ジセレカ
(一般名;フィルゴチニブ)
(一般名;フィルゴチニブ)
ジセレカは5番目に登場したJAK阻害薬です。JAK阻害薬は炎症の信号を伝えるJAKという中継物質の働きを抑え、関節炎を改善させる働きがあります。JAKを経由する炎症の信号は複数あり、同時に多数の炎症の信号を抑えます。
JAK(ヤーヌスキナーゼ)の種類は4つあり、どのJAKを抑える働きが強いかによって、薬の効果や副作用の性質に違いが現れます。また、薬は肝臓で分解されるか、腎臓から尿中に排出されるかという点が大きく異なります。ジセレカはJAK1を抑える作用が強く、腎臓から排泄されます。腎機能が悪い(eGFR<60)場合は排泄が遅れ効きすぎて副作用のリスクが高まるため減量が必要です。さらに腎機能が悪い(eGFR<15)の時は使用禁止となります。
また、JAK阻害薬はメトトレキサートとの併用がそれほど重要ではなく、①メトトレキサートと併用した方が効果は高いですが、併用しない場合との差は小さいです。つまり、単独でも高い効果を発揮できます。ただし学会としては安全性を担保するためにメトトレキサートが十分量使える患者さんに対して使用することを推奨しています。②疾患活動性抑制効果と関節破壊抑制効果の点で、アダリムマブを上回ることが示されています。
JAK阻害薬全般に免疫抑制作用がありますが、生物学的製剤と比べて帯状疱疹がでやすいです。通常量のジセレカを100人が一年間使用した場合、1.7人に帯状疱疹が起きます。日本人の市販後実態調査では、半年間で1.7%の方に帯状疱疹が発生したと報告されました1)。一般人よりは多くなりますが、他のJAK阻害薬よりは少な目です。
治験の長期試験(Phase2,3の7試験の合併解析) 試験名: DARWIN1, 2, 3, FINCH1, 2, 3, 4
帯状疱疹発現率 100人年あたり 200mg で3.0、100mgで2.1
市販後全例調査Vol.2から(合計782.3人年)
帯状疱疹発現率 100人年あたり 100mg, 200mgをあわせた解析で3.1
ジセレカ(フィルゴチニブ)の費用と特徴のまとめ
4週分の値段は、1割負担で¥14,000、2割負担で¥27,000、3割負担で¥41,000
・高い効果。アダリムマブと比較して疾患活動性抑制、関節破壊抑制の効果が上回る。
・1日1回内服。
・腎機能が悪い時は減量が必要。高度の腎機能障害の場合は使用不可。
・メトトレキサートを併用しなくても効果が高い(JAK阻害薬全般)。
・高額である(JAK阻害薬全般)。
・帯状疱疹が出やすくなる(JAK阻害薬全般)が、JAK阻害薬の中では少ない。
以上、参考となれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
2022年8月15日 深谷進司
参考文献
1)ジセレカの関節リウマチに対する特定使用成績調査 適正使用情報 Vol.1