桑名市役所に行政視察に行きました。
2024年7月22日(月) 13時より 「その手は桑名の焼き蛤」で有名な、桑名市の桑名市役所様に大政クラブ有志10人で行政視察に行きました。
今回の視察は、現在の桑名市の伊藤 徳宇(いとう なるたか)市長さんが2012年に当選された時に公約に掲げられ、当選後、市役所に導入した「公民連携」(コラボ・ラボ桑名)という仕組みついて、この12年間の成果などをお聞きし、今後の大口町の一助にしていく、という目的でお邪魔しました。
まずは、「公民連携」を取り入れた背景についてご説明をいただきました。
※以下のグラフ等の資料は、桑名市様から「コラボ・ラボ桑名」視察用に事前に配布いただいた資料を使わせていただきました。
「公民連携」を取り入れた背景は、「ヒト」「モノ」「カネ」と、どこの自治体も掲げる問題でありました。
「ヒト」において、グラフに示すように桑名市では、平成12年(2000年)に老年人口(65歳~)と年少人口(0~18歳)が均衡し、その後、高齢化が進み平成27年(2015年)を境に人口が減少してきました。
「モノ」においても、築31年以上の公共施設が全体の約60%に達し、耐震化が進んでいない施設は全体の約10%あり、老朽化と余剰の公共施設をどうしていくか、大きな課題でありました。
「カネ」に関しては、より深刻で、平成26年(2014年)には、「経常収支比率」が99.7%までになりました。
この「経常収支比率」とは、市税や地方交付税など使い道が自由な一般財源に対して、必ず支出しなければならない経費の割合で、この比率が高いほど、自治体が自由に使えるお金が少ない、という事になり、自治体のまちづくりに大きな影響があります。
99.7%は、ほとんど恒常的な経費(経常的経費)で税金が消化されてしまい、自由に使えるお金が残っていない、という事になります。
ちなみに大口町の「経常収支比率」は、令和4年度は、74%でありました。桑名市の「カネ」の問題の深刻さがご理解いただけるかと思います。
「ヒト」「モノ」「カネ」、これらの課題を解決し「持続可能なまちづくり」をどうしたら良いのか、桑名市は、「公民連携」という手法を取り入れ、伊藤市長を先導にして立ち向かったのです。
その12年間の軌跡をお聞きしてきました。
桑名市の「公民連携」は、今から20年前の平成16年(2004年)までさかのぼります。
日本初の「P F I 手法」を取り入れた「図書館等複合公共施設」が始まりでした。
(この時点ですでに「民」の力を取り入れる手法は導入されていたのですね。)
平成26年(2014年)には、「経常収支比率」が99.7%になり、この危機的状況を打破するため「公民連携専門部署」が創設され、「公民連携」の研究のため職員が東洋大学へ学びにいき、帰ってきた職員を中心に本格的に動き出しました。
そして、行政課題解決に、民間の提案を受ける窓口として、平成28年(2016年)「コラボ・ラボ桑名」が開設されました。
その後、「小さな成功(広告事業提案制度、ネーミングライツ・パートナーシップ提案制度、サウンディング型市場調査による市役所駐車場の有効活用、情報交流施設「又木茶屋」、独身男女の出逢いの機会創出等に向けた連携協定、年ゴミ出しカレンダーに広告を掲載など)」を積み重ね、「大きな成功(汚水施設の売却、未利用地をコンビニ用地として貸付、健康増進施設「神馬の湯」、多世代共生型施設「桑名福祉ヴィレッジ」)」に結びつけ、また、「失敗からの学び」を得て、桑名市らしい「公民連携」の実践と模索を繰り返しながら今日に至っています。
提案事業者向けの周知、広報、発信の手段
提案事業者募集向けには、以下の媒体を使って周知、広報、発信をしています。
↓↓↓
1.サウンディング型市場調査で施設の有効活用について民間提案を求めている。
2.市のホームページ「コラボ・ラボ桑名」で随時提案募集している。
3. 県や国のプラットフォームを活用
県:みえ公民連携共創プラットフォーム、国:中部ブロックプラットフォームを活用している。
4.民間事業者運営の官民連携サービス「ローカルハブ」を活用して、自治体の課題を掲載し、登録事業者(約2.5万社)に向けて効果的に発信している。
※ほとんどが市外の業者からの応募との事です。
失敗からの学びから「公民連携が上手く行かない5箇条」が生まれました。
その1.職員の知識、経験不足
その2.縦割り行政
その3.合意形成の不足
その4.行政の目的設定が不十分
その5.提案事業者がノーリスク
この5箇条は、主に自治体側の課題が大きいですね。
自治体(公)と事業提案者(民)の捉え方の齟齬から来るのですが、従来の自治体の概念で「公民連携」を進めて行くと「失敗」しますよ、と桑名市の担当者の方は、この5箇条で述べています。
そして、「公民連携が上手く行かない5箇条」から「公民連携を成功させるには ~公民連携の心構え5箇条~」が出来ました。
その1.固定概念にとらわれない ・前例踏襲、事例がないから断るはダメ
その2.民間ノウハウを最大限活かす ・民間ノウハウを阻害する仕様書はダメ
その3.提案・対話は断らない ・どんな内容でも対話すること
その4.提案事業者を大切にする ・また対話や提案に来てもらえるような関係を
その5.行政と民間の壁を壊す ・双方が同じ目的に向かってサービスを提供すること提案者へインセンティブを付与(プロポの際に加点・随契)
コラボ・ラボ桑名の担当者は、「出来る、出来ないは、二の次で、まずは提案があったら話を聞く、ことから始めています。そして、どうしたら出来るかを考えるようにしている。」とおっしゃっていました。
提案された事業が出来そうなら、事業提案者と所管課との間に立ち、事業実現に向けて調整をしていき、最終的に所管課に提案事業企画を移管する、という流れになります。
役所の事情がわかる「コラボ・ラボ桑名」だからこそ、「公民連携」の事前の調整や段取りがはかどるのだと感じました。
最後に「公民連携」の提案に対する実現率を「コラボ・ラボ桑名」の担当者さんからお話しがありました。
表にありますように、「実現は30%程度」との事です。
担当者さんは、「これだけやってきたが、30%程しか実現出来ていない。」とおっしゃっていましたが、同行した何人かの同僚議員からは「30%実現出来ていることは、素晴らしい成果ですよ。」と口をそろえて讃えていました。
私も「そう」思いました。
私の所感
「コラボ・ラボ桑名」を通して色々な取り組みをやっておられるのですが、特に私が印象に残り、素晴らしいな、と思った取り組みというか仕組みがあります。
それは、役所内のインセンティブ制度です。
各課から「公民連携」に関連するアイデアを出してもらい、「良い」案を出した課にインセンティブとして「自由に使える予算」をつける、というものです。
市長表彰もあるそうです。
こういった仕組み、仕掛けを役所内に作ることにより、全庁的に「公民連携」を推進できるのだと思いました。
役所内のインセンティブ制度は、職員のやる気を引き出す手段としても良いと思いますので、大口町にも導入していただくよう働きかけていきたいと思います。
議場も見学させていただきました。さすが市議会の議場です。
威厳と迫力を感じしました。
桑名市議会は、市会議員は、26名でそのうち9名が女性議員です。
大半は、市長の進める「公民連携」推進派との事です。
お忙しいなか、視察にご協力いただいた桑名市役所の職員の皆さま、ありがとうございました。
大変勉強になりました。