ごとに皮下注射で投与されます。初期の1か月にはローディングといって、倍量の400mgを2週ごとに3回投与します。このことにより開始後非常に早期に関節炎の改善効果が表れます。最初は注射器の形をしたデバイスでしたが、今はペン型の注射器が主流になっています。握りの部分が太く握力が弱い方でも使いやすいでしょう。またボタンがなく押し付けるだけで注入が始まり、操作がシンプルです。
TNF阻害薬にはレミケードを含めてオリジナル品が5種類、バイオ後発品が3種類あり、さらに近いうちに1種類の製剤が追加される予定で、バリエーションが豊富です。通常量での効果にそれほど大きな違いはないため、患者さんの状態や好みに合わせて選ぶことが可能です。選択のポイントとして以下が挙げられます。
・点滴で行うか、皮下注射で行うか、皮下注射の場合はどの注射デバイスを好むか
・妊娠希望の方に使いやすいか(胎盤通過性があるか)
・後発品で値段を抑えるか
・効果を高めたい時に増量ができるか
また、TNF阻害薬はメトトレキサートとの併用がとても重要で、単独で使用するよりもメトトレキサートと併用した方が高い効果が発揮できます。そのためすでにメトトレキサートを使えている人に適します。
そんな中で、シムジアの特徴は、①注射器が太く握りやすいことです。握力が弱めの方は持ちやすいでしょう。
②関節破壊のリスクが高いと見込まれる患者では、関節リウマチの診断直後から使用が認められています。生物学的製剤の多くは、生物学的製剤以外の従来治療に効果不十分な場合に使用するのが基本です。シムジアは関節リウマチ発症ごく早期の方にメトトレキサートと併用で使用すると関節破壊が抑える効果がとても高いことが証明されており、関節リウマチの診断直後から使用することが認められました。費用面は高くなってしまいますが、即効性と高い効果を期待するのであればシムジア+メトトレキサートで治療を開始することを考慮できます。
③胎盤を通過しにくいため、妊娠中も使用を考慮できます。胎児は自分で抗体を作れないため母親の血液から抗体を運び胎児側の血液に移します。シムジアの構造の特徴から、胎盤へ抗体の輸送がほとんどおきないため、胎児への影響が非常に少ないです。
④RFが特に高値 (166以上)の方は、他のTNF阻害薬よりも効果が出やすいことが論文で報告されています。シムジアは抗体の形を改変した構造をしており、RFが結合するFcという部分がないのでRFに結合して効果が薄れることが少ないためと考えられています。1)
欠点というわけではないですが、使用上の制約を2つ挙げます。
①メトトレキサートとの併用が望ましいです。TNF阻害薬は全般的にメトトレキサートと併用で効果が高まりやすいので併用が望ましいので、必須ではありませんがメトトレキサートが使えている方が適しています。
さらに、②効果不十分な時に増量はできません。体格が大きくても小さくても、1回に使う量が同じであるため、体格の大きい人では薬が全身にいきわたりにくくなるため、体格が大きい人は効果が劣る可能性があります。この傾向はどの皮下注射製剤も同じです。体格が大きい人は、体重に合わせて投与量を増やせる製剤(TNF阻害薬であればレミケード)が良いでしょう。
シムジア(セルトリズマブ・ぺゴル)の費用と特徴のまとめ
4週分の値段は、1割負担で¥12,000、2割負担で¥24,000、3割負担で¥35,000
・2週ごとに皮下注射。2回分を4週ごとに投与してもよい。
・開始後3回まで間隔を短く投与(ローディング)することで効果が早期に現れる。
・注射器具は太く握りやすい。ボタンがなく操作しやすい。
・胎盤を通らないため妊娠中も使用を考慮できる
・RFが特に高値(166以上)を示す方には、他のTNF阻害薬よりも効きやすい
・関節破壊リスクが高い場合は診断直後から使ってよい。
・効果不十分の時の量の調整はできない。
・メトトレキサート併用が望ましい(必須ではない)
以上、参考となれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
2022年8月15日 深谷進司 (2023年6月24日一部改訂)
参考文献
Nakayama Y. et al. Rheumatol Int 42(7) 1227-1234, 2022
Tanaka Y. et al. Int J Rheum Dis. 2023;26:1248–1259