高額療養費制度は、医療費の家計への負担が大きくならないよう、
1カ月あたりの医療費負担に上限を設け、超えた分を支給する制度です。
保険者(全国健康保険協会、健康保険組合、市町村等)によって支給されます。
生物学的製剤やJAK阻害薬は関節リウマチの関節炎に対して非常に有効性の高い薬剤ですが、一か月で2万円~4万5千円と高額な薬剤費がかかります。そこで高額療養費制度が役立つ場合があります。
① 高額療養費制度を考える前に・・・・
勤務先(加入している健康保険組合)に付加給付制度があるか確認しましょう。
健康保険組合を会社独自で持つ大企業や公務員など、一部の健康保険組合や共済組合による独自の制度で、高額療養費制度の自己負担額よりも自己負担が少なくなるように払いすぎた医療費が支給される場合があります。その場合、高額療養費制度を使う必要はありません。
例:A社 自己負担上限額 2万円/月
付加給付制度を設けている場合がある保険者
〇 健康保険組合・組合管掌健康保険
〇 各種共済(公務員、私立学校教員など)
✕ 国民健康保険
✕ 組合国保
✕ 協会けんぽ(中小企業)
✕ 後期高齢者医療制度
② 収入ごとの区分を確認しましょう(下図)
収入ごとの区分により、上限額が異なります。
生物学的製剤やJAK阻害薬の薬剤費が一か月分で2万円~4万5千円です。他に診察料や医学的管理料、検査代などで、一回に払う医療費の総額が決まってきます。
下から2つの区分(年収370万円まで)の場合は高額療養費制度が適用されやすいです。
真ん中の区分(年収370万円~770万円)の方は2-3か月分の薬剤費をまとめて支払った場合に超えたり超えなかったりまちまちです。
それより上の区分の方は、リウマチの定期診察でもらう薬剤費では高額療養費上限額に該当することはないでしょう。
生物学的製剤やJAK阻害薬の中でも値段の差は高いものから安いものまで2倍以上あります。おかしな話ですが、高額な薬剤を使った場合は初期費用が高くなるものの④に示した多数該当の適用を受けたあとはかなり自己負担額が減るため、長期で見た場合かえって安くなったりします。
真ん中の区分(年収370~770万円)の4月目該当以降の上限額は4万4千円です。2か月の医療費が4万4千円、あるいは3か月分が4万4千円としてみたらどうでしょうか。1か月分はかなり安くなったようにみえると思います。
一方、安い方の生物学的製剤を使った場合、いつまでも高額療養費の上限に該当しないため、おのずと4月目該当以降の適応を受けられないことになります。
③ 同じ保険に加入している家族の医療費も合算して、上限額を超えたら適用されます。
他の医療機関で支払った分、調剤薬局で支払った分も合算できます。
※ 69歳以下の方は21,000円以上の負担額のみ合算可。
④ 多数該当:直近12か月のうち3回(3月)で高額基準に該当した場合、4回(4月)目以降はさらに上限額が下がります(下図)。高額な費用がかかるのが一時的ではなく継続的であり、より医療費の軽減が必要という配慮からこのような制度設計となっています。
まだ限度額適用認定を受けていない場合、上限額設定を超えた分も含め、先に1~3割の自己負担分をすべて支払う必要があり、あとで上限額を超えた分が返還されるという方法がとられます。支給まで3か月以上かかります。保険組合で医療費が確定するのが2か月かかるためです。
これから高額な治療を受けることが予想されている場合は、先に申請をして「限度額適用認定証」をもらっておくこともできます。そうしておくと、最初から高額療養費制度の設定上限額以上は支払う必要がなくなります。
70歳以上でも、現役並み所得者は自己負担率3割となります。全体の7%程度の方のみが該当します。
「現役並み所得」とは、世帯内に課税所得が145万円以上の被保険者がいる場合。ただしこれを満たしていても世帯合計収入が520万円以下の時は自己負担率1割となる。
また、一定以上の所得のある方は、医療費の窓口負担割合が2割になります。※現役並み所得者(自己負担3割)を除く
「一定以上の所得」とは、以下の場合のことです。
① 世帯に75歳以上の方が1人の場合は、年金を含めた所得が200万円以上
② 世帯に75歳以上の方が2人以上の場合は、年金を含めた所得が320万円以上
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
記事作成 2022年3月12日 深谷進司