関節リウマチに関する血液検査結果のみかた
関節リウマチの診断や治療経過においては、血液検査の情報がとても大事です。
基本的には医師がみてその意味・解釈だけを伝えられることが多く、個別の項目までは説明を受けることが少ないかもしれません。しかしご自身でも検査結果の意味を知り、自分の体の状態を正しく知っていただくと問題点を医師と共有しやすくなり、良い形で診療が受けられると思います。
体の状態を判断したり変化を知るためには、一つの項目だけに注目するのではなく、いくつかの項目のまとまりで総合的に判断したり、一回ではなく何度かの数値の変化に注目します。少しの基準値オーバーでは心配しなくてもよい場合も多く、全体で意味をとらえることも大事です。
採血で見るべきポイント
・最初の診察で受ける検査
症状が関節リウマチのせいで起きているのか、類似する別の病気なのか。
・治療することが決まった際に受ける検査
薬を使うのに内臓の働きに問題ないかと、感染症を持っていないか。
・治療開始後に受ける検査
副作用が出ていないかどうかと、治療の効果が出ているかどうか。
炎症
CRP, 血沈, MMP-3, WBC
CRP, 血沈は体全体の炎症を反映します。リウマチの勢いがある時や感染症で高くなります。WBC(白血球数)も炎症を反映して上昇します。
MMP-3は関節炎の指標です。毎回の測定は認められていないため時々測定します。
肝機能
AST、ALT、LDH、γGTP、T-bil
薬の分解や排泄に関わります。薬の効きすぎや体に合わない場合に上昇します。特にメトトレキサートは効きすぎると肝機能障害が起きることがあります。脂肪肝や飲酒でも高くなります。
腎機能
BUN, Cr, eGFR
尿をつくる働きや脱水の有無をみます。尿から排出される薬を使う方は、特に注意が必要です。
電解質
ナトリウム;Na、カリウム;K、カルシウム;Ca
腎臓で調節されているため腎臓が悪いと乱れることがあります。
骨粗鬆症の薬を使用する方は、カルシウムの値が上がりすぎたり、逆に下がりすぎたりすることがあるので注意しておきましょう。
血球数
WBC;白血球、Hb;ヘモグロビン、血色素、Plt;血小板
白血球は感染症のチェック、ヘモグロビンは貧血の程度、血小板は出血しやすさをみます。メトトレキサートが効きすぎている場合に血球減少の副作用が現れることがあります。
間質性肺炎の検査
KL-6、LDH
間質性肺炎の指標。上昇傾向の場合は要注意。レントゲンやCTの画像を合わせて判断することが多いです。LDHは肝臓、筋肉、血球の異常などでも上昇します。
血糖・糖尿病の指標
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
1カ月間の平均血糖値の指標。ステロイドを使うと血糖値があがりやすくなるため時々チェックします。すでに糖尿病の方では、良くなったかどうかの目安になります。
脂質
コレステロール(HDL:善玉、LDL:悪玉)、中性脂肪(TG)
コレステロールや中性脂肪が高いと動脈硬化の原因となり、将来脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなってしまいます。ステロイドの使用によりこれらの値が上がってしまうことがあるので時々チェックします。
尿酸
UA(尿酸)
尿酸値が高いと腎臓を傷つけてしまいます。また腎臓が悪いと尿酸があがるという悪循環になります。痛風や、尿管結石の原因になることもあります。
尿酸が含まれる量が多い食品は、内臓肉、アルコール摂取。尿酸を下げるには水分をしっかりとること、野菜を摂ること。
尿酸は体内でも作られており
自己免疫
RF(リウマチ因子)
異常な免疫反応をみるものであり、リウマチの診断(リウマチらしさ)および勢いを反映します。リウマチ以外の膠原病や健康な人でも高齢になればなるほど、RFが陽性反応が出ることが多くあります。ただし症状がないのに健診でRFが高いと言われただけの場合は心配ないことが多いです。
リウマチらしさを測る検査ですが、健康な人や他の疾患でも陽性になることがあり、関節リウマチに特化した検査ではありません。
RFが陽性を示す関節リウマチ以外の原因と、それぞれの陽性となる割合
全身性エリテマトーデス 20-30%
強皮症 30-50%
多発性筋炎・皮膚筋炎 20-40%
Sjogren症候群 80-90%
肝疾患(肝炎、肝硬変など) 30-50%
慢性肺疾患 5%程度
健常人 (加齢に伴い上昇) 1-数%
抗CCP抗体
リウマチ反応のひとつです。診断の時に測定します。RFよりもリウマチに特化した指標で、関節の症状があり抗CCP抗体が陽性ならば、多くの場合リウマチと診断されます。また抗CCP抗体の値が高い場合は将来関節の変形が進みやすいため、しっかり治療していく必要があります。
抗核抗体
膠原病を疑われたときに、様々な膠原病らしさがあるかどうか、最初に判断するために調べます。健康な方でも陽性になってしまうことがあり、膠原病らしい症状がなければ結果にこだわらない方がいい場合もあります。
感染症に関する項目
B型肝炎関連(HBsAg・HBcAb・HBsAb・HBV-DNA定量)
60歳以上の方だと、15%くらいの人が気づかない内にB型肝炎に以前かかっています(当院調べ)。
B型肝炎に一度かかった人は免疫を抑える薬を使うと再発し重症の肝炎を起こすことがあり、免疫抑制療法を始めるときに検査します。一度かかったことがある方は再発していないか定期検査が必要です。
T-spot、クオンティフェロン(結核)
結核菌に感染したことがある場合は陽性となります。結核菌に感染したことがあってもきちんと治療して治した場合は問題ないのですが、気づかないうちに結核菌を取り込んでしまっている場合は免疫抑制療法により結核が本格的に発症してくる場合がありますので、治療開始の時点で結核菌に感染したことがあるかどうかを調べておくのが重要です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
わからないことや心配なことは、主治医に確認してくださいね。
記事作成 2022年3月5日 深谷進司