溶連菌は咽頭炎を起こす菌として知られていますが、時には全身症状を呈します。
学びのある事例を経験したので、当事者にご許可いただいて、事例を掲載します。
(ご本人も必要な時はネットの医療情報をみて参考にしているとのことで、共有することを快諾いただきました)
10代後半の男性。
前日からの急性の発熱、関節痛。軽度の咽頭痛のため来院。
手首から先、すねから先が紅潮している。手足の皮膚色調異常について本人には自覚なし(かゆみや痛みはない)。
咽頭の診察では発赤は軽度で膿の付着はありませんでした。
よくある風邪ではないか、解熱薬や対症療法で様子見て、と言いそうになりましたが、
皮膚の症状が特徴的だったので採血検査を実施。
白血球数をみて12,500/μLと高値だった(炎症反応 CRPも10mg/dL程度と高い)ためこれは細菌感染症ではないかと思い至り、
調べてみると咽頭ぬぐい液による溶連菌の迅速検査が陽性でした。
一般にこのような全身症状は、溶連菌による毒素によって生じ、猩紅熱とも呼ばれています。
頸部、顔面などから体の中心部に広がります。1週間くらい経つと薄く皮がむけたようになります。
舌がぶつぶつと赤くなった、「イチゴ舌」を呈することもあります。
溶連菌感染症は不十分に治療してしまうと溶連菌感染後腎炎やリウマチ熱を起こす原因になるので、10日間はしっかり抗菌薬を内服して治療完了することが重要です。
主に直接接触や、咳・くしゃみなどの飛沫により周囲に伝播します。初期は感染力が強いので周囲の方は注意が必要です。学校保健法では溶連菌感染症は「条件によっては出席停止の措置が必要と考えられる疾患」に分類されます。抗菌薬開始後24時間までは登校(や出勤)を避けるべきです。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
2024年6月25日 深谷進司