オレンシア®(一般名アバタセプト )
~「発症からの期間が短い方」「抗CCP抗体が高い方」に対し特に役立つ薬~
リンパ球共刺激調節薬というカテゴリーに分類されますが、現在このカテゴリーにはこの1種類しかありません。皮下注射製剤と、点滴製剤があります。皮下注射は週1回、点滴製剤は月1回のスケジュールで使用します。
関節リウマチ患者では、樹状細胞からT細胞、さらにB細胞へと炎症の流れが伝達され、B細胞(形質細胞)から抗CCP抗体が産生されます。関節リウマチの方で抗CCP抗体が陽性であるということはこの経路が活性化している証拠でもあります。
オレンシアは共刺激分子CD80/86に結合しT細胞の活性化を阻害します。
それによりT細胞を経由したほかの細胞の活性化や炎症性サイトカインの産生を抑制します。
AMPLE試験と、Early AMPLE試験 (Rigby W et al. Arthritis Res Ther. 23(1):245. 2021)
によりこの薬が特に効きやすい患者さんがわかっています。
AMPLE試験
2年目までの結果:M. Schiff et al. Ann Rheum Dis. 2014 Jan;73(1):86-94.
抗CCP抗体ごとのサブ解析:J. Sokolove et al. Ann Rheum Dis. 2016 75(4): 709–714.
生物学的製剤の投与を受けたことのない中等度から重度の関節リウマチ患者646人を対象に、オレンシア®の皮下注製剤とヒュミラ®(一般名:アダリムマブ)をメトトレキサート(MTX)併用下で直接比較した。
投与開始1年後の改善率(ACR20%改善率)のアバタセプト群で64.8%、アダリムマブ群でと63.4%と、アバタセプトはアダリムマブと比較して効果に遜色がないことが証明されました。
さらに、治療前の抗CCP抗体の値を5分割(陰性と、高い方から低い方まで同じ人数になる様に4分割)して分けてみると、もっとも高い群(図のQ4)での疾患活動性に対する有効性と身体機能障害の改善(DAS28-CRP変化量、HAQ変化量)は、低い3群(Q1-3)を合計した有効性に優っていました。このQ4に入る抗CCP抗体の値というのは、日本で測定されている抗CCP抗体に換算するとおよそ200以上です。
このことから、アバタセプトは抗CCP抗体が高い(およそ200以上の)患者さんでより有効であることがわかります。Q4の群では、アダリムマブよりも効果が高そうですが、有意差を示すには至りませんでした。
AVERT試験 (Ann Rheum Dis. 74:19-26. 2015)
発症早期の関節リウマチ患者さんに、①メトトレキサートのみ、②オレンシア®+メトトレキサートの併用、③オレンシア®のみの3通りの治療を行って、寛解治療薬を休止してみた試験。
この中で最もしっかりと治療するグループの②オレンシア®+メトトレキサート併用の患者さんでは60.9%の方がDAS-CRPという指標で寛解を達成しました。①メトトレキサートのみで治療していた人、③オレンシア®のみで治療していた人はそれぞれでは45.2%、42.5%が寛解の基準を満たしました。
寛解に低疾患活動性の患者さんを加え、そこから治療を中止した場合、1年後には①7.8%、②14.8%③12.4%しか寛解状態を保てませんでした。
このことから、一度寛解になったとしてもオレンシアの休薬は難しそうです。またMTX単独治療でも寛解したとしても治療を中止しにくいことがわかります。
関節リウマチによる間質性肺炎に対しても、悪化を防止する効果があると示されています。1)
お読みいただき、ありがとうございます。
2023年7月2日 深谷進司
参考文献
1) Kurata I. et al. Intern Med. 2019 58(12):1703-1712.