レミケード
(一般名;インフリキシマブ)
(一般名;インフリキシマブ)
この薬は、私が医師になった翌年の2003年に登場し、関節リウマチに用いられている生物学的製剤の中で最も歴史が長い薬剤となっています。今ではリウマチの治療目標として寛解を目指すのが当たり前の時代になっていますが、登場した当時は今ほど良い薬がなかったのでリウマチと分かっていても患者さんに施せる治療に限りがあったものです。しかしレミケードという画期的な薬がでたことで、車いすで入院した患者がレミケードの投与を受けて翌日に階段をすたすた歩いていた、なんてすごい薬なんだ!とリウマチ医を驚かせたものです。
歴史が長い分、たくさんの臨床試験データがあり、どのような使い方が適切かについて検討が積み重ねられています。また、2018年にはバイオ後発品であるインフリキシマブBSが発売されています。
レミケードは、TNF阻害薬というグループに属します。関節リウマチの病状に大きく関わる、TNFという炎症介在物質を抑え、関節炎を改善させる働きがあります。
TNF阻害薬にはレミケードを含めてオリジナル品が5種類、バイオ後発品が3種類あり、さらに近いうちに1種類の製剤が追加される予定で、バリエーションが豊富です。通常量での効果にそれほど大きな違いはないため、患者さんの状態や好みに合わせて選ぶことが可能です。選択のポイントとして以下が挙げられます。
・点滴で行うか、皮下注射で行うか、皮下注射の場合はどの注射デバイスを好むか
・妊娠希望の方に使いやすいか(胎盤通過性があるか)
・後発品で値段を抑えるか
・効果を高めたい時に増量ができるか
また、TNF阻害薬はメトトレキサートとの併用がとても重要で、単独で使用するよりもメトトレキサートと併用した方が高い効果が発揮できます。そのためすでにメトトレキサートを使えている人に適します。
そんな中で、レミケードの利点は、①点滴で治療を受けられることです。生物学的製剤は皮下注射が多く、注射のやり方を覚えて自分で打つのが基本ですが、自分で皮下注射したくない!という方には適しています。
また、②投与間隔が長いです。3回の短い間隔での初期投与以降は、8週間ごとの点滴となります。安定していればさらに投与間隔を延長する場合もあり、来院が少なくて済む可能性があります。来院を減らしたい場合には向いています。
さらに、③増量や、投与間隔短縮ができることです。個人的にはこれが最も大きな他の製剤との違いと思います。効果不十分な場合には通常量の3.3倍までの増量、または4週間までの短縮、または増量と短縮をかけあわせて2倍の増量x4週の短縮という使い方ができます。ほかの製剤でシンポニーでも2倍量の増量ができますが、3.3倍まで増量できるのはレミケードだけです。医療費が高くなりますが、レミケードが効いてるが効果不十分な場合には、増量や投与間隔短縮で対応するのもありということです。
逆に欠点としては、①効果の減弱が起きやすいことです。レミケードはキメラ型といって、マウスのタンパク質を鋳型にして、人間のタンパク質に近づけて作られています。このためレミケードをマウスの蛋白質、つまり異物であると体が認識してしまうとレミケードに対する中和反応が起きてレミケードが体に入ってもすぐに中和されて効果が落ちてしまうことになります。同じ量を使っていても以前ほど効果がなくなった場合は中和反応を疑うべきです。次のレミケード投与前にどれくらいレミケードが血液中に残っているか調べることで、中和反応が起きていないか関節的に調べることができます。
また、同じ理由で他の製剤より②アレルギーが起きやすいです。マウスのタンパク質は異物ですから体が過剰反応を起こして投与中にアレルギー症状がおきることがあります。選択肢が少なかった時代にはなんとかしてレミケードを使い続けるための工夫が行われましたが、現在ではアレルギーを起こしてしまった場合は他の製剤に変更するのがよいでしょう。
③メトトレキサートとの併用が必須です。上述したように、TNF阻害薬は全般的にメトトレキサートと併用で効果が高まりやすいので併用が望ましいですが、レミケードだけがルール上メトトレキサートの併用が必須で、ほかのTNF阻害薬は必須ではありません。
④レミケードは胎盤を通じて胎児の血液に入るため、妊娠がわかった方は中止する必要があります。メトトレキサートも妊娠を希望している場合は使うべきではないので、妊娠を考えた時点でレミケードは避けるべきです。
レミケードの費用と、特徴のまとめ
体重60kgの方=200mgの費用 ※体重x3で計算し、100mgごとの区切りとなります
1割負担で¥13,000、2割負担で¥26,000、3割負担で¥39,000 / 8週おき
・8週ごと点滴を基本とし投与間隔が長い。
・効果不十分の時のアレンジがしやすい。増量・投与間隔短縮ができる。
・続けていると効果が弱まりやすい
・アレルギーが起きやすい
・メトトレキサート併用必須
・妊娠を考えているときや妊娠中は使えない
以上、参考となれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
2022年8月13日 深谷進司