投稿日: Nov 09, 2019 9:45:39 AM
2019年11月1日
2019年10月1日からゲノム編集された食品が
表示義務なく市場に流通することになりました。
これに伴い、ゲノム編集とは何か、食べても安全なのか
など市民の不安は払拭されないままの状況であることからも
研究機関は「安全性」を説明するため各地で講演に応じています。
私も聞きに行き、技術的には理解できたものの、
市民の疑問を聞いてもらえる時間は少なく、
「絶対安全」ということを強調されるばかりなので、
開発している研究者がどのような姿勢で研究に取り組んでいるのか、
また生産現場はどのように管理されているのかを知りたく、
筑波にある農研機構に行ってきました。
ゲノム編集された食品には、現在、肉厚真鯛、GABAを多く含むトマト、
ソラニンを生成しないじゃがいも、多量に収穫できる米(特に飼料米)などが
開発段階にあります。
遺伝子組み換え技術と異なる点としては、
・ターゲットとなる遺伝子をほぼ正確に切断するだけ
・今までの品種改良に比べると相当速く、正確である など
他の遺伝子を挿入する場合は、遺伝子組み換えと同様と扱われます。
自然に生じる突然変異と「技術的には」見分けをつけられないことから、
表示義務はないそうです。
また、これまでも人為的に突然変異を生じさせた品種である
ミルキークイーンやゴールド二十世紀梨は既に市場化されているので
ゲノム編集された食品も安全性には問題ないとの見解だそうです。
しかし、これだけ説明を聞いても残る「違和感」。
そもそもミルキークイーンやゴールド二十世紀梨が市場に出たときに、
開発技術を提示していなかったことの方が問題ではないだろうか。
ゲノム編集された米生産の現場は見せてもらえませんでした。
見たいならプレスリリースする特定の日に来てくれとのことです。
代わりに遺伝子組み換え米(スギ花粉米)の圃場は見せてもらえました。
ガラス張りの圃場かと想像していましたが、イメージと大きく異なりました…
ゲノム編集技術が世界の食料不足を解決するという前に、
大量に生じている食品残渣をなんとかすることはできないだろうか。
ゲノム編集して付加価値化するよりも、
生活と地域のために自然環境にも配慮しながら
日々汗をかいている一次生産者への支援や買い支えを
することのほうが先決ではないだろうか。
技術開発をしてはいけないのではなく、
その技術を社会に応用する際に、
「科学的根拠」以外にも大切にしなければならないことはたくさんあるはずである。
人間が生物として自然の中に生かされてきた歴史の中で培われた勘や経験、思想が大事なのではないだろうか。
これまでも、科学者が「良かれ」と思って開発したことが
人類に大きな損失を与えたものはたくさんある。
哲学の欠けた「科学」が一人歩きしないように
市民が真剣に日々食べている食と向き合うことが必要だと感じました。