関節リウマチとは
関節リウマチは150人に一人が罹患する、かなりありふれた関節疾患です。
この情報があなたの疾患の早期診断や適切な治療、病状の理解に役立つと幸いです。
複数の関節が腫れて痛みます。関節の動きが鈍くなります。罹患する関節は、特に指や足の小さな関節に多いです。
関節の炎症が強いままにしておくと、関節軟骨が減少し、腫れた組織が骨を侵食して関節が破壊されてしまいます。破壊が進むと美容的な問題も生じてきます。
一度破壊された関節は薬では元に戻せませんので、関節炎の治療はそうなる前にしっかり行い、早期に寛解させることが重要です。
関節リウマチは関節に限った病気と思われがちですが、実は関節以外の症状も合併することがあります。特に間質性肺炎は重要です。血管炎を合併する特殊な関節リウマチのことを悪性関節リウマチと呼び、公的補助の対象となる指定難病の一つと定められています。
関節リウマチが生じる原因はわかっていないことが多いですが、発症に関係する環境要因と遺伝要因がいくつかわかっています。環境要因は、喫煙と歯周病です。またHLA-DRB1という遺伝子のタイプを持っている方はリウマチを発症しやすいです。詳しいメカニズムは別の記事に書く予定です。また関節リウマチは女性に多いことから、性ホルモンが関係していると考えられています。
触診:最初の診断のために、まず関節の触診をして、腫れているか?圧迫すると痛いか?を確認します。ご自身でリウマチを心配して診察を受けに来られる方の中に、第一関節(爪のすぐ近くの関節)が太くなりごわついて痛みを感じるのはリウマチでしょうか?という相談があります。これは多くは変形性関節症(へバーデン結節)です。第一関節に炎症を起こして爪の変形もみられる場合は乾癬性関節炎を考えます。関節リウマチでは、第一関節に炎症を起こすことは稀です。こうして、症状の分布から原因を絞りこみます。
血液検査:抗CCP抗体
抗CCP抗体は関節リウマチと診断される方のうち81-83%に陽性を示します(感度が高いといいます)。この検査が陽性になった場合は92-98%と非常に高い確率で関節リウマチと診断されます。陽性になったのに正常だったりほかの病気である確率は非常に低いということです。また検査をした時点でははっきりと診断されなくても、数年以内に関節リウマチであると診断される確率が高いことが報告されており、陽性と分かった場合は注意しておく必要があります。
血液検査:リウマチ因子(RF;リウマトイド因子ともいいます)
リウマチらしさを測る検査ですが、健康な人や他の疾患でも陽性になることがあり、関節リウマチに特化した検査ではありません。
リウマチ因子が陽性を示す、関節リウマチ以外の原因
全身性エリテマトーデス 20-30%
強皮症 30-50%
多発性筋炎・皮膚筋炎 20-40%
Sjogren症候群 80-90%
肝疾患(肝炎、肝硬変など) 30-50%
慢性肺疾患 5%程度
健常人 (加齢に伴い上昇) 1-数%
血液検査:抗核抗体
膠原病の中にはリウマチによく似た関節の腫れを生じる病気があります。それらとの区別のために、抗核抗体を測定します。抗核抗体は多数の膠原病を最初に拾い上げる検査となります。
血液検査:炎症反応
関節リウマチは関節に炎症が起きる疾患です。炎症の強さはCRPや赤沈(ESR)などの検査で判断します。MMP-3も関節炎を反映して上昇します。
画像検査:レントゲン
レントゲンは両手・両足を基本として、痛い部位・腫れている部位の撮影を行います。軟骨はレントゲンに写りませんが、関節の隙間として軟骨のボリュームがわかります。また、腫れた組織が骨を侵食し、骨が虫食い状多に削り取られていないかをみます(骨びらんといいます)。レントゲンでわかるのはすでに出来上がってしまった障害ですので、レントゲンでわかるような変化が起きる前に診断して治療開始するべきです。発症後早期にレントゲンでわかるような関節破壊が起きている場合には、その後も破壊が進むリスクが高く、MTXで寛解しないときは生物学的製剤やJAK阻害薬などの強力な治を考慮する必要があります。
画像検査:関節エコー
関節エコー検査は体への負担が少なく、関節の腫れと血流の増加といった形で現在の炎症を客観的に評価することができます。腫れている組織に血流の増加が起きているのは炎症を意味します。
2010年に発表された分類基準があります(下の表)。診断のポイントは、
罹患関節の部位と個数
血清反応(リウマチ因子(RF)または抗CCP抗体)
罹患期間(6週)
炎症反応(赤沈(ESR)またはCRP)
です。
※「診断基準」ではなく「分類基準」と書かれているのはなぜ?
関節リウマチには似た症状を呈する疾患がほかにもいろいろあるため、この基準をみたしたからイコール関節リウマチとするのではなく、きちんと専門家である医師がそれ以外の原因と区別する必要があり、あくまで診断を下すのはこの基準ではなく医師が行うものだ、というメッセージが込められています。
治療の基本
2000年ころから関節リウマチの治療は大きく進歩しています。現在では、7-8割の方が寛解あるいは疾患活動性が低い状態に入っています。薬物治療により、炎症を消すことが症状をとり、病状の進行を止めるために重要です。
治療の進め方は、日本リウマチ学会や欧州リウマチ学会から以下のようなやり方が勧められています。
ステップ①:まずメトトレキサートを使う。うまくいけばそのまま継続する。
ステップ①でうまくいかない場合は、
ステップ②:生物学的製剤やJAK阻害薬を加える。うまくいけばそのまま継続する。
ステップ②でもうまくいかない場合は、
ステップ③:②で使用した生物学的製剤やJAK阻害薬と違う種類に変更する。4つのグループ(TNF阻害薬、IL6阻害薬、リンパ球共刺激因子調節薬薬、JAK阻害薬)の同じグループ内で変更するのではなく、違うグループの薬に変更する。うまくいけばそのまま継続する。
というものです。
消炎鎮痛剤、ステロイド、従来型抗リウマチ薬は補助的な位置づけです。
関節外症状(更新予定)
難治性RA(更新予定)
臓器障害を有する場合(更新予定)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2022年2月27日作成、2022年6月26日更新 深谷進司