〈社説〉渋沢栄一生誕180年
強く聡明な心で大誠実の対話を
日本の近代経済の父・渋沢栄一は天保11年(1840年)2月13日(新暦3月16日)現在の埼玉県深谷市に生まれた。
今年は生誕180年。2024年からの新1万円札の顔に決まり、道徳と経済の両立を説く彼の思想や福祉活動が再び注目されている。
自国中心主義が蔓延する時代に、渋沢は常に“世界の中の日本”を意識し、民間外交にも貢献した。
生涯で500超の企業の設立・発展に尽力したが、実業家としての歩みは30歳を過ぎてから。
20代は社会の激変に翻弄され、逆境の連続だった。初め倒幕派として奔走するが、時を得ず挫折し、幕府に仕えた。しかし、幕府のパリ万博使節団の一員として渡仏している間に大政奉還の報に接する。
帰国後は、明治政府の官職に就き、33歳で一転して民間へ。
「日本将来の商業に一大進歩を与えよう」(『雨夜譚』岩波文庫)。この「出発の志」を失わない強さが、数々の大事業を成し遂げた彼の力の源だった。
渋沢が好んで語った題材の一つが「真の成功」である。
生涯不遇だった孔子や讒言により左遷された菅原道真など、生前、正当な評価を得なかった人物は歴史上、少なくない。しかし、一時の判断で人の真価は測れないことを、彼は繰り返し訴えた。
渋沢自身もまた、経済人でありながら目先の利にとらわれず、社会の繁栄と人々の幸福に尽くした。彼が携わった多くの企業や団体は今も日本の中核を担う。
“仁義道徳に基づく富でなければ永続しない”との彼の慧眼が光る。
戸田先生は「社会が創価学会の真価をわかるまでには、二百年かかるだろう」と洞察した。
かつてない挑戦は時に、無理解に直面する。一喜一憂せず、長い尺度で物事を見て、信念を貫くことだ。
私たちの広宣流布は、目の前の一人を励まし、その人の中にある幸福をつかみ取る力を、共に開きゆく挑戦だ。
一人の変革から世界平和を目指す、最も地道だが最も偉大な事業だ。この聖業を担い立つ学会員が、一人も漏れなく「真の成功者」となることは間違いない。
渋沢はインドのタゴール、中国の孫文、アメリカのグラント大統領など世界の識者と友好を結ぶ対話の名手でもあった。彼の「世に至誠ほど、偉力あるものはない」(『渋沢栄一訓言集』国書刊行会)との言葉を引き、池田先生はつづった。
「至誠、つまり『誠実』の限りを尽くす以上の偉大な力はない」「わが友に幸せになってほしい。よき社会、よき未来を一緒に築いていきたい――真心からの真剣な祈りと、勇気の対話が、自身の境涯も大きく開いていくのだ」。いかなる時代にも、志を高く掲げ、強く聡明な心を磨き、大誠実の対話を広げよう。
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