地質観光マップのQRコード 解説ページ一覧 > 袋田の滝 > ①暴れ川の落とし物
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ポイント①暴れ川のおとしもの:レキ岩
ここで見られるレキ岩の特徴を確認してみてください。久慈川の川原で見られるような石ころと様子が違っていませんか?レキの形はあまり丸くなく、大きさはバラバラです。レキの周りは不均質な砂で埋められています・またレキは砂の中に浮いているように見えます。このようなレキ岩はどのようなところでできるのでしょうか?
皆さんは岩手・宮城内陸地震の時宮城県栗原市栗駒の旅館「駒の湯温泉」を土石流が襲ったのを覚えているでしょうか?土石流とは、土砂が水(雨水や地下水)と混合して、河川・渓流などを流下する現象のことを言います。岩手・宮城内陸地震の時、地震によって水分を含んだ地層がいっきに崩壊し土石流となり、下流の駒の湯温泉を一瞬で飲み込みました。
この時、駒の湯温泉の周りにたまった土砂は、砂や泥の中に大小さまざまなレキがごろごろしているという特徴を持っていました。
このような特徴は土石流によってもたらされた堆積物中にしばしば見られるものです。ここで見られるレキ岩は同じような特徴を持ちます。つまり、土石流によって運ばれた土砂がここにたまり、固まったものと考えられます。
土石流は、地震の時だけでなく、大雨が降った時や、火山が噴火して雪が急激に溶けたときなどにも起こります。
↓さらに詳しい説明は以下に掲載しています。
ポイント①暴れ川のおとしもの:レキ岩のさらに詳しい説明
ではさらによく観察してみましょう。このレキはどこから流れてきたのでしょうか?
地質の専門家は地層を研究するときにレキの種類を確認します。レキの種類が分かれば、レキがどこから流れてきたかが分かるからです。
では、あなたもレキを観察してみてください。赤~灰色っぽくて白いぽちぽちとした斑点がありとても硬いレキがわかるでしょうか?これは安山岩と言って、火山岩の一種です。さらに白っぽくてぽろぽろしたレキはわかるでしょうか?これは軽石といい、これも火山岩の一種です。さらに、レキの間を埋めている砂は火山灰や火山岩が崩れたような特徴を持っています。
しかしこの時代、大子周辺には火山はありませんでした。ではこうした火山岩はどこから来たのでしょうか?
この時代、遠く西に位置する栃木県の茂木周辺では火山が活動しており、安山岩やデイサイトなどの火山岩がたくさん噴出していました。時には火山が大爆発し、軽石を大量に噴出させました。ここで見られるレキ岩は、こうしてできた岩石が、大雨で増水した河川や土石流によって運ばれ、遠く大子までたどりついたものと考えられます。
ここでは観察できませんが、このレキ岩が堆積したのと同じ時代の堆積物に、火山が大爆発したときに高温の火山灰や火山岩が高速で流れ下る「火砕流」の堆積物がしばしばみられます。よく、古い蔵や立派な家の塀に使われている白くて表面がガサガサした石材「大谷石」も火砕流の堆積物です。大子で見られる火砕流の堆積物は、土石流の堆積物に含まれる火山岩と同様に栃木県東部からもたらされたものと考えられます。この時代、大子は火砕流や土石流にしばしば覆われる苦しい環境だったのです。
このような厳しい時代でしたが、火山活動が休止し安定している時期には、動物や鳥たちが行き来していました。上小川駅近くの大沢口では、火砕流の堆積物に挟まれた河川の堆積物の中から、鳥や鹿の仲間の足跡が見つかっています。
「ジオサイトマップ:袋田の滝」の裏面、「袋田周辺の地質の成り立ち」陸の時代、第一章のイメージ図をみて、当時の様子を想像してみてください。