エンブレル
(一般名;エタネルセプト)
(一般名;エタネルセプト)
エンブレルは、生物学的製剤の中で2番目の製剤として2005年に登場しました。エンブレルです、エンブレムではないのでご注意を。皮下注射製剤としては初めての製剤でした。最初は注射器の形をしたデバイスでしたが、今はペン型の注射器が主流になっています。投与方法についても、発売時は25mgを週2回という方法でしたが、50mgを週1回でも効果が変わらないということがわかり、現在では後者の投与法が主流です。バイオ後続品であるエタネルセプトBSが2018年から販売されています。
エンブレルは、TNF阻害薬というグループに属します。関節リウマチの病状に大きく関わるTNFという炎症介在物質を抑え、関節炎を改善させる働きがあります。
TNF阻害薬にはレミケードを含めてオリジナル品が5種類、バイオ後発品が3種類あり、さらに近いうちに1種類の製剤が追加される予定で、バリエーションが豊富です。通常量での効果にそれほど大きな違いはないため、患者さんの状態や好みに合わせて選ぶことが可能です。選択のポイントとして以下が挙げられます。
・点滴で行うか、皮下注射で行うか、皮下注射の場合はどの注射デバイスを好むか
・妊娠希望の方に使いやすいか(胎盤通過性があるか)
・後発品で値段を抑えるか
・効果を高めたい時に増量ができるか
また、TNF阻害薬はメトトレキサートとの併用がとても重要で、単独で使用するよりもメトトレキサートと併用した方が高い効果が発揮できます。そのためすでにメトトレキサートを使えている人に適します。
そんな中で、エンブレルの利点は、①補助具が豊富です。エンブレルは細くて冷蔵庫内での保存スペースが少なくて良さそうですが、その分握力が弱い方は持ちにくいという難点があります。それを解消するために補助具が提供されています。
・取っ手のところを大きくして握りやすくするための補助具(Eベース)
・体に押し付けるところがブレないように固定する補助具(エンブレルEハンドル)
・操作がシンプルで痛みが少なく、省スペース性のある自動注入器(クリックワイズ)
②妊娠を考えているときや妊娠中に使用しやすいです。エンブレルはTNFをブロックするという点で抗体と似ていますが構造が異なります。抗体は胎盤を通り胎児の血液に入りますが、エンブレルは胎盤を通る量がとても少ないです。そのため妊娠中に関節炎を悪化させずに過ごせるようにするため、エンブレルを継続することがあります。
③感染症リスクは他のTNF阻害薬と比べてさほど変わりませんが、効果の持続期間が短いため感染症にかかってしまったときは中止後に早く体から消失することで免疫抑制状態から脱しやすいと考えられています。
欠点というわけではないですが、使用上の制約を3つ挙げます。
①投与間隔が短いことです。他の皮下注射製剤では2週ごと、4週ごとの製剤がある中で1週ごとの投与は手間と感じる方もおられるかもしれません。
②メトトレキサートとの併用が望ましいです。TNF阻害薬は全般的にメトトレキサートと併用で効果が高まりやすいので併用が望ましいので、必須ではありませんがメトトレキサートが使えている方が適しています。
さらに、③効果不十分な時に増量はできません。体格が大きくても小さくても、1回に使う量が同じであるため、体格の大きい人では薬が全身にいきわたりにくくなるため、体格が大きい人は効果が劣る可能性があります。この傾向はどの皮下注射製剤も同じです。体格が大きい人は、体重に合わせて投与量を増やせる製剤(TNF阻害薬であればレミケード)が良いでしょう。
エンブレルの費用と、特徴のまとめ
エンブレル(エタネルセプト)の費用と特徴のまとめ
4週分の値段は、1割負担で¥9,000、2割負担で¥18,000、3割負担で¥26,000
・補助具が豊富に用意されている。
・1週ごとに皮下注射。投与間隔は比較的短い。
・効果不十分の時のアレンジはできない。
・メトトレキサート併用が望ましい(必須ではない)
・妊娠を考えているときや妊娠中に使用しやすい
以上、参考となれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
2022年8月14日 深谷進司