きょう2月9日は、創立者・池田大作先生が民音(民主音楽協会)の設立構想を示した「民音の日」。
音楽を通して世界に友情を広げる先生の文化交流事業をたたえ、このほどアルゼンチン・タンゴの楽団「キンテート・グランデ」から献呈曲「カプリチョ・アヌンシアード」が贈られた。
同曲の贈呈式は4日、東京・信濃町の民音文化センターで晴れやかに挙行された。献呈曲は、7日に神奈川県民ホールで行われた「民音タンゴ・シリーズ」<51>の開幕公演で、日本で初披露された。
献呈曲の贈呈式。楽団リーダーのグランデ氏(最前列左から3人目)から民音の伊藤代表理事に楽譜が手渡され、作曲者のエンリッチ氏(最前列右端)らが笑顔で見守った(民音文化センターで)
献呈曲の贈呈式。楽団リーダーのグランデ氏(最前列左から3人目)から民音の伊藤代表理事に楽譜が手渡され、作曲者のエンリッチ氏(最前列右端)らが笑顔で見守った(民音文化センターで)
1961年2月9日。初のアジア歴訪中だった池田先生は、ビルマ(現・ミャンマー)からタイへ向かっていた。
ビルマは、先生の長兄が太平洋戦争で命を落とした地。終戦から15年余、アジアにはいまだ戦火が絶えなかった。
“人類が悲惨な戦争と決別し、平和を築くには、何が必要なのか”――先生は思索を重ね、その夜、バンコクで同行の幹部に語った。「真の世界平和のためには、民衆と民衆が分かり合うことが絶対に重要だ。特に芸術の交流が不可欠だと思う。これから国境を超えて進めたい」
この設立構想から2年後の63年10月18日に民音が誕生。110カ国・地域の人々と文化交流を重ね、友情を育んできた。
民音の57年の歴史を語る上で欠かせない公演がある。
その一つが、半世紀にわたって毎年、アルゼンチン・タンゴの一流演奏家を招いて開催してきた「民音タンゴ・シリーズ」である。
同シリーズが始まったのは70年。マリアーノ・モーレス氏やオスバルド・プグリエーセ氏といった名だたる巨匠の公演など、音楽史に残るステージばかり。今や、同シリーズに参加することは若きアーティストの憧れである。
「博士の文化交流に心から敬意」
神奈川で開幕した「民音タンゴ・シリーズ」<51>。献呈曲「カプリチョ・アヌンシアード」が披露された(神奈川県民ホールで)
今回、来日した「キンテート・グランデ」は、結成5年の新進気鋭の五重奏団。本場ブエノスアイレスで最も評価の高い楽団の一つとして知られる。
中でも、リーダーのマティアス・グランデ氏は、73年と77年に同シリーズに出演したバイオリニストの巨匠エンリケ・マリオ・フランチーニ氏の後継者。
また、バンドネオン奏者のニコラス・エンリッチ氏は作曲家としても名高く、“次世代のタンゴ楽曲を生み出す逸材”として注目を浴びている。その他のメンバーも国内外で活躍する演奏家ばかりだ。
その「キンテート・グランデ」が、今回の来日にあたって、池田先生に献呈した曲「カプリチョ・アヌンシアード」は、2015年の結成当初に作られた初のオリジナル曲。
「カプリチョ」とは、スペイン語で自由な心。「アヌンシアード」は、社会に広く伝える等の意味を持つ。
タンゴの伝統を重んじながらも、“自分たちの色”を加え、新たなタンゴの魅力を発信する決意を込めたという。
4日に行われた贈呈式で、グランデ氏は語った。「音楽は人の心を“感じる力”を養います。暴力が蔓延する社会にあって、池田博士が長年にわたって推進してこられた文化交流に心から敬意を表します。公演を通して、そのお手伝いができることに、感謝の思いと責任を感じています」
神奈川の開幕公演で披露
情熱的なパフォーマンスの数々に、会場の至る所から感嘆の声がもれた(神奈川県民ホールで)
51回目となる「民音タンゴ・シリーズ」の初日公演となった神奈川県民ホール。
開幕を告げたのは、バイオリンのソロが特徴的な「東洋のメロディ」。心に染みる繊細な旋律に、会場は一瞬にしてタンゴの世界に引き込まれる。
ステージを彩るピアノの響き、バンドネオンが刻む心地よいリズムと、舞台に溶け込むチェロとコントラバスの音色。3組のダンサーが艶やかに舞い、女性歌手がタンゴの情感を歌い上げていく。
プログラムの最後には満を持して献呈曲「カプリチョ・アヌンシアード」を披露。
チェロのゆったりとした旋律に始まり、バイオリン、ピアノとソロパートが移り変わるたびに、スポットライトが演奏者を照らし出す。
徐々にテンポが上がり、疾走するようにフィナーレへ――最後の一音が鳴り終わるや、観衆は惜しみない拍手を送った。