平瀬ゼミナールでは2024年9月15日~19日の間、所属する2―4年生(17名)とともにタイのバンコクに合宿を実施してきました。
合宿初日
合宿初日の午前は自由時間があり、グループに分かれて活動しました。各グループで異なる場所を訪れましたが、多くのグループがタイの文化と歴史への理解を深めることを目的に、ワット・アルンやワット・プラケオといった象徴的な寺院を訪問し、タイの仏教文化に触れる貴重な機会となりました。また、チャトゥチャック・ウィークエンドマーケットにも足を運び、色鮮やかな食材や手工芸品を眺めながら、タイの人々の生活や食文化を肌で感じる貴重な機会となりました。
夜はガイドを担当してくださった公益財団法人国際労働財団 タイ事務所所長の関口輝比古様と共に食事し、交流を深めました。自己紹介やタイに関する基本的な知識を教えていただき、日本の社会経済や就職活動についても貴重なお話を伺いました。
2日目
シーカーアジア財団・クロントイスラム
合宿2日目の午前中は、シーカーアジア財団を訪問しました。シーカーアジア財団は、貧困層の中でも特に子どもたちや若者の生活の質の向上を目指し、教育支援を行っている団体です。まず、スラム地区の歴史や背景、現在直面している移転計画について説明を受け、その後クロントイスラムを案内していただきました。
「スラム」と聞くと、治安が悪く犯罪が日常茶飯事といったイメージを持っていましたが、実際に訪れてみると、その印象は大きく変わりました。住民の方々は笑顔で迎えてくださり、洗濯物が干されていたり、ご飯を作っていたりと、私たちと変わらない日常がそこにありました。しかし、住宅は密集しており、家と家の間隔は非常に狭く、道も細い箇所が多くありました。
また、2021年にクロントイスラムの住民や子どもたちが協力し、東日本大震災の被災者に100万円以上を寄付したという話を聞き、大変感動しました。決して裕福ではないにもかかわらず、困っている人を助けようとする姿勢は、私たちも見習うべきだと強く感じました。
オンヌットスラム
2日目の午後は、オンヌットスラムを訪問しました。クロントイスラムとは雰囲気が大きく異なり、オンヌットスラムはゴミの分別をする場所として機能していました。周辺にはゴミ収集車の荷箱があちこちに置かれており、そのため地域一帯に悪臭が漂い、マスクをしていても臭いが鼻につくほどでした。
住居は老朽化が進み、外から中が見えるほど傷んでいる家も多くありました。雨が降ると家の中に雨水が流れ込み、水没してしまうこともあると聞きました。しかし、そのような厳しい環境の中でも、住民の方々は笑顔を見せてくれました。また、スラム内にある学習塾では、学校に通えない子どもたちが勉強に励んでいました。この訪問を通じて、「私たちにできることは何か」と改めて考えさせられました。
夜には、バンコク市内で人気のジョッドフェアーズナイトマーケットを訪問し、タイの活気ある市場文化を体験しました。多種多様な屋台が立ち並び、地元の人々や観光客で賑わう光景は、まさにタイの熱気を象徴していました。皆は、珍しいタイ料理に挑戦したり、お土産を選んだり、楽しみながら、タイの市場文化や人々の暮らしについて学びを深めました。
3日目
日本大使館
3日目の午前中は、バンコクにある日本大使館を訪問しました。大使館は厳重な警備体制が敷かれており、建物内にはタイらしい建築デザインや、日本文化を反映した装飾が施されていました。
現地での日本の外交活動について説明を受け、タイと日本の歴史的な関係や、タイに住む日本人の多さについて改めて知ることができました。特に、日本大使館がタイで行っている経済協力の取り組みについて詳しく伺い、普段の生活では意識しにくい外交の重要性を強く感じました。また、日本のODA(政府開発援助)を通じたインフラ整備や教育支援の取り組みが、タイ社会の発展にどのように貢献しているのかを学ぶことができました。
今回の訪問を通じて、日本の外交が単なる国際関係の維持だけでなく、現地の人々の暮らしや経済にも影響を与えていることを実感しました。今後は、日本の国際協力についてより深く学びたいと感じました。
パーソネルコンサルタント
午後は、タイで活動している日系企業であるパーソネルコンサルタントを訪問し、社長から貴重なお話を伺いました。パーソネルコンサルタントは、日本人およびタイ人向けの求職・求人を支援する人材紹介会社であり、タイにおける日本企業の人材確保や、現地の求職者とのマッチングを行っています。講話では、企業設立のきっかけ、現在の具体的な事業内容、タイにおける人材市場の現状などについて詳しく説明していただきました。
さらに、パーソネルコンサルタントには東洋大学の卒業生も勤務しており、実際に現場で活躍している先輩方のお話を聞くことができました。仕事のやりがいや、日本人としてタイで働くことの魅力、そして困難な点についてリアルな経験談を共有していただきました。さらに、自分のキャリアに対する不安や疑問についても相談することができ、親身になってアドバイスをくださったことに感謝しています。
キャベージ&コンドーム
夜は、バンコク市内にある「キャベージ&コンドーム」で夕食をとり、関口様による講話を実施しました。このレストランは、性教育の普及を目的としたユニークなコンセプトを持ち、店内にはコンドームで飾り付けられたマスコットや照明が設置され、壁には世界中のコンドームやPDA(Population and Community Development Association)の取り組みに関するパネルが展示されていました。
コンドームをレストランのコンセプトにするという発想は、日本ではあまり見られないため、大変驚かされました。しかし、店内の雰囲気は明るく、来店するお客様の多くはこのコンセプトを理解した上で訪れているため、リラックスした楽しい空間が広がっていました。
食事をしながら、関口様からこのレストランの設立背景や、関口様が所属する国際労働財団の活動について詳しくお話を伺いました。また、この日は関口様と最後にお会いする日でもあったため、3日間の活動を振り返り、それぞれが感想を共有しました。その後も、皆で交流し、有意義な時間を過ごしました。
4日目
ジェトロ・バンコク事務所
最終日は、ジェトロ・バンコク事務所を訪問し、タイの一般経済事情やビジネス慣習について詳しく説明を受けました。ジェトロの担当者から、日本企業の進出状況、労働市場の特徴などについての解説があり、現地でのビジネスの実態をより深く理解することができました。
特に、タイに進出している日系企業が直面している課題や、今後の展望についての話は将来の国際的なキャリアに活かせる重要な知見となりました。
単なる講義形式ではなく、学生からの質問や意見も多く寄せられ、多くの学びを得られました。経済学部生として、普段ジェトロのサイトを参考にする機会が多い中で、実際に現地の担当者から直接話を聞けたことは非常に貴重な経験でした。
ゼミ合宿を終えての感想
合宿では、タイの発展した都市部と発展途上の町の両方を訪れる機会があり、貧富の差を目の当たりにしました。バンコクの中心部には高層ビルが立ち並び、経済発展の象徴となっている一方で、郊外や地方には生活インフラが整っていない地域も多く、格差の現実を実感しました。また、経済成長が進む一方で、すべての国民にその恩恵が行き渡るわけではなく、貧困層への支援策や社会保障の重要性を考えさせられました。日本と比較して、発展途上国における貧困問題の課題をより深く理解するきっかけとなりました。
さらに、タイの文化や人々の価値観に触れる中で、日本との違いを肌で感じました。活気あふれる市場の雰囲気や、人々の温かいもてなし、仏教が根付いた社会の姿など、教科書やニュースでは得られないリアルな体験を通じて、異文化理解の重要性を改めて実感しました。言葉は通じなくても、身振り手振りでコミュニケーションを取るうちに、心が通じ合う喜びを感じました。
観光では決して訪れることのできない場所を案内していただいたことで、貴重な体験を通じて多くの新たな発見ができたことに感謝しています。この貴重な機会を提供してくださった平瀬先生と関口様に、心より御礼申し上げます。