総評
総評
各コンポーザーを代表する楽曲を課題曲とし、より実力で勝負してもらおう――というのが、今回の「KEEP YOUR FAITH【Re:VISION】」のコンセプトでした。
そしてその中には我々「party nite MIX(以下PNM)」……いえ、StepManiaパッケージ文化の象徴と言っても過言ではない――と、【Re:VISION】の主宰であるUltraEchoが確信している楽曲、「Novellette」を含んでいます。
つまり次の『絶景』――すなわちこれからの10年、日本で作られるStepManiaパッケージのフラッグシップとなるような楽曲を、というのが、今回の「KEEP YOUR FAITH【Re:VISION】」で、応募していただいた皆様に目指していただきたかった方向性です。
基本的に見ている点は前回の「KEEP YOUR FAITH【Re:VISION】」と変更点はありません。
ですが今回、こういうところに気を遣って欲しい、という観点が出てきましたので総評として記述させていただきます。
①ヴォーカルが埋もれている楽曲が多い
これは課題曲の「pain」で多数見受けられました。
歌モノとなるとMIXの勝手が変わってきます。
まず歌モノの楽曲であるならば最も聴かせなければならないのはヴォーカル。
リバーブを薄くかけてトラックに馴染ませ、その上でトラックの中でも聴かせたい音と衝突しないようにEQを掛けていく……他にもディエッサーなどでの処置も必要と、単純なようで奥が深いです。
この辺りの処理、そしてMIXのバランスが減点となった曲がかなりありました。
そのMIXのバランスの悪さを超えて、圧倒的に評価が審査員の間で高かったのが「Novellette (Euro Remix)」です。
音源としては「もっとこうすれば」という点があるのは事実です。
ですがユーロビートのお約束を踏まえ、その上で「Novellette」という曲で「新たな絶景」を見せるにあたってこれ以上ない音源です。
我々審査員からの要望、そしてPNMでユーロビートといえば、のKim./TKCのディレクションを受け、よりブラッシュアップした音源を目指していただいたものを【3rd Re:VISION】にて収録させていただきます。
逆にこれをパスしてきた音源が「pain (papillon mix)」です。
これはSOLID IMPULSE自身がクラブで、別名義ではありますがDJとして活動し、自作のブートレグ音源を多数プレイしてきたという、はっきり言ってしまえば経験値の違いではないでしょうか。
②「自分らしさ」とは
前回の総評で「そのレーベルがどういうものなのか」という理解度を求めていました。
これは今回もこの辺りもきっちりと審査の基準として設けていました。
そして前回の「KEEP YOUR FAITH【Re:VISION】」で合格した楽曲のラインナップ。
今回は逆にそれに囚われているとでも言うのでしょうか、無理にPNMというパッケージの音楽性に追随して、音源自体に「窮屈さ」とでも言うべきものを感じ取れる楽曲が多々あります。
そう、前回の「KEEP YOUR FAITH【Re:VISION】」での楽曲コメントでもあった通り「己の信念を貫け」がテーマです。
そしてこの己の信念を貫いたであろう楽曲が「spiral wave (HARD NRG REMIX)」ではないでしょうか。
PNMというパッケージを恐らく誰よりも深く理解し、そして変幻自在に楽曲を提供してきたAsuka SakuraiのL4M名義によるHARD NRG。
PNMスタッフによる音源だと発覚した時点で減点するというルールを設けており、前回ではヤスナガフミアキが「Master.Y」名義、SOLID IMPULSEが「5KEYs REMINECCENSE」名義で応募するなど、減点を避けようと偽名を使うケースがありましたが、よほど自信があったのかL4M名義での応募です。
続いて「MEMENTO of BABEL」です。
音ゲーらしいスピードレイヴ系のトラックですが、展開の「お約束」とでも言うべきラップやオーケストラヒットの音、前回の「KEEP YOUR FAITH【Re:VISION】」の合格曲「Ahead the Lotus」と同じ傾向ですが、原曲がレイヴ系のスタブ音を中心に組んでいるため、非常にスムーズにRemixできたのではないでしょうか?
ですが前回の総評でも書きましたが、この楽曲公募企画は「StepMania」というゲームで使用する、譜面が必ず付く音源の募集です。
音ゲーというゲームジャンルにおいて、どういうものが音ゲーにおいて「気持ちいい」音楽か、というのを理解していれば自ずと答えは出るはずでしょう。
その「気持ちよさ」を現役音ゲープレイヤーが追求したらこうなる、というのを象徴するかのような曲だったと、主宰であるUltraEchoは評価しました。
さて、応募曲数は総勢29曲でした。
それぞれの曲の大体の傾向を記載して、総評を終えさせていただきたいと思います。
・Novellette
今回合格となったナイラー氏のユーロビートの他、オリジナルの歌詞でSynthesizerVで歌唱させたJ-R&Bなどがありました。
・Mirage
メインのアシッドベースを活かしたシュランツやレイヴなど、ゴリゴリ押してくる、前回の「drown in to the chaos」のようなサウンドが中心でした。
・MASTER of BABEL
合格となった「MEMENTO of BABEL」のような、いわゆる音ゲーレイヴが最多です。
変わり種としては真名看破さえなければ合格だった、創作ジャンル「ELEMENTAL」でAQUA PROJECTが偽名で応募してきていました。
・ENTRANCE
原曲のイントロ8小節をサンプリングしたTECHCOREでKim./TKCが偽名で応募してきました。
傾向としては同様にTECHCOREなどのハイテック系です。
・spiral wave
公募開始以前、それどころか四捨五入すると20年前に、既にAQUA PROJECTによる音源が公開されていますが、ああいった感じに原曲を拡張する、というニュアンスの曲が多かったです。
・TERRAFORMING
応募者ゼロ。正直なところ審査の基準音源を作った主宰も「これ無理だって!!」と泣き言言った曲です。
・幻想世界のアンドロイド
ヤスナガフミアキ本人がかつてコラムで語っていた通り、ラウンジ系のニュアンスを含んだ甘いハウス系のサウンドでの応募がありました。
全体的にまろやかなサウンドでの応募が多かった印象です。
・Primary Steps
pop'n musicの「レッスン」よろしく8bit音源での応募がありました。というか応募したのは主宰・UltraEchoです。
応募はUltraEchoのみでした。
・MASS FOR THE DEAD
主旋律をアコギやケルティックな音で鳴らした、音ゲー的に言うとコンテンポラリーネイションな音源があったり、基準音源となったEred Nustに勝負するかのようなマキナでの応募、原曲どこ行ったレベルのクソデカキックで暴力的なキックミュージックと化した音源など、バリエーションがなぜか豊富でした。
なおクソデカキックな音源を出してきたのはサガミアキラです。フルレングスの拡張だったので即バレしました。
・AREA:Red Line
審査の基準となった音源でも、そしてコンポーザー自身の手によってでも、ある意味ではFUNKOTというジャンルが封じられた曲です。
それでいてなおFUNKOTでの応募がありましたが、名義が「DJ Hina*HaL」なので真名看破(=Asuka Sakurai)による減点で落選となった音源です。
今回のAsuka Sakuraiによる応募音源は偽名を一切使わずガチンコ勝負を審査員へと挑んできました。
また他に落選となった音源でピックアップするとUPTEMPOがありました。はい「DJ WatBell」です。
・pain
Vo.音源を公開・配布したということもあり、応募が最も多かった曲です。
真の原曲を「Re:LOADED」で公開したり、バリエーションを20年近くも前に公開していたりと、様々なサウンドを見せていたため、なんでもありという空気感が応募音源からも感じ取れました。
その中でも、原曲が生まれた当時の流行のサウンドであったJ-R&BをフィーチャーしたSOLID IMPULSEの音源が合格となりました。
以上をもちまして総評と代えさせていただきます。
2025/08/26 - Prismatica Material Records / UltraEcho a.k.a. funny drunker