投稿日: Nov 03, 2016 4:30:50 AM
2016年10月21日(土)
協同組合の研究調査の一環で、2016年10月に同一労働・同一賃金制度を本格的に導入した
九州にある生活協同組合にて、管理職の方と労働組合の方にお話を伺いました。
同一労働・同一賃金は労働が多様になってきた今日、
従来の年功序列制度では対応できない労働のあり方を提示するものとして期待されています。
年齢を重ねるごとに自動的に給料が上がるのではなく、
仕事の内容に対して給料が与えられる仕組みなので多様な働き方を可能にすると考えられます。
でも具体的にどうすれば?という疑問が出てきます。
この生協では、仕事の内容に対しての支払額(職務給)と能力に対して支払う能力給の2層で給与が決まります。
そして、正規職員と非正規職員というわけ方をするのではなく、
「働く時間が異なるだけである」と考えて、長時間勤務の職員を「フルタイムスタッフ」、短時間勤務の職員を「定時スタッフ」としています。
仕事内容によって給料が決まっているので、フルタイムから定時、定時からフルタイムへの移行が可能となっています。
したがって、子育て期や介護期あるいは長期の病気時には定時スタッフ、落ち着いたらフルスタッフというように
会社を辞めることなく勤務できるようになっています。
生協にとっても会社に愛着のある職員を確保し、研修や採用のコストが省けることになります。
驚くべきことは、福利厚生がフルタイムスタッフと定時スタッフでほぼ同じであるということです。
年次有給休暇、産前産後休暇、配偶者出産休暇、子育て支援手当て、自己啓発援助、育児・介護休職は
フルも定時も関係なく同じ手当てを享受できます。
これだと定時スタッフも安心して家庭を持ちながら勤務できます。
この制度を導入するに当たり、どのように旧正規職員の理解を得たのでしょうか。
制度導入後は当面、給与額を保証する一時手当てを組み込んだことが制度的な合意となったようです。
もう一つ重要なこととして、組織や組合員の存続を第一に組織員が考えたことが挙げられます。
この生協では、バブル崩壊以降、経営が不安定となり、職員をリストラしてしまった歴史があります。
このときに、非正規職員を大量に雇ったのですが、同じ仕事をしているのに、
正規と非正規ではまったく待遇が異なっており、職員間がギクシャクしてしまいモチベーションが低下しました。
このままでは、生協の出資者である組合員を失いかねない、そして組合員を失うと組織がなくなるという懸念を感じ、
組織を存続させ、組合員によりよいサービスを提供するためには、
同一労働・同一賃金制度を導入することがよいということで旧正規職員も納得したとのことでした。
もし旧正規職員が、自分たちの既得権ばかりを考えて、導入に踏み込めなければ、
外部委託や非正規職員が増え、組合員へのサービスが低下していただろう、ということです。
生活が多様化しそれにあわせた労働が求められ、
かつ、かつてほど経済成長が見込めない今日、
限りある資源をうまく分配して職員のやる気を向上し、
組織全体として納得し高めていく姿勢がとても重要だと感じました。
そのような社会全体から組織を見ることができる組織が今後生き残っていくのかもしれません。
この生協の職員さんは、若い方もベテランもすごく活き活きされていました。
今後の動向に期待したいです。