スマイラフ
(一般名;ペフィチニブ)
(一般名;ペフィチニブ)
スマイラフは3番目に登場したJAK阻害薬です。JAK阻害薬は炎症の信号を伝えるJAKという中継物質の働きを抑え、関節炎を改善させる働きがあります。JAKを経由する炎症の信号は複数あり、同時に多数の炎症の信号を抑えます。
JAK(ヤーヌスキナーゼ)の種類は4つあり、どのJAKを抑える働きが強いかによって、薬の効果や副作用の性質に違いが現れます。また、薬は肝臓で分解されるか、腎臓から尿中に排出されるかという点が大きく異なります。スマイラフはJAK1、JAK2, JAK3, TYK2という4種類すべてのJAKを抑える作用が強いです。他の薬では抑えきれない炎症の信号を同時に抑えることで効果も高まるのではないかと期待されましたが、実際の効果が他剤よりも上回るというデータは示されていないようです。体に入った後、肝臓で分解されます。肝硬変の方では排泄が遅れ、効きすぎて副作用のリスクが高まるため減量など考慮が必要です。重度の肝硬変では使用できません。1日1回内服で、1日150mgを通常量とし、患者さんの状況に応じて100mgや50mgに減量を考慮します。剤型は、1錠100mgと、1錠50mgの2つが用意されています。
内服薬としてはとても関節炎を抑える効果が高く、生物学的製剤と比べても同等の効果が期待できます。1日1回の内服となります。他剤のようにTNF阻害薬と比較した臨床試験では、エンブレルと比較したRAJ3という臨床試験があります。この中で有効性の絶対値でみるとエンブレルの方が数値は上です。オルミエントやリンヴォックではTNF阻害薬に比べて優れるとするデータを出している中では、やや物足りなさを感じます。
JAK阻害薬はメトトレキサートとの併用がそれほど重要ではなく、①メトトレキサートと併用した方が効果は高いですが、併用しない場合との差は小さいです。つまり、単独でも高い効果を発揮できます。ただし学会としては安全性を担保するためにメトトレキサートが十分量使える患者さんに対して使用することを推奨しています。
JAK阻害薬全般に免疫抑制作用がありますが、生物学的製剤と比べて帯状疱疹がでやすいです。通常量のスマイラフを100人が一年間使用した場合、報告によりますが5-6人程度に帯状疱疹が起きます。他剤でみられたような、使用量が多い方が帯状疱疹が多いという傾向は、スマイラフの場合はみられませんでした。スマイラフの全例調査(Vol.5)で報告されている帯状疱疹発現率は5.38/100人年(100人が1年間スマイラフを使うと、5.38人に帯状疱疹が出る頻度)でした。帯状疱疹の既往を有する患者の方が3倍程度多く帯状疱疹が発現しました。帯状疱疹ワクチンを受けていた患者の中からは帯状疱疹の発現はありませんでした。
スマイラフ(ペフィチニブ)の費用と特徴のまとめ
4週分の値段は、1割負担で¥13,000、2割負担で¥27,000、3割負担で¥40,000
・高い効果。
・1日1回内服。
・肝機能が悪い時は減量が必要。高度の肝機能障害の場合は使用不可。
・メトトレキサートを併用しなくても効果が高い(JAK阻害薬全般)。
・高額である(JAK阻害薬全般)。
・帯状疱疹が出やすくなる(JAK阻害薬全般)。
以上、参考となれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
2022年8月15日 深谷進司