ヒュミラ
(一般名;アダリムマブ)
(一般名;アダリムマブ)
ヒュミラは、生物学的製剤の中で3番目の製剤として2008年に登場しました。皮下注射製剤としては2剤目で、ヒト本来の抗体構造に近づけて作られた点でレミケードよりも改良され、効果減弱やアレルギーが起きにくくなりました。2週ごとに皮下注射として投与されます。最初は注射器の形をしたデバイスでしたが、今はペン型の注射器が主流になっています。投与量は40mgと80mgの2通りあり、メトトレキサートを併用できている場合は40mg、併用できない場合は80mgと定められています。バイオ後続品であるアダリムマブBSが複数の会社から2020年から販売されています。日本の関節リウマチ診療ではヒュミラはバイオ後続品に押されているようですが、適応症が多いことなどを背景にリウマチ以外の疾患でも幅広く使われてきました。発売後長年経過していますが2022年ですべての医薬品の中で世界で最も売れた薬です。
生物学的製剤やJAK阻害薬同士を比較してその違いを証明する臨床試験が行われる際に、ヒュミラは主な比較相手とされています。IL6阻害薬やアバタセプト、JAK阻害薬でヒュミラを比較相手として臨床試験が行われました。
ヒュミラは、TNF阻害薬というグループに属します。関節リウマチの病状に大きく関わるTNFという炎症介在物質を抑え、関節炎を改善させる働きがあります。
TNF阻害薬にはレミケードを含めてオリジナル品が5種類、バイオ後発品が3種類あり、さらに近いうちに1種類の製剤が追加される予定で、バリエーションが豊富です。通常量での効果にそれほど大きな違いはないため、患者さんの状態や好みに合わせて選ぶことが可能です。選択のポイントとして以下が挙げられます。
・点滴で行うか、皮下注射で行うか、皮下注射の場合はどの注射デバイスを好むか
・妊娠希望の方に使いやすいか(胎盤通過性があるか)
・後発品で値段を抑えるか
・効果を高めたい時に増量ができるか
また、TNF阻害薬はメトトレキサートとの併用がとても重要で、単独で使用するよりもメトトレキサートと併用した方が高い効果が発揮できます。そのためすでにメトトレキサートを使えている人に適します。
そんな中で、ヒュミラの利点は、①注射器が太く握りやすいことです。握力が弱めの方は持ちやすいでしょう。
②関節リウマチの診断直後から使用が認められていることです。生物学的製剤の多くは、生物学的製剤以外の従来治療に効果不十分な場合に使用するのが基本です。ヒュミラは関節リウマチ発症ごく早期の方にメトトレキサートと併用で使用すると関節破壊が抑える効果がとても高いことが証明されており、関節リウマチの診断直後から使用することが認められました。費用面は高くなってしまいますが、即効性と高い効果を期待するのであればヒュミラ+メトトレキサートで治療を開始することを考慮できます。
欠点というわけではないですが、使用上の制約を2つ挙げます。
①メトトレキサートとの併用が望ましいです。TNF阻害薬は全般的にメトトレキサートと併用で効果が高まりやすいので併用が望ましいので、必須ではありませんがメトトレキサートが使えている方が適しています。メトトレキサートが使えない場合でも倍量の80mgを使用してよいことになっておりメトトレキサートが使えない分の効果は補えますが費用は高くなります。
さらに、②効果不十分な時に増量はできません。体格が大きくても小さくても、1回に使う量が同じであるため、体格の大きい人では薬が全身にいきわたりにくくなるため、体格が大きい人は効果が劣る可能性があります。この傾向はどの皮下注射製剤も同じです。体格が大きい人は、体重に合わせて投与量を増やせる製剤(TNF阻害薬であればレミケード)が良いでしょう。
ヒュミラ(エタネルセプト)の費用と特徴のまとめ
4週分の値段は、1割負担で¥11,000、2割負担で¥21,000、3割負担で¥32,000
・2週ごとに皮下注射。注射器具は太く握りやすい。
・効果不十分の時の量や投与間隔のアレンジはできない。
・診断直後から使ってよい。
・メトトレキサート併用が望ましい(必須ではない)
以上、参考となれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
2022年8月14日 深谷進司