そもそもこの研究会の役割? 目的?
20世紀において科学技術の進歩によって生活は便利になり安心して快適な生活が可能となりました。 しかしながら21世紀に入って、環境やエネルギーの課題が顕在化、東日本大震災は改めて想定や前提の上に成り立つ科学技術や社会システムが大きな自然の力の前には限界があることを目の当たりにしました。こうした困難な時代を乗り越えるには、未来を担う世代が、意欲を持って学び、働くことが不可欠です。コミュニケーションは人の助け合いの道具であるとの原点にあることに立ち返り、多様化した生徒の学びの意欲について、学校の先生と意欲向上の場の設計、構築について議論しながら、情報通信技術の役割を模索して、対話をベースとする新たな教育の在り方を提案することがこの研究会の目的です。
設立趣意書(2010年11月28日)
20世紀に急成長した電子情報通信技術は現代の社会、政治、経済、教育を変え、生活に密着したものとなっている。グローバル化の進んだ国際社会では、産官学の連携を含めて国家規模での戦略的な産業競争力の強化が必要である。こうした中で未来世代を担う技術者の育成は重要な課題であり、理工離れ、電気・電子・情報・通信分野の人気低迷を打破して、小中高校生の学びの意欲の向上をさせなければならない。
未来世代を育成するため、本学会では教育活動協議会を設けてこどもの科学教室から技術者継続教育(CPD)まで広範な活動を推進しているが、特に進路の分岐点となる高校生の啓発は十分とは言えない。情報通信技術を活用した教育システムが多数提案実施されているが、大学受験を中心とした高校生を取り巻く多様で複雑な環境の中で、効果を高めるに至ってはいない。通過する生徒を定点で指導する現場の教員と連携して、生徒が自主的に学びの意欲を向上できる仕組みを作ることへの支援が必要である。
学習意欲は、新しいことの面白さを発見することから始まる。この惹きつける面白さ、すなわち魅力を伝えることは、コミュニケーション活動そのものであり本学会でも研究対象とする分野であるが、ことばの背後にあるこころを伝える科学にまでは至っていない。科学や工学の専門家集団である学会会員の英知を集めてコミュニケーションの役割と科学の魅力を整理するとともに、受け手である人について心理学から脳科学に至る広い領域での最新の知見をベースに、学びの意欲を高める方策を追求することが重要である。
高校の先生を巻き込んで、学校での学びが技術や産業に活かされている実態についての知識を共有、生徒にその基本を認識させ、魅力と学ぶ意欲を高める方法や仕組みの確立を目指したい。技術の進歩によって肥大化し、多様化したカリキュラムの中においても、情報の受け手の体験からの内面的要因、学習者の認知構造や追求する価値観にマッチングした教材や場の構築によって、気付きや自主的で持続的な学習意欲を高揚させる取り組みを行い、有効な支援法に関する知見を蓄積したい。
こうした課題への取り組みの第一歩として、調査研究を目的とする第3種研究会「未来世代から見たコミュニケーション科学の魅力と学習意欲向上研究会」を設立することを提案する。これまでのHC基礎グループで扱う領域や目的に比べると、「電子情報通信への興味関心を高める」との明確な目標を持ち、対象者となる高校生や教員も含めた課題解決型基礎研究と位置づけることもできる。また同じような関心と問題意識を持って啓発活動を推進する人の情報や意見の交換の場としての役割も期待できる。
グループウェアも含む最新の電子情報通信技術は、異なる分野からの参加者の主体的な努力を統合する支援をしながら、全体として自ら成長するシステムを構築する力を秘めている。その結果、他分野での関心喚起や、学習意欲向上について教育的な知見を提供するのみならず、新たなサービス事業のモデルを提供することも可能となろう。こうした成果は、学会の活動としての意義を高めるものと言えよう。
以上から本研究会の趣旨を次のようにまとめることができる。
「(学会の総合的啓発活動の一環として)未来世代を担う若者が電子情報通信の魅力を感じ、興味関心を高めることを目的とし、教育学、心理学、脳科学等の観点も含めて学習意欲を高める方策を整理研究するとともに、高校の先生の参加も得て高校での学びの延長でコミュニケーション科学を学ぶ魅力を伝えることを通して、情報通信技術をも駆使した学習者活動を支援する有効な実践方法を取りまとめ、関連した情報を共有、意見交換する場として研究会を開催する。」
(キーワード:学習意欲、自己調整学習、科学的興味、高校支援場面:進路指導、総合学習、課題研究、探索、SSH、部活)
発足から2年経過しました。設立の趣意書を見直しながら、改めて冒頭の「もくてき」を書いてみました。皆様のご意見で今後修正します。ご意見はmogai@mbn.nifty.com まで