血圧目標値
血圧が上昇すると、心血管系疾患や脳梗塞のリスクが上がります。
リスクが上昇しない至適な状態は、120/80mmHg未満です(至適血圧と呼びます)。
病院で測定した場合と、家庭で測定した場合での目標値が若干異なります。
家庭でリラックスした状態と比べ病院のような緊張する環境では、数値が高く出やすいからです。
血圧 140/90mmHg以上
家庭血圧 135/85mmHg以上
を高血圧と呼びます。
血圧自体はよほど高くならない限り自覚症状はありませんが、心血管系疾患や脳梗塞は一度起きると生命にかかわる深刻な問題なため、血圧が高いこと自体が治療対象になります。
至適血圧と高血圧には開きがあるじゃないか!?と思われるかもしれません。
高血圧と至適正常血圧の間の血圧の状態(120-140/80-90mmHg)は、120‐130/80-85は正常血圧、130-140/85-90は正常高値血圧と呼びます。
正常血圧、正常高値血圧であっても、至適血圧と比べると若干心血管疾患のリスクが高くなります。
なお、2024年4月から特定健診で受診を推奨する血圧基準が、140/90mmHgから160/100mmHgに変わりましたが、これは血圧の目標値が緩和されたわけではなく、健診ですぐに病院を受診する基準が変更されただけなので混同しないようにしてください。
生活習慣の改善
薬物療法の前に、あるいは薬物療法を行いながら、生活習慣の改善で血圧を下げることができます。
塩分制限
日本人は昔から海と密接に結びついた生活をしており、醤油や味噌などの塩分の多い調味料を多く用い、冬に備えて塩を効かせた保存食の文化が根付いていることから、世界と比べても塩分摂取量が多いです。みなさんがこれくらいが普通、と思っている量が世界的にみればかなり多いということです。日本人は男性だと平均11g、女性だと平均9g程度を摂取しています。
高血圧ではない方は、男性7.5g、女性6.5g未満
高血圧の方は、6g未満
が塩分摂取量の目標とされています。
食物そのものにも塩分が含まれるため、上記の目標値がそのまま調味料として使える塩分量というわけではありません。
食習慣は急には変えられないものですが、薄味に慣れるようにしましょう。
体重制限
高血圧治療の本来の目的は血圧の数値を下げることではなく、高血圧の結果として生じる心血管系疾患や脳梗塞のリスクを減らす(予防する)ことなので、血圧のみに注目するのではなく、その他の心血管系疾患や脳梗塞のリスク因子を改善させておくことも重要です。
減量自体では、4㎏の減量で収縮期血圧−4.5/拡張期血圧−3.2 mmHgの降圧効果があるとされています(参考文献1)。
運動
習慣的な運動は、血管機能を改善させ、高血圧改善効果があります。習慣的な有酸素運動は、収縮期血圧3.5mmHg/拡張期血圧2.5mmHg低下させ、高血圧患者においても収縮期血圧8.3mmHg/拡張期血圧5.2mmHg低下させる効果があるという報告があります(参考文献2)。早歩きのウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を、1日30分以上を目標に行うようにしてください。
禁煙
喫煙は末端の血管を収縮させて血圧を上昇させます。
普段の高血圧症が悪化するという証拠はありませんが、喫煙が心血管疾患のリスクを高めることは明らかです。
高血圧治療の本来の目標である心血管疾患や脳梗塞のリスクを下げる(予防する)ということに立ち返ると、高血圧を治療していてもたばこを吸ってしまえば意味がなくなってしまいます。たばこは万病の元ですので、健康を大事にするのであれば控えましょう。電子タバコの方が害が小さい場合もありますが、動脈硬化リスクは加熱式たばこと同等であるとされています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2024年7月7日 深谷進司
参考文献
1)人間科学(Journal of the Faculty of Human Sciences, Kyushu Sangyo Univ.),2021; 3: 71–79 DOI: 10.32223/hsksu.3.0_71
2) Cornelissen VA et al., Exercise training for blood pressure: a systematic review and meta-analysis. J Am Heart Assoc 2: e004473, 2013.