検証51

このページでは以下の案件を検証しています。

●4cecoin (フォースコイン www.4cecoin.com/)
●Paygency (ペイジェンシー paygency.paymentplatform.cc/jp/login)
●Ganapati plc (ガナパテイーパブリツクリミテツドカンパニー ganapati.com/)
●GanaEight Coin [G8C ジーエイトシー・トークン] (ガナエイトコイン www.ganapati.io/)
●GPJ Venture Capital (GPJベンチャーキャピタル www.gpj-vc.com/)


まず4cecoin (フォースコイン)というICO案件から検証を始めます。

●4cecoin (フォースコイン www.4cecoin.com/)
●Paygency (ペイジェンシー paygency.paymentplatform.cc/jp/login)

この項目は以下のキャプに示しましたがYahoo知恵袋に出てきた質問への回答として書いたものです。ICOの案件と思われます。2つ目のサイト、ペイジェンシーは送金業務を行う業者ということになっていますがこの案件以外に関与している気配がないので実際には同じグループに属している可能性が高いです。

検索してみると表題のサイトが引っかかってきました。右のキャプはサイトの冒頭部です。それ以外には勧誘用と思われるInstagramのアカウントが引っかかってきました。

Instagram takada176

Instagram sachie19891020

表題のサイトやこれらの勧誘用のSNSアカウントにある情報は極めて限られています。まずサイトは全て日本語で書かれているので日本のグループが作ったサイトとしか思われません。記述は断片的でいわゆるホワイトペーパーの様なものは全く見当たりませんし、連絡先情報も殆どありません。わずかにメールのリンクがあるだけです。メールアドレスは以下の様になっています。それ以外は住所も電話番号もありません。

>info@4cecoin.com

サイトのWho Is情報を見ると以下のキャプに示したようにサイトの開設日 (Creation Date) は2018年の11月30日、ドメインネームの登録にGMOインターネットやお名前.Comといった日本の業者が使われています。日本語表記しか出来ないことと併せてやはり日本のグループによるサイトとしか思えません。

知恵袋の質問では496証券が発行している仮想通貨となっていますが、「496証券」を検索しても何も情報が出てきません。日本国内のグループであろうと考えられるので国税庁の法人番号公表サイトで「496証券」の法人登録を探してみましたが該当がありません。法人登録がなければ金融庁で金融関係の登録を得ているとも思えません。運営者情報については表題のサイトにプロジェクトメンバーと題して外国人としか思えない4名の人物の画像と名前だけが出ています。

しかしこれら4名が本当にプロジェクトに関係しているかどうかはかなり疑問です。まず4名の画像を見ると背景が同じあることに気が付きますが、画像検索してみるとこの写真で共通している背景の部分はdepositphotesという画像素材を販売するサイトに一致する画像を見つけました。

さらに4名の運営陣の中で最後のAdviserの肩書で登場しているIsabella Garciaという女性の画像を検索するとこの女性の同じ画像が山ほどネット上に存在していることが判明しました。特にロシア語のサイトでこの女性の画像が繰り返し使われているようです。そして日本語のサイトでも例えばTHREE M DESIGNというウェブデザイン関係のサイトにある「123RFの格安素材を活用して素人っぽいWEBサイトから卒業しよう!」という記事の中に同じ画像を見つけました。ここに出てくる123RFも画像素材をネット販売するサイトであり、この女性の画像もおそらくこの123RFというサイトにアップされている画像と思われます。つまりこのIsabella Garciaという女性の画像は共にネットから入手可能な画像素材を組み合わせて作った合成画像であり、この女性がこの仮想通貨案件に関係しているとは到底思えません。

同様にCIOのAndrea Rossiとして紹介されている男性の画像も画像検索してみるとLDLC.comというフランス語の通販サイト、オリンパスの音声レコーダーの紹介ページで同じ人物の同じ画像を発見しました。これも明らかにこの案件の本当の関係者とは思えません。

他の2名については画像検索しても同じ画像は見つからないのでネットから拾った画像ではないかもしれませんが本当の運営陣かどうかは相当に疑わしいと考えざるを得ません。そもそも日本語サイトしか見つからない案件なのですから運営陣は日本のグループとしか思えず、これら4名の明らかに外国人としか思えない人たちが実際の運営陣とは信じがたいです。

さらに表題の公式サイトにはこの案件が海外メディアで大きく取り上げられているとして海外の新聞の紙面が幾つか掲載されています。しかし例えば以下のキャプ画像、アメリカのニューヨークタイムスという新聞の紙面と思われますが非常に違和感があります。ニューヨークタイムスの1面にフォースコインのしかも日本語で書かれた広告の様な画像がこれほど大きく取り上げられることが有り得るでしょうか?

運営陣の画像がネットから拾ってきた画像を加工したものだったことを考えるとこの新聞紙面についても同様のインチキが行われている可能性を考えざるを得ません。そこで辛うじて読み取れる隣の記事の「Scietist Urge Bigger Supply Of Stem Cells (科学者が幹細胞の供給拡大を主張)」というタイトルから検索してみたところ、New York Times OTDというニューヨークタイムスの1面記事を取り上げるTwitterアカウントでこの紙面のオリジナルと思われる画像が掲載された投稿を発見しました。このTwitter投稿の投稿日は2015年9月11日になっています。

右側の2つの記事の見出し部分が読み取れますがそれぞれ「Scietist Urge Bigger Supply Of Stem Cells」「KEY LEADERS TALK OF POSSIBLE DEALS TO REVIVE ECONOMY」という見出しは活字や大文字小文字の別なども含めてフォースコインのサイトにあった紙面の画像と完全に一致していると思います。「Scietist Urge Bigger Supply Of Stem Cells」という記事についてはニューヨークタイムスの公式サイトで電子版の記事を確認することも出来ました。

Twitterの投稿によるとこの新聞紙面は2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件の当日朝の新聞紙面であると説明されています。言うまでもなくこの新聞が発行されたその日にニューヨークの貿易センタービルなどがテロの標的となって多数の死者が出た大事件が起こりました。Twitterの投稿は同時多発テロの14年後に事件を振り返る意味で投稿されたものでしょう。重大事件の起こった当日であるだけに同じニューヨークタイムスの新聞紙面がこれ以外にもTwitterなどで取り上げられているようです。そして本来の新聞紙面にある画像、オリジナルの新聞紙面を見ると市長選の候補者、4名が選挙戦を戦う様子を写した写真のようですがこの画像部分がフォースコインの広告の様な画像と置き換えられてフォースコインのサイトに掲載されていると考えられます。ちなみに仮想通貨の中で最も歴史のあるビットコインの歴史を見るとビットコインの仕組みが提案されたサトシ・ナカモトなる人物の論文が出たのが2008年のこととなっています。2001年9月の新聞紙面にフォースコインが取り上げられるはずがありません。明らかにペテンです。

この検証の冒頭でInstagramにフォースコインの宣伝目的と思われるアカウントが2つあることを指摘しましたが、それら2つのアカウントに掲載された画像にも同様の画像盗用と思われるものが確認されます。例えば下のキャプはtakada176というアカウントからの2018年12月21日付の投稿です。

投稿文は以下の様になっていてフォースコインのサイトのURLアドレスが記されています。

>takada176

>今日は今後の打ち合わせでシアトルまできました。今後496証券が世界に渡り歩けるように頑張ります。今後の展開が楽しみすぎる^ ^

>https://4cecoin.com

>#投資#証券会社#機関投資家#ico

しかしこの投稿に添えられた建造物の画像を検索すると日本の大手建設会社、竹中工務店の公式サイトに同じ画像を含む記事を発見しました。記事の日付は2017年12月25日、タイトルは「米国・シアトル ビジネス地区のオフィスビル「Tilt 49」を取得」となっていて大手通販業者のアマゾンが入居することが決まっているTilt 49というオフィスビルを竹中工務店が海外不動産投資の一環として購入したという内容になっています。左のキャプが記事に添えられた物件概要と買収したオフィスビルの画像です。takada176名義での2018年12月21日の投稿と投稿日からすれば1年ほどの違いがあるはずですが、オフィスビルの手前にある樹木の形など見ても全く同じ画像としか思えません。

同様に以下は同じtakada176というInstagramのアカウントからの2018年10月23日付の投稿のキャプです。ニューヨークでフォースコインのカンファレンス (会議)があったと称して投稿していますからカンファレンスの模様を投稿したと考えるのが普通でしょう。

しかしこの会議の様子を写した画像を画像検索に掛けると山ほど同じ画像がネット上に見つかります。何処にオリジナル画像があるのか分かりませんが、これも何らかの画像を転用しているのは間違いありません。また仮にこれだけの人数を集めてニューヨークで会議が行われたのならばネット上に何らかの情報が見つかるはずです。しかしフォースコインについては日本語でわずかな情報があるだけでアメリカで何かイベントが行われたような形跡さえ見つかりませんし、英語の勧誘サイトとか公式サイトの類も全く見つかりません。

さらにフォースコインの勧誘が行われている2つ目のInstagramアカウント (sachie19891020) には仮想通貨投資で得た利益で購入したと称してブランド品とかマイホームと称する部屋の画像が並んでいますがそれらの内の少なくとも幾つかについてはやはりネット上に同じ画像があることが確認されました。仮想通貨投資で大きな利益を得ているという主張は虚偽としか思えません。

それから最後に表題の2つ目のサイト、ペイジェンシーについて簡単に説明します。フォースコインの公式サイトには以下のキャプに示すリンクがあります。このリンクを見る限りは仮想通貨のウォレットを作るためのリンクに見えます。

しかしこのPaygency (ペイジェンシー) というリンクをクリックしてみるとどうやらこれはウォレットを開設する為のリンクではなく送金会社へのリンクのようです。例えば手数料一覧という項目の冒頭部は以下の様になっています。日本語と英語に対応しており、入金、出金の為の手数料一覧が示されています。

そしてこのペイジェンシーの会社案内の項目 (https://paygency.paymentplatform.cc/about_jp) は以下の様になっています。

>会社概要

>会社名: AI coin solution Ltd

>住所:Suite 10, 3rd Floor, La Ciotat, Mt.Fleuri, Mahe,Seychelles

>事業形態

>ペイメントサービス

住所は租税回避地で知られるインド洋に浮かぶ島国のセーシェルであり、電話番号や経営者情報がありません。このセーシェルの住所を検索すると部屋番号まで同じ住所を日本の悪質な出会い系サイトが所在地としているといった情報が見つかります。電話番号や経営者情報がないことと考え併せるとオフショア会社を使った架空住所の疑いが濃厚と考えざるを得ません。そこでさらにこの住所について調べるとSeychelles Financial Services Authority (セーシェル金融局)の公式サイトにあったFiduciary (オフショア会社) のリストに予想通り同じ住所のオフショア会社、AC Management Limitedを確認することが出来ました。以下はAC Management Limitedのサイト (www.acmanagementltd.com/) にある連絡先情報のキャプです。住所が部屋番号 (Suite 10)まで完全にペイジェンシー社の住所と一致しています。ペイジェンシー社の住所はこのオフショア会社を使った架空住所で間違いないでしょう。

またペイジェンシー社の業務内容がよく分かりませんが海外送金を扱っているのならば金融庁のサイトで公表されている資金移動業者のリストにペイジェンシー/AI coin solution Ltd は該当がないので違法な地下銀行の可能性も疑われます。そもそもペイジェンシー社は送金業務を行っているにしては検索しても殆ど情報が出てきません。つまりこのペイジェンシー社はフォースコイン購入希望者の為の送金業務以外に何らかの業務を担当している気配が全く見つからないのです。フォースコインの為だけに作り上げられた架空の送金業者、例えば銀行口座取得の為に作られた架空会社である疑いを考えざるを得ません。

結論としてこの案件は全てが架空であるとしか思えません。そもそも連絡先情報もホワイトペーパーさえもない案件は全く信用に足りません。投資は絶対に推奨出来ません。


●Ganapati plc (ガナパテイーパブリツクリミテツドカンパニー ganapati.com/)
●GanaEight Coin [G8C ジーエイトシー・トークン] (ガナエイトコイン www.ganapati.io/)
●GPJ Venture Capital (GPJベンチャーキャピタル www.gpj-vc.com/)

これも前項のフォースコインと同様、Yahoo知恵袋に出てきた質問 (以下のキャプ参照)をきっかけに検証対象としたICO案件です。

100万円が数年で1億円になるなどという勧誘が本当に行われているとすれば、それだけで疑いを感じざるを得ません。仮想通貨のICO後値動きはあくまでも市場原理によって決まるはずであり、数年後の相場を断定することなど出来ないはずだからです。

早速検索してまず見つかってきたのはPR Timesというプレスリリースサイトに出ていた以下のプレスリリース記事です。プレスリリース記事についてはこのサイトで何度も出ていますが基本的に企業、この場合には表題の最初にも掲げたGanapati plc (ガナパテイーパブリツクリミテツドカンパニー)が企業の発表内容を掲載料を払ってそのまま掲載を依頼した記事であり、一般のニュースサイトに出ている記事と違って取材者の考えや検証は一切入っていません。

Ganapatiグループ、オンラインカジノで直接ベット可能なG8Cトークンを発行するICO実施を7月7日に発表 (Ganapati PLC 2018年7月7日)

このプレスリリース記事のタイトルを見る限り、オンラインカジノに対応した仮想通貨ということになりそうです。記事の冒頭部を以下に引用します。

>Ganapati (ガナパティー)グループは、マルタ共和国の子会社GanaEight Coin Limitedがオンラインカジノで使用できるトークン(G8C:ジーエイトシー)を発行するICOを行うことを決定し、7月7日(土)に発表しました。

>同グループの親会社であるGanapati PLCは英国NEX Exchange市場に株式上場をしています。また、マルタ、エストニア、ロサンゼルス、キュラソーに子会社や事務所などの拠点を置いております。

>グループ会社のGanapati (Malta) Limitedはマルタ共和国でオンラインカジノライセンス(BtoBライセンス)を保有し、日本のコンテンツを世界へ発信するという信念のもと、オンラインカジノゲームを供給しています。世界的大ヒットとなったピコ太郎のPPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)のスロットなどで、過去2年間で4つのゲームアワードにノミネートされ、英国で開催されるカジノ業界最大のイベントのICE Totally Gamingでは2018年の注目企業の10社に選ばれるなど業界で最も注目されている企業のひとつです。


このG8C (ジーエイトシー)トークンはオンラインカジノで利用される仮想通貨となっています。このサイトで検証対象にしてきた仮想通貨には同様にオンラインカジノ用の仮想通貨が幾つかありました。具体的にはウィズコイン (検証32)、モグコイン (検証34)、アトミックコイン (検証47)といった案件が挙げられます。これらはいずれも信頼性やプロジェクトの実現性に大きな疑問があった案件であり、ウィズコインなどに至っては集団訴訟が呼びかけられるような事態になっていますが関心があるならば本項と併読してください。

まずG8C (ジーエイトシー) トークンの発行元であるGanapati (ガナパティー)グループについてこのプレスリリース記事に記されている記述の確認、検証から始めることにします。まず以下は表題の2つ目に挙げたガナパテイー社のサイトにある連絡先情報です。

London Office

6-8 Standard Place, Rivington Street, London, EC2A 3BE, United Kingdom

Tokyo Office

Roppongi Hills Mori Tower 17F, 6-10-1 Roppongi, Minato-Ku, Tokyo, Japan, 106-6117

Taiwan Office

Taipei 101, 45F-E, No.7, Sec. 5, Xinyi Rd., Xinyi Dist., Taipei City 110, Taiwan (R.O.C.)

Los Angeles Office

9701 Wilshire Blvd., Suite 1000, Beverly Hills, CA 90212, United States of America

Curaçao Office

Heelsumstraat, 51 E-Commerce Park, Curaçao, P.O. Box 422


公式サイトの脚注には

>Ganapati PLC is registered in Malta, (ガナパティー社はマルタに登録されています。)

と書いてあるのですが、マルタの連絡先情報はなく、イギリスのロンドン、東京、台湾の台北、アメリカのロサンゼルス、さらに租税回避地として知られるオランダ領のキュラソー島の5カ所の住所が記されていますが、いずれが本社なのか明記されていません。またいずれの連絡先にも電話番号がありません。太平洋の島国であるマルタに登録があるとしても実際にマルタに事業の本拠があるとは思えません。さらにこれら5カ所の内、アメリカ・ロサンゼルスの住所はALLIANCE Business Centersというバーチャルオフィス業者の拠点住所と一致します (下のキャプ参照)。

また5つの拠点の最後にあるキュラソー島の住所に含まれる「E-Commerce Park」もオフショア会社のようです。5つの拠点全てに電話番号が記されていないことなども考え併せるとこれらの拠点が全て実際に機能しているかどうか疑問を感じます。キュラソー島のオフショア会社を使っておそらくはペーパーカンパニーを設けることに何の意味があるのか全く意味が分かりません。税金対策などの為でしょうか?マルタ、アメリカ、キュラソー島には事業の実態が存在しない可能性が高いです。

2番目に挙がっている日本オフィスについて調べてみると国税庁の法人番号公表サイトで法人登録が見つかりました (下のキャプ参照)。この法人登録には「本店あるいは主たる事務所の所在地」がイギリスであると明記されています。

連絡先情報の筆頭に挙がっているイギリスオフィスが本店ということになりそうです。しかも最初に引用したプレスリリース記事には以下の様な文章があります。

>同グループの親会社であるGanapati PLCは英国NEX Exchange市場に株式上場をしています。

イギリスの証券取引所と聞いて頭に浮かぶのはロンドン証券取引所です。NEX Exchangeという証券取引所を聞いたことがありませんでしたが英語版のWikipediaにNEX Exchangeの項目が存在するなど歴史は浅いものの証券取引所としてのNEX Exchangeが実在しているようです。さらにNEX Exchageの公式サイト (www.nex.com/) でガナパティー社の株式銘柄情報を確認することも出来ました。しかしこのガナパティー株の銘柄情報をよく見るとガナパティー株式は実際に上場していると言えるのか微妙な状態であることが判明しました。以下のキャプは銘柄情報の抜粋ですが上場されてはいても出来高が殆ど無いのです。

上のキャプの中でチャートの部分を見るとガナパティー社の株式が上場されたのは2015年の12月14日となっており、この検証を書いている時点で3年3ヵ月ほど経過していることになりますが、チャートやキャプの一番最後にある「Latest Trades (最近の取引)」の項目を見ると一番最近に取引されたのが2017年の5月30日で1株65ポンドで出来高は500株。その前となると2016年の9月28日に1株当たり75ポンドで1000株取引されたという記録があるだけです。つまり上場以来の3年3ヵ月の間にたった2回しか取引が行われておらず、出来高も合計たったの1500株だけだったことになります。上の概要から読み取れる発行済み株式数が3199万2763株、株式時価総額が1440万ポンド (1ポンド=145円として20億8800万円)といった数字と比較して株式上場は名ばかりと言わざるを得ません。マイナーと思われる株式市場であっても株式を上場するとなればそれなりに費用も掛かるでしょうし、何の為に上場しているのかかなり疑問です。これは上場企業と名乗りたいだけの上場ではないかと考えざるを得ません。「検証12」で検証したホワイトフォックスベンチャーズ [AWAコイン]、「検証21」で検証したReelcause社 [ポートフォリオコイン] 「検証49」で検証したクリックグローバル/ショップズコインはいずれもアメリカのOTC市場という上場基準の甘い株式市場に上場している休眠会社に等しい名目だけに近い上場会社を上場会社だから信頼出来るという論調での勧誘に使っていましたがこれらの案件との類似性を感じるのです。

少なくとも普通ならば株式上場の最大の目的と考えられる資金調達という目的を果たすことになっていないのは確実でしょう。また計算上は20億円以上という株式時価総額があっても本当にそれだけの企業価値があるかどうかも疑わしいです。

そこでガナバティー社のサイトにPDFファイルで用意されている最新の年間決算報告書を眺めてみましたが掲載されている2017年1月末まで、2018年1月末までの2年間の決算報告の概要部 (下のキャプ参照)を見ると両年度ともかなりの赤字経営になっているようです。

上のキャプで一番下の赤枠で囲った部分、「Loss for financial year (会計年度の損失)」を見ると2017年1月末までの1年で944万6721ポンド (1ポンド=145円で計算して約13億7000万円)、2018年1月末までの1年で1423万8296ポンド (同じく1ポンド=145円で計算して約20億6000万円)の赤字決算になっています。また残念ながらこのイギリスの決算報告の仕様ではどれほどの売上が各年度にあったのか情報が記されていないようです。

そもそもガナバティー社の公式サイトによればガナパティー社はゲームを開発する会社ということになっていてサイト冒頭には開発したあるいは開発中と思われるゲームの簡単な紹介動画が用意されています。

この紹介動画や公式サイトのゲーム紹介のページを見ると10を超えるゲームを開発中あるいは開発済みのようです。しかしこれらのゲームがどんなハードに対応しているのか、何時発売になるのかあるいは既に販売されているのか、価格は幾らなのかといった具体的な情報は全く見当たりません。少なくともガナバティー社が開発しているのはニンテンドー、プレステ、X-Boxといった家庭用ゲーム機に対応した、いわゆるコンシューマーゲームではなさそうです。

そこでどんなゲームを開発しているのか情報を探すとRecGameという求人サイトにガナバティー社の獣人情報があり、そこに業務内容に関して簡単な記述があるのを見つけました。

>EU向けオンラインカジノコンテンツの企画・開発 Webサービスの企画・開発・運営 スマートフォンアプリの企画・開発・運営

>メイン事業として、対海外向けのオンラインカジノゲーム開発を行っており、日本の IPを含むクリエイティブなコンテンツを融合させた、新しいゲーム制作に力を注いでおります。カジノライセンスも保有しており、世界中のPCやスマホなどにゲームを提供中です。

つまりオンラインカジノゲームを主力としながらもパソコンやスマホ向けのゲームも開発しているとあります。しかし具体的にパソコンやスマホ向けに開発されたゲームが既にあるのかは検索しても情報が出てきません。少なくとも日本向けに出荷されているような様子は全く見当たりません。実際に製品化しているものがあるのならば具体的にダウンロード出来るサイトや通販サイトへのリンクがあってしかるべきだと思いますが、そういったリンクも見当たりません。この項目の最初にガナパティー社から出ているプレスリリース記事を引用しましたが、パソコンやスマホ向けのゲームを出しているならば製品発表のプレスリリース記事も出ていてしかるべきだと思うのですがそういった記事も見当たりません。2015年11月6日に「日本の新たな輸出産業となる『オンラインゲーミング』 事業開始のお知らせ」というゲーム事業開始のプレスリリース記事が出ていますがその後に実際にゲームが販売されるといった発表は見つからないのです。

さらに既に引用した求人広告には従業員数が14人、グループ会社含めて約150人と記載されています (以下のキャプ参照)。

グループ会社の中には後述するGPJペンチャーキャピタルなどゲームとは関連の無い会社も含まれているはずです。150名の中でどれほどの人数がゲーム開発に当たっているのか分かりませんが常識的に考えて10以上のゲームを開発している企業として規模が小さすぎるように思います。

さらにガナパティー社のイギリスの法人登録にある経営者情報を見ると既に辞職した4名を除き、7名の経営者が列挙されていますが、7名の中で5名は日本国籍で日本在住となっています。例えば最も役職が高いと思われるChief Exective Officer (最高経営責任者) はHASEGAWA, Hirokiとなっていて国籍、居住地共に日本となっています。

それ以外にもプレスリリース記事でガナパティー社日本法人の代表となっている澤田拓 (Sawada Taku) という人物、後述するマルタのガナエイトコイン社の代表である寺井勇人 (Terai Hayato)という人物もこの英国法人の役員として名を連ねているようです。

但し現役の7名、既に辞任した4名の計11人の中で就任時期が最も早いのはSCOTT, David Alexander Hillというイギリス国籍、イギリス在住の人物になっていて2013年12月9日に会社が創設された時点ではこの人物が唯一の経営者だったことになっています。他に2013年12月当時のメンバーとしてSCOTT, Sandraという人物が登録されていますがこちらは役職がSecretary (秘書?)となっていて経営陣ではなさそうです。

この会社創設当時の唯一の経営者であるSCOTT, David Alexander Hillという人物はガナパティー社を含めてイギリスで21社の経営陣としての登録歴があり、その内11社では現役の経営者ということになっていますがガナパティー社の経営からは2015年8月6日に離れたことになっています。

さらにSCOTT, David Alexander Hillが経営陣として名を連ねたことのある21社を見ると15社の連絡先住所が「40 The Grove, Ealing, London, United Kingdom, W5 5LH」、ガナパティー社を含む3社の連絡先が「30 Percy Street, London, United Kingdom, W1T 2DB 」で共通しています (ガナパティー社の連絡先住所は2016年9月に現在の連絡先住所に変更)。またこのガナパティー社の創設当時の住所について調べると全く同じ「30 Percy Street, London, United Kingdom, W1T 2DB 」という住所に既に解散した法人や休眠法人も含めて数十以上の法人が存在するようです。この住所にこれだけの法人が存在しているとは考えにくいので少なくとも創設当時のガナパティー社は名目だけの法人、ペーパーカンパニーだった可能性が高いように思われます。

そしてガナパティー社創設から2か月ほど経過した2014年1月31日に経営陣に加わったのがISHIHARA, Yukio、HASHIMOTO, Souichiという日本国籍、日本在住の2名です。時系列でまとめると以下のようになります。


2013年12月9日 :SCOTT, David Alexander HillとSCOTT, Sandra (秘書?)によりイギリスでガナパティー社設立

2014年1月31日 :ISHIHARA, Yukio (石原透雄?)、HASHIMOTO, Souichiが役員に就任

2014年6月1日 :HASEGAWA, Hiroki (現CEO) がCEO就任

2015年8月6日 :SCOTT, David Alexander Hillが辞職、同日付でDRURY, Anthony Charlesが就任

2015年10月9日 :ガナパティー社日本法人法人登録

2015年12月14日 :イギリスNEX Exchangeに株式上場

2016年9月22日:ガナパティー社英国法人移転 (新住所:6-8 Standard Place Rivington Street, London, United Kingdom, EC2A 3BE)

2017年5月1日 :SCOTT, Sandra (秘書?)が辞職し、同日付で新たな秘書?としてHUDSON, Michaelが就任


これだけの情報からの推測ですが、このガナパティー社イギリス法人はおそらくオフショア業務を行うSCOTT, David Alexander Hillによってペーパーカンパニーとして創設され、2014年1月31日に日本人グループに売却された法人ではないかと考えられます。

ガナパティー社の公式サイトは現時点で英語と中国語でしか表記が出来ませんし、名目だけの可能性が高いとは言え、会社登録がマルタ、イギリスの証券取引所に上場しているとなっているものの現在のガナパティー社は本質的には日本人による日本の企業の可能性が高いように思います。

それならば尚のこと開発したゲームソフト、特にパソコンや携帯向けのゲームを日本向けに出していないことが奇妙に思われます。一体、ガナパティー社のゲームは何処の国でどんなハード向けのゲームなのでしょうか?それらは既に販売されているのでしょうか?まだ販売されていない開発段階ものならば何時頃販売が行われる予定なのでしょうか?

EU圏向けとなっていたオンラインカジノ向けのゲームについても何処のオンラインカジノに導入されているのかといった情報が見当たりません。上で引用した紹介動画に出てきた幾つかのゲームの名前で検索してみましたがオンラインカジノに導入されていることを確認出来たものはありませんでした。本当にこれらのゲームは開発されているのかそしてこれらのゲームの売り上げが貢献して会社が黒字経営になる見込みはあるのでしょうか?

とにかくガナパティー社の出しているはずのゲームについて具体的な情報が非常に乏しい点に関しては非常に強い違和感を感じざるを得ません。検証した情報を総合的に考えるとガナバティー社のゲーム事業が本当に利益の上げられるような事業実態があるのか、もしかすると見せ掛けだけの幽霊事業ではないのかという疑問を感じざるを得ません。そして仮にゲーム関係の事業に事業実態がないのならばオンラインカジノ向けの仮想通貨とされているG8Cトークンについても事業が順調に運ぶ可能性を疑わざるを得ません。

次に表題の2番目に挙げたG8Cコインのサイトについて検証します。まずサイトの冒頭にはガナパティー社のサイトにもあった歯車のような企業ロゴとともにGanaEight Coin Ltd. (ガナエイトコイン社)と書いてあります。さらにその下にはガナパティーグループと書いてあってガナエイトコイン社がガナパティーグループに属しているということを意味しているものと思われます。本項の冒頭で引用したプレスリリース記事の

>Ganapati (ガナパティー)グループは、マルタ共和国の子会社GanaEight Coin Limitedがオンラインカジノで使用できるトークン(G8C:ジーエイトシー)を発行するICOを行うことを決定し、7月7日(土)に発表しました。

という記述とも一致します。

しかしこのガナエイトコイン社はイギリス、日本でそれぞれ法人登録のあった親会社のGanapati plc (ガナパテイー社)と異なり、イギリスでも日本でも法人登録が見つかりません。仮想通貨を発行する子会社の法人登録がいずれにも存在せず、マルタの会社となっているのは仮想通貨の発行に関する日本やイギリスの規制を逃れる為でしょうか?日本の投資家にも仮想通貨を売っている実態があると思われるのにこれで法律的に問題がないのか疑問が残るように思います。

ガナエイトコインのサイトには右のキャプに示した様にLICENCES (ライセンス)という項目があるのですが「mga」と書かれたロゴ付きのリンクが1つあるだけです。そしてこのリンクをクリックするとMalta Gaming Authority (マルタ・ゲーミング・オーソリティ www.mga.org.mt/ )というギャンブル関係のサイトに繋がります。そしてこのサイトでガナパティー社に関連していると思われるライセンスを探すと下のキャプに示した様にガナパティー社のマルタ法人がType 1 Gaming Servicesというライセンスを受けているということが分かります。ライセンスの意味が分かりませんが、ライセンスを受けているのはガナエイトコイン社ではなく、ガナパティー社のマルタ法人であり、仮想通貨関係のライセンスではなく、オンラインカジノ関係のライセンスでしょう。

但し、オンラインカジノのライセンスがあってもガナパティー社あるいはグループ企業がオンラインカジノを営んでいる様子は確認出来ません。さらにこのライセンス内容に出てくるガナパティー社マルタ法人はガナパティー社の公式サイトにもなかったものですし、その住所は以下のようになっています。

>Villa Seminia, 8, Sir Temi Zammit Avenue, Ta' Xbiex, XBX 1011, Malta

この住所を検索すると複数の法人の住所として使われていること、いわゆるパナマ文書にも登場していることが確認されるのでオフショア関係の住所の可能性が高いです。

とにかくガナパティー社あるいはガナエイトコイン社が仮想通貨の発行についてマルタあるいは他の国でライセンスを受けているようには思えません。マルタの法律が分かりませんが、マルタでは仮想通貨の発行についてライセンスの取得が必要とは規定されていない為にマルタに仮想通貨発行の拠点を設けているのかもしれません。但し例えば日本でマルタ法人が発行した仮想通貨への投資を勧誘することが日本の法律に抵触していないとは言えないように思います。

一方でガナコイン社のサイトのTEAMという項目を見るとMANAGEMENT (運営陣) として以下の3名の画像が並んでいます。

それぞれの画像をクリックするとそれぞれの人物の氏名や簡単な紹介が出てきます。

▼HAYATO TERAI (Co-CEO、日本)

▼DR KRISTINA C. DEGUARA (Co-CEO、マルタ)

▼JULIET ADELSTEIN (Chief Operating Officer、オーストラリア)

Co-CEOの日本人は日本の弁護士でガナパティー社英国法人でもAttony (弁護士)として役員名簿にあった人物のようです。TEAMとしてその他にもガナパティー社英国法人や以下で説明するGPJベンチャーキャピタルの経営陣で名前の挙がっている人物が登場しています。

そしてこのガナコイン社のサイトを見てもG8Cトークンに関する情報は極めて限定的です。上で検証したフォースコインの場合と同じで仮想通貨のICOなら用意されているはずの事業計画をまとめたホワイトペーパーが見つからず、以下のキャプにあるような発行枚数などの基本情報が提示されているだけです。

一応この概要を見ると上のキャプの左下にあるTotal number issued (総発行枚数)は7兆枚となっています。1枚当たりの発行価額は0.0000001ビットコイン、7兆枚のコインが全てこの相場で発行されると総額70万ビットコインが集まることになります。ビットコイン1枚が45万円として計算すると総額3150億円ということになります。

何しろホワイトペーパーが見当たらず、事業計画のようなものが殆ど不明なのですが、この仮想通貨はオンラインカジノ用の仮想通貨となっていることはこの項目の冒頭で引用したプレスリリース記事にあった通りです。参加するオンラインカジノがどれほどあってそれらの総売り上げがどれほどあるのか分かりませんが、2018年11月の東洋経済オンラインの記事2018年10月の現代ビジネスの記事によると世界で最も年間売上高の多いマカオのカジノの年間総売り上げが3~4兆円、有名なラスベガスのカジノの年間売り上げはその7分の1となっていますから5000億円前後ということになります。しかも総売り上げはカジノだけの売り上げではなく、宿泊、飲食、ショーなどの娯楽やショッピング部門の売り上げも含まれているはずです。オンラインカジノが世界に何社あって、そのうち何社がG8Cトークンを決済手段として採用する予定なのか、参加するオンラインカジノの年間総売り上げがどれほどあるのか分かりませんが、発行総額3150億円というのはラスベガスのカジノの年間総売り上げにも近い数字でかなり過剰なのではないかという印象を持ちます。年間で考えたら仮想通貨は使い回されるはずですから本当に3150億円分もの仮想通貨が必要なのでしょうか?少なくともこうした基本的な疑問に答えられるだけのホワイトペーパーが準備されていないことには強い不審を感じざるを得ません。

表題の3番目に挙げたGPJベンチャーのサイトはガナエイトコインのサイトにあるグループ企業の連絡先一覧にGPIベンチャーの連絡先情報も含まれていたことから調べてみたサイトです。ここまで検証したガナパティー社のサイト、ガナエイトコインのサイトは共に英語と中国語での表記しか選択出来ない、つまり日本語表記が出来ないサイトでしたが、GPIペンチャーのサイトは日本語表記あるいは中国語表記のみに対応しており、英語での表記は出来ないサイトです。GPIベンチャー社・公式サイトの会社概要の項目を見ると日本国内に3か所と台湾にのみオフィスがあるようです。

但し台湾支社の連絡先情報には電話番号がありませんし、

>Taipei 101, 45F-E,No.7,Sec.5,Xinyi Rd., Xinyi Dist.,Taipei City 110,Taiwan

という住所も検索してみると「The Executive Centre」というレンタルオフィス/バーチャルオフィス業者の拠点の住所に一致するようです (右のキャプ参照)。台湾支社は実在するかどうか疑問があります。

そしてこのGPJベンチャーキャピタルについて検索していて気が付きましたが、ネット上にGPJベンチャーキャピタルに投資を勧誘されたという情報が多数見つかります。例えばYahoo知恵袋には以下の2件の投稿が見つかります。

2015年3月19日投稿

2015年3月の投稿では年率20~30%という常識的に信じ難いほどの投資利回り、2018年6月の投稿でも元本保証で1000万円の投資に対して毎月5万円配当とありますから年率6%という元本保証の投資としてはかなりの高利回りです。さらにGPJベンチャーキャピタルの東京本社、福岡支社、札幌支社の電話番号で検索して気が付きましたが同様に投資勧誘の電話が掛かってきたという口コミ投稿がネット上に大量に存在することが分かりました。口コミ情報の一部をキャプに示しました。

■東京本社の電話番号 (03-4589-9060) に関する口コミ

電話帳ナビ

■福岡支社の電話番号 (092-718-3580) に関する口コミ

電話帳ナビ

jpnumber

■札幌支社の電話番号 (011-281-0811) に関する口コミ

jpnumber

電話帳ナビ

これら匿名の誰が書いたか分からない口コミをそのまま鵜呑みにして信用することは適切ではないと思いますがこれだけ大量に口コミ情報が投稿されていておおよそ以下のような点では一致しているように思います。すなわち

◆投資の勧誘が行われている。

◆断っても繰り返し勧誘電話が掛かってきている。

といった点ではかなりの投稿で一致している点であり、確度が高いと判断せざるを得ません。また電話帳ナビ で迷惑度100%となっているなど多くの人が「迷惑電話」と認識していることは確かと思われます。現在残っている口コミ以外にも「依頼によって削除された」口コミが大量にあったようですが、それらもおそらくはGPJベンチャーキャピタル社にとって好意的ではない投稿だったと思われます。

そしてGPJベンチャーキャピタルは名称からしてベンチャーキャピタルのはずです。上で引用した会社概要の事業内容の第1項にも

>1. ベンチャー企業への投資・インキュベーション

と書いてあります。個人的な認識として将来有望なベンチャー企業に投資して年単位で企業の成長を見守り、新規株式上場などで資金を回収するというベンチャーキャピタルの投資はハイリスク・ハイリターンの投資の最たるものでしょうし、毎月配当が出るような投資ではないはずです。勿論、元本保証の投資では決してありません。途中で事業が挫折して資金の回収が不能になる案件も出てくることを覚悟して投資するのがベンチャーキャピタルのはずです。元本保証の高利回り投資と称して勧誘が行われているとすれば問題があるとしか思えません。

そしてGPJベンチャーキャピタルについて検索していて気が付きましたが、複数の転職情報サイトにGPJベンチャーキャピタルの求人情報が出ており、それらの求人情報にある「仕事内容」などを見ると営業電話を受けた人たちからの口コミを裏付けるような内容が見られます。例えば以下はエン転職という求人情報サイトに出ていた求人情報からのキャプです。かなり長くなりますが引用します。特に気になる部分、重要と思われる部分を赤の下線、赤枠で強調してあります。

この求人情報の記載を見てもやはりベンチャーキャピタルへの投資名目で個人への営業電話での勧誘が行われていることが確認されます。電話での表記営業だけではなく、訪問営業も行われているようです。また高額の投資を呼び込むことに成功すればかなり高額のインセンティブが支給されることも記されています。

>例えば1,200万円の新規契約なら72万円、1,800万円の追加契約なら126万円を支給。

とありますから呼び込むことに成功した投資額の6~7%という高率のインセンティブです。こんなにインセンティブを払った上にさらにかなり高い利回りや元本保証を約束出来るような実績と確実性がこの会社のベンチャーキャピタル事業にはあるんでしょうか?初年度だけ考えれば営業に7%のインセンティブ、投資した人に配当利回り6%を出したら最低でも13%の運用利回りが必要になるはずです。2年目以降はインセンティブ分はなくなるにしても継続的に配当は支払う必要があるはずです。

また実際にこんな配当を出すことが可能なほど事業が順調ならばどうして金融機関からの借り入れなどで資金調達しないのでしょうか?金余りの世の中なんですから金融機関は確実な融資先と判断すればよほど低い金利で融資に応じてくれるはずです。社員への基本給30万円に加えインセンティブと配当で合計13%も吐き出すなら金融機関からまとまった資金を借り入れた方が資金調達コストが格段に安く、明らかに合理的な選択でしょう。普通のベンチャーキャピタルなら社員の役目は営業電話を掛けまくって投資名目でお金を集めることではなく、投資先となるベンチャー企業の発掘、将来性の評価などに重点が置かれているはずです。

そしてYahoo知恵袋や電話番号別の口コミサイトに投稿されているような電話による投資勧誘の実態があるのならば以下のような法的な問題があるように思われます。

◆GPJベンチャーキャピタルは金融庁のサイトで公表されている金融商品取引業者のリストに該当がないので不特定多数から投資を募っているとすれば出資法違反の可能性がある。

◆断っても繰り返し勧誘電話が繰り返されているとすれば金融商品取引法 (第三十八条第四項)に違反する不招請勧誘の可能性がある。

◆ベンチャーキャピタルの性格上、元本保証とか配当利回りの約束など出来ないはずなのに元本保証や具体的利回りを示した勧誘が行われているとすれば同じく金融商品取引法 (第三十八条第二項)で禁じられている「断定的判断の提供」に該当する可能性がある。

さらにGPJベンチャーキャピタルのサイトを見ても投資を募っているといった記述は見つかりませんし、過去に投資した人たちの運用成績なども見当たりません。またGPJベンチャーキャピタル社自体の決算情報なども開示されていません。投資を募るならば絶対に必要なはずの適切な情報開示が行われているかどうか疑問があります。適切な情報開示を義務付けた特定商取引法違反の可能性も考えられます。

出資法違反の可能性を指摘しましたが、GPJベンチャーキャピタルのサブマネージャーを名乗る片桐という人物のLinked Inのアカウントに以下の様な記述を見つけました。

これ以上の説明がないので解釈が難しいですが、合同会社の形にして合同会社に出資する社員権を販売するという形で投資を集めているのではないかと思われます。この合同会社の社員権を販売するという形で出資を募る手段はギリギリ合法なのかもしれませんが、かなり問題のある手法であることは確かだと思います。この点は非常に微妙な問題なので公的機関から出ている以下の記事を参照してください。

売電事業への出資を募りながら合同会社の社員権の販売勧誘を行う事業者 (国民生活センター)

再生可能エネルギー事業への出資を勧められて契約したが、実際は合同会社の社員権を取得する契約になっていた事例を紹介する。[2015年11月27日:掲載]

株式会社グランター及びその役職員2名の金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立てについて (証券取引等監視委員会)

[2014年8月6日:掲載]

そして同様の法的な問題はG8Cトークンへの投資勧誘においても存在している可能性が考えられます。この検証の端緒になり、この項目の冒頭で引用したYahoo知恵袋への投稿で報告されている「100万円が数年で1億円になる 」といった勧誘が事実であるとすれば「断定的判断の提供」や特定商取引法違反の可能性は高いと考えざるを得ません。さらに既に指摘しましたが、日本人による日本のグループによる案件と思われるのにマルタで法人を立ち上げて仮想通貨を発行し、それを日本人に売り込んでいるとなればここにも違法性の疑い (資金決済法違反?) が生じてくる可能性があると思われます。

またこれも既に上の検証の中で指摘しましたがオンラインカジノ専用の仮想通貨が3150億円相当分も発行されて需要が実際にあるのか相当に疑問があります。「100万円が数年で1億円になる 」には3150億円分の需要が存在するだけでは明らかに不充分でしょう。

具体的に何社のオンラインカジノが決済手段としてG8Cトークンを採用するのか全く情報がありませんけど仮に世界中のオンラインカジノが参加したとしても決済手段としての需要だけでは「100万円が数年で1億円になる 」つまり、相場が100倍になるほど仮想通貨の相場を押し上げるほど強い需要になるとは到底思えません。

仮にG8Cトークンの相場が100倍になるなら時価総額は3150億円の100倍、31兆5000億円以上になることが必要です。この検証を書いている2019年3月時点で仮想通貨時価総額ランキングで圧倒的1位を誇るビットコインの時価総額でさえ7兆9000億円ほどですからオンラインカジノでの決済というかなり用途が限られる仮想通貨がビットコインの約4倍にも及ぶ時価総額に達するというのはちょっと想像出来ません。オンラインカジノでの実需だけでなく、投機目的の資金が集まってバブルが生じれば相場が押し上げられる可能性はあるかもしれませんが、投機マネーが集まってくるような事態を確実視するような合理的根拠があるとも思えません。

個人的見解として「100万円が数年で1億円になる 」という勧誘文句は現実味があるとは思えませんし、この案件にはかなりの法的問題もあります。投資は全く推奨出来ないという結論にならざるを得ません。


※付記

2020年3月13日、証券取引等監視委員会から合同会社GPJベンチャーキャピタル及びその代表社員など2名,松橋知郎 (まつはしともあき)と渡邉貴文、について以下のキャプに示した告知が出ています。

投資名目で資金を集めていることについて金融商品取引法違反を指摘し、投資勧誘を禁止及び停止することを命ずるように申し立てを行ったとあります。さらにこの告知に関連して2020年4月3日付で東洋経済オンラインに以下の記事が出ています。

電話勧誘で高齢者を標的に違法な投資勧誘を行っていたなどこの件についてかなり詳細にまとめられています。以下の図によれば配当を伴う社員権あるいは仮想通貨への投資名目で2000人余りから合計約166億円を集金したとなっています。出資した人たちにきちんとお金が返還されるのかどうか続報を待ちたいと思います。