鈴木克治氏・篠原祥哲氏「WCRPフクシマコミュニティづくりPJと熊本シンポジウム「被災地における人々のケア」」
2017年1月9日(月・祝)14:00-17:40
東京大学仏教青年会ホールA・B
報告
鈴木克治氏(WCRP日本委員会福島プロジェクトコーディネーター)・
篠原祥哲氏(WCRP日本委員会平和推進部長)
「WCRPフクシマコミュニティづくりPJと熊本シンポジウム「被災地における人々のケア」」
鈴木克治氏
WCRPフクシマコミュニティづくりPJ(東日本大震災福島支援)
自己紹介
福島出身。立正佼成会。
国際仏教協会の責任者を6年ほどしていた。震災直後は支援ができずにいたが、3年ほど前からこの取り組みを知り、故郷の福島に恩返しがしたいということで取り組んでいる。
プロジェクトの概要
「福島のコミュニティづくり支援プロジェクト」(2014年10月より実施)
目的:①福島の課題としてのコミュニティづくりに対応。背景として、新たなまちづくり、放射能被害の認識の違い、避難者と避難先との軋轢、広域避難の難しさなど。
②住民の方々の自立的なコミュニティづくりを応援する。背景として、日本全体の震災の風化、支援団体・ボランティアの減少、支援体制の弱体化。
内容:①20万円の活動応援②申請条件のシンプル化③年間4回の応募期間でフレキシブル対応
これまでの3年間で、126団体への支援を行ってきた。分断された地域をもう一度つなぐため、お茶会をするための支援などに活用してもらっている。
工夫として、①支援金を直接手渡しにいき、現地を見せていただき、またお話をうかがう機会とする、という工夫をしている。単なる財的支援ではなく、共に復興に歩む同伴者として、さらなる課題の発掘を意図するために現状を学ばせて頂く。資金が宗教者の祈りによって集まっていることを直接伝えている。
②各自治体、社会福祉協議会、市民活動サポートセンターなどの協力を経て、住民の方々に周知して頂いている。
支援先が一堂に会する「つどい」を開催。年に1回(2年連続)集り、各団体の活動報告。団体間の連携促進。新たな課題の発掘のために実施。2015年31団体100名参加、2016年39団体90名参加。多額の助成を出していても必ずしも集まりがよくないこの種のつどいだが、私たちのつどいは、集まるのを楽しみにしてもらっているので出席がよい。
集いを通して、
・参加者の希望をもって変わっていけるという姿に接した。
・放射能問題について表に出せないなかで、対話の大事さ。
・宗教が異なってもお互いが認め合っていく。その我々の諸宗教協力のあり方を逆に学んでいただけた。
宗教者の活動も支援させて頂いた。これも宗教間のネットワーク構築への種まきであると感じている。
篠原祥哲氏
WCRPフクシマコミュニティづくりPJ(補足)
本支援の特徴としては
・税金をつかった支援は法人格が必要であったり、前年度予算や定款などの報告義務があったりで、誰でもいつでも必要なときに始められるわけではなく、ハードルが高い。草の根で住民のために必要なプログラムをしている団体への支援が必要であることをキャッチし、申請の簡素化などの本プログラムができあがった。お話を聞きにいって申請書類もそこで書いてもらうような工夫。
・社協からの応援もいただいている。
・助成金を振り込みではなく手渡しすることによって、その折にお話をうかがうという関わりができている。
・face to faceの支援活動なので、集いにもたくさん参加してもらっている。
などが挙げられる。
熊本地震シンポジウム「被災地における人々のケア」
2016年12月5日、熊本大学黒髪キャンパスで開催。
背景経緯
① 2016年4月の熊本・大分の震災を受けて、7月26日熊本市で開催された「熊本復興宗教者支援連絡会」に70名ほどが参加。ここで「地元で頑張っている人にも声をかけよう」というニーズが出て、シンポジウムの開催につながった。
② 臨床宗教師会の災害支援(カフェ・デ・モンク)。
③ 熊本大学との連携:紛争解決を研究する領域が、災害復興の取り組みに関係性をもっている。
ディスカッションのポイント(抜粋)
・「話を聞いてもらえるだけで前向きになれたという被災者が多くいた」
・「復興期における心のケアに目をむけるべき、何もみえない」
・安らぎを提供することが大切
・死者との新たな関係を築くことが重要。供養はその大きな役割を果たす。
・「布教を目的とするのではない。宗教者の宗教宗派を超えた心のケアは、被災者に喜ばれている。こうした取り組みはこれからの日本社会に必要となってくる」
・話を聞いてもらえるだけで前向きになれたという被災者が多くいた。
・避難生活では、一緒に食事をとることを大切にした。前向きになれると。
・宗教者が心のケアを行う際、日頃から人間関係をもつことが大切である。
・宗教者の役目として、安らぎの提供が必要とされている。
・供養で死者を鎮魂することで、死者とのあらたな関係が構築される。
・布教を目的とするのではない。宗派を越えた心のケアは被災者によろこばれている。この取り組みは今後の日本社会に必要。
など、宗教者が災害支援で果たす認識が議論された。
石原明子氏(熊本大学准教授)のコメント
私自身は紛争解決学を専門としており、内戦後などの地域の人間関係の対立をどう解決するかをテーマとして、福島の地域の分断についても4年間かよって研究してきた。
九州臨床宗教師会が、熊本に福島から避難してきた人のためのカフェデモンクと一緒にシンポジウムを主催。気づいたこととして以下。
・熊本大学のシンポジウムのなかで最大数の参加者数。「宗教の力」を実感。
・宗教者でしかなければできない役割が、東日本大震災とは違う熊本地震で何があるか。コミュニティ力がその一つではないか、と考えた。
・仏教とキリスト教との人とでは、語彙が違っている。生きている人のケアが得意な団体と死者のケアが得意な団体とがあった。それぞれの得意を活かす宗教間対話がこれから大事になってくるか。
・一般参加者で宗教と深く関わってこなかった人から、「救われました」という言葉が聞かれた。一般の人に宗教力をつけることも、臨床宗教師の役割ではないだろうか。
・高齢化していく被災者の人々の生と死の長期的なケアに関わっていくことも臨床宗教師のアイデンティティではないか。
〈質疑応答〉
Q: (石原氏に対して)福島の地域の分断ということは、宗援連でも大きな課題と考えてきた。どのようなことをされているのか?(蓑輪氏)
A: 教育支援、対話支援。実は熊本の取り組んできた水俣の問題と近い。地域のなかで被害を受けた人、東電で働いている人など、加害・被害の構造、保証金を貰った人・貰わなかった人などの分断。それを考える理論としては、修復的正義のアプローチ、トラウマとコンフリクトというものがある。
住民同士が立場の違いやなにかの理由で敵対してしまうことがあるが、本当の問題は、相手ではなく、原発の問題や保証金の問題であるということにどう気づいていくか、ということが大切。福島の人に、比較の事例として水俣のことを考えてもらうようなことで、目の前のことを一歩離れて考えることができる。
Q: 支援した団体について将来的にまとめていくと民間力、ソーシャルキャピタルを示してもらうこと になるのではないか。暗いイメージがあるが、希望を感じられる。こうしたことが報告書として見えるようなものになるか?
社協が災害があることでこうしたことが見えてくるが、それを進めていくことが社協の仕事に入ってくるか?(島薗氏)
A:(①に対して)そうしなさいということとして受けとめた。是非、実現したい。(鈴木氏)
A:(②に対して)各社協の仕事となる。全国となると、私どもを使っていただくとよい。週1回メールで情報を流している。(園崎氏)
コメント:石巻で診療所をつくって支援をしてきている。心のケアのテーマとしては、一般内科としてかかわってきて、PTSDやうつの方、300名ほど診察してきた。災害時の心のケアの厚生労働省の研究員も担っている。
その経験から、宗教者が心のケアを担う時に大きな役割を発揮すると考えている。かかりつけ医がしっかりとすればかなりカバーできる。精神科である必要はない。傾聴の仕方、悲嘆のケアなど、専門的知識のある支援者があれば、かなり大きな役割を果たせる。
平時のことが大事、高齢者社会の地域包括は大事だが、医療や介護の専門職では足りないから、地域で考えていかなければいけない。だから、コミュニティの力、信仰の力がこれから重要になってくる。(長純一氏・石巻市立病院開成仮診療所長、石巻市包括ケアセンター所長、東北大学臨床教授)
Q:自主避難している福島出身者の方のための活動はどうか?(宮坂氏)
A: 広域避難の人も対象となっている。山形県米沢市の支援援助などもしている。「東北の絆・サロンFMI会」への支援など。(鈴木氏・篠原氏)