リウマチ治療の大原則は十分な用量のMTXを使うことです。
しかし、なんらかの理由でMTXが少量しか、あるいは全く使えない方がいらっしゃいます。
MTXの使用に最初から制限がかかる条件とは、腎機能障害(eGFR<30)、一定以上の間質性肺炎がある、高齢、内服スケジュールを守れないなどです。
またMTXの用量に制限がかかる条件とは、腎機能障害、肝機能障害、消化器症状、高齢などです。
その場合に、十分な治療効果を得るためには、やはり生物学的製剤やJAK阻害薬の使用を考慮する必要があります。では、どの薬剤を使用すればよいでしょうか。その問いに答えるいくつかの臨床試験があります。
結論をいうと、TNF阻害薬は単独で使用するよりもMTXと組み合わせて治療した方がいいです。MTX抜きで治療する場合は、IL6阻害薬、JAK阻害薬がTNF阻害薬よりも優先されます。
アクテムラ®単剤の効果:ADACTA試験(ヒュミラ®と比較),(文献)
ケブザラ®単剤の効果(ヒュミラ®と比較):HARUKA試験、MONARCH試験(ヒュミラ®と比較)
オレンシア®単剤の効果:AVERT試験
ゼルヤンツ®単剤の効果:ORAL strategy試験, ORAL solo試験
オルミエント®単剤の効果:RA-BEGIN試験
リンヴォック®単剤の効果:SELECT-MONOTHERAPY試験
ジセレカ®単剤の効果:FINCH 3試験, FINCH 4試験(進行中)
IL-6阻害薬単剤の効果
ADACTA試験
MTXによる治療がうまくいかなかったリウマチ患者さんに対してアクテムラ®単独治療とヒュミラ®単独治療を比較した試験。
326名
方 法
TCZ群は8mg/kgを4週間隔で計6回、163名
ADA群は40mgを2週間隔で計12回投与 162名
それぞれ無作為に半数ずつに分けられました。50歳台、罹病期間は7年前後の方が参加しました。
24週時の治療前後のDAS28-ESR変化量を見ると、下図のようにアクテムラ®点滴を行った方がヒュミラ®で治療したよりも高い効果がありました。
もう一つのIL6阻害薬であるケブザラ®でも同様に、単剤同士でヒュミラ®を上回る効果が認められています(MONARCH試験:文献)。単剤で有効性が確保できるのは、IL6阻害薬に共通の特徴といえるでしょう。
オレンシア単剤の効果
AVERT試験(Ann Rheum Dis. 74:19-26. 2015)
発症早期の関節リウマチ患者さんに、①メトトレキサートのみ、②オレンシア®+メトトレキサートの併用、③オレンシア®のみの3通りの治療を行った試験。
(本来、この試験は寛解後治療薬を休止してみたらどうなるかを検証した試験ですがそこは割愛します)。発症後2年以内、MTX未使用か1か月以上使用がない方。
試験には351名が参加しました。40歳台、平均1年未満の発症早期の患者さんです。
DAS-CRPという指標で定義されている寛解を達成した割合で評価しています。
寛解を達成した割合は
オレンシア®+MTX併用治療群では61.3%、
MTXのみで治療していた人では45.7%、
オレンシア®のみで治療していた人では43.1%
オレンシア®はMTXと併用の効果がそこそこ大きいようにみえます。単剤で使用した時の効果はMTXと同等である、という点ではTNF阻害薬に近いかもしれません。
JAK阻害薬単剤の効果
JAK阻害薬単剤と、JAK阻害薬+MTXで効果の違いがどれくらいあるかをみた臨床試験が3製剤それぞれで報告されています。ジセレカ®(フィルゴチニブ)、ゼルヤンツ®(トファシチニブ)、オルミエント®(バリシチニブ)でJAK阻害薬単剤の治療効果とJAK阻害薬+MTXでは、いずれの薬にもMTXを併用した方が効果の出やすい傾向があるものの、それほど大きくないことがわかります。
JAK阻害薬は、MTX併用なしでも十分な効果が期待できると言えるでしょう。
なお、日本リウマチ学会ではJAK阻害薬を適切に使用するために、MTX 10mg以上を3か月以上使用した経験がある方に使うように勧めています。これは、比較的新しい薬であるJAK阻害薬が安全性の担保なしにやみくもに使用されてしまうのを防ぐためと思われます。