この薬は、2018年に登場しました。関節リウマチに用いられている生物学的製剤の中では遅く登場しました。
ケブザラは、IL-6(インターロイキン-6)阻害薬というグループに属します。関節リウマチの病状に大きく関わる、IL-6という炎症介在物質を抑え、関節炎を改善させる働きがあります。
IL-6阻害薬にはケブザラ®とアクテムラ®の2種類があります。オリジナル品のみで、バイオ後発品はまだ発売されていません。
・点滴で行うか、皮下注射で行うか、皮下注射の場合はどの注射デバイスを好むか
・妊娠希望の方に使いやすいか(胎盤通過性があるか)
・後発品で値段を抑えるか
・効果を高めたい時に増量ができるか
また、TNF阻害薬はメトトレキサートとの併用がとても重要で、単独で使用するよりもメトトレキサートと併用した方が高い効果が発揮できます。そのためすでにメトトレキサートを使えている人に適します。
①2つのIL-6阻害薬のうち、ケブザラの方が後に登場した分、改良が加えられています。アクテムラ®はヒト化抗体、ケブザラ®は完全ヒト化抗体です。
ヒト化抗体はヒトの抗体に似せて作られるとは言え、少しだけ本来の形と違うため異物反応が起きてしまうことがあります。一般にヒト化抗体よりも完全ヒト化抗体の方が異物反応が起きにくく、アレルギーや中和反応による効果減弱が少ないと考えられています。また、ケブザラは結合相手であるIL-6受容体に対する親和性が高く、炎症を促進するIL-6の信号を遮断しておく持続力が強いです。
②メトトレキサートとの併用があまり重要ではありません。IL-6阻害薬の一つであるケブザラはJAK阻害薬と同様、メトトレキサートと併用しなくても効果が出やすいです。TNF阻害薬ではメトトレキサートとの併用が重要で、併用により効果が高まりやすいことと違う点です。なんらかの理由でメトトレキサートが使えない方にとっては、IL-6阻害薬は優先順位の高い選択になるでしょう。
生物学的製剤単独で(メトトレキサートとの併用なしで)治療を行う場合、IL6阻害薬はTNF阻害薬と比較して有利であると考えられています。
MONARCH試験で、ケブザラ単独療法とアダリムマブ単独療法を比較し、ケブザラ単独療法の方が治療効果が高いことが示されています。同様の結果はもう一つのIL-6阻害薬のトシリズマブ(アクテムラ®)でも示されており、IL-6阻害薬に共通する特徴の様です。
さらに、③1回の投与量は200mgと150mgを選べます。通常量の200mgで十分治療効果が出た後は、150mgに投与量を減らせる場合があります(その分、免疫抑制作用も低く、薬剤費用も抑えられる)。
④デバイスはボタンレスで、押し付けるだけで注射ができ、握り部分もふっくらとして持ちやすい形に工夫されています。
逆に欠点としては、①同種薬であるアクテムラと比べて、標準用量では費用が高い (ただし、ケブザラ150mgではアクテムラ®と薬剤費用の違いは小さい)②ケブザラは胎盤を通じて胎児の血液に入るため、妊娠がわかった方は中止する必要があります。妊娠を考えながら治療する場合も可能なら他剤に変更しておいた方が良いです。
ケブザラの費用と、特徴のまとめ
1割負担で¥13,000、2割負担で¥26,000、3割負担で¥39,000
・2週ごと皮下注
・完全ヒト型
・IL-6受容体に対する親和性が高い
・効果 通常量200mg・減量150mgの2通りの用量
・メトトレキサートが併用できなくても効果がでやすい
・妊娠した場合は中止する必要あり
以上、参考となれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
2023年12月29日 深谷進司
参考資料
SURPRIZE試験:Kaneko Y. et al. Ann Rheum Dis(2016) 75:1917-1923
ADACTA試験:Gabay C, et al. Lancet 2013;381:1541-1550.
MONARCH試験:Burmester GR et al. Ann Rheum Dis 2017;76(5) 840-847