反応性関節炎
(Reactive arthritis; ReA)
(Reactive arthritis; ReA)
関節の痛み・腫れのために相談に来られる患者さんの診断結果の中で、「意外だった!」と感想をいただくことがありますが、その代表に「反応性関節炎」があります。
性感染症のクラミジアや、胃腸炎を起こすサルモネラ・赤痢菌・キャンピロバクタ―、エルシニアなどの細菌感染が先に起こり、それから4ー6週を経てから関節炎が生じます。感染症がきっかけではありますが、菌そのものが関節に入って攻撃しているのではありません。本来は自分自身の体には過剰な免疫(自己免疫)は起きないはずなのですが、これらの菌の構成成分が関節の構成成分と似ていることから、菌に対しての免疫反応が関節に対して間違って起きてしまうため関節炎が生じる(交差反応)と考えられています。
若い方で男性に多い疾患です。特定の体質(HLA-B27)を持っている方が発症しやすいです。尿道炎や結膜炎を合併することがあります(関節炎を含めた3徴を、以前はライター症候群と呼んでいました)。
本記事の著者も、若い時のインド旅行でサトウキビジュースを絞って提供する屋台のジュースを飲んだ後にひどい下痢を起こし、帰国してから歩けないほどの関節炎と結膜炎を生じたことがあり、一時は関節内に抗生物質を直接注射したり人工関節が必要になるかもと脅かされるほど悪い状態でしたが、最終的には完治しました。振り返ると反応性関節炎だったと思います。
上記の感染症と関節の痛み・腫れとの関連は一般の方には想像しにくいので、原因がわかると「そうだったのか!」という感想をいただくことが多いのです。
胃腸炎で起こる反応性関節炎の場合、関節炎が起きる4-6週後にはすでに胃腸炎は治っているはずです。そのため抗生物質で治療するのではなく関節の炎症を止める治療が行われます。しかしクラミジア感染のように抗生物質で治療しなければ自然になおりにくい感染症が原因で起こる場合は、関節炎の炎症抑制とともに抗生物質による治療も同時に行わなければなりません。消炎治療(+抗菌治療)で自然と収束していくことがほとんどですが、関節リウマチに準じた強力な治療が必要な場合もあります。
2023年12月28日 深谷進司